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先月末、xoxo(kiss&Hug)というアイドルグループを見る目的で、町田クリスマスフェスティバルというイベントに行ってきた。(ちなみにこのグループ「キスアンドハグ」と読み、面倒なので以下キスハグと略す)

何でこんな無名のアイドルグループを見るために、わざわざ町田くんだりまで出掛けて行ったのかというと、10月に代々木体育館周辺で行われたアイドルフェス(「スポーツ・オブ・ハート2015」)で観た彼女達のライブが予想以上に面白かったので、あれから秘かに行く機会をうかがっていた。(ここでいう「面白かった」というのはまさしく言葉どおりの意味で「笑えた」ということ)

ついでにいうと前から町田に食べに行きたいと思っていたラーメン屋があったので、これは一石二鳥ではないかなと。

町田に着いてから、まずは目当てのラーメン屋へと向かう。近年ブレイク中の繁盛店だけあって、店の外で安定の30分待ち。ようやく出てきたラーメンを急いですすり、足早にイベント会場へと向かう。

会場の町田シバヒロというのは何だかよくわからない空き地というか原っぱのようなところで、フェスティバルとは名ばかりの、縁日に毛の生えた程度の屋台がそこには並んでいた。

そしてその原っぱの一角にテントがあり、よく見るとその中にチープなステージが設置されていた。

クリスマスの時期にはまだ早いとはいえ、このイベント自体が盛り上がっているようにはとても思えず、要するにこれは地元の町内会が主催しているお祭りのようなものなのだろうか。

テント内に入ると、最前列におまいつっぽい人達が7~8人。二列目以降にアイドルヲタっぽい客が10人くらい。そして後方には20人程度のアイドルとは無縁と思われる一般人がキスハグの登場を待っていた。マイナーアイドル現場ではよくある光景といえばそれまでだが、何にしても場内の雰囲気は寒々としている。

さてこのキスハグ、グループのコンセプトはズバリ「プログレッシヴ・アイドル」である。

プログレッシヴ・アイドルとはこれまた大きく出たものだが、ここでいうプログレッシヴとは「先進的な」という言葉どおりの意味ではなく、「プログレッシヴ・ロックを歌うアイドルユニット」という音楽的な意味を指している。

今やアイドルというジャンルは歌謡曲に留まらず、テクノ・ポップもヘビー・メタルもパンク・ロックもヒップ・ホップもEDMもすべて飲み込み、もはや音楽的には何でもありの様相を呈している。従ってプログレッシヴ・ロックを歌うアイドルが出現しても不思議ではないが、それにしても何という胡散臭さだろうかww

プログレッシヴ・ロックといっても一般的には、あまりピンとこないかもしれないが、音楽的な特徴でいえばギターよりもキーボードが主体で、クラシックやジャズの影響下にあり、演奏テクニックに長けていて、曲が無駄に長く、コンセプトが大仰なロックといったところか。

日本には熱心なプログレのファンが多いが、ロック史的にはプログレッシヴ・ロックの役割は大昔に終わっていて、現在では自分達の過去のスタイルを再生産するだけの「遺物」と化しているのが現実である。またプログレ好きのロックファンは年齢層が高く、頑固というか保守的な聴き手が多い。

そこでこのキスハグ、そんなプログレッシヴ・ロックに造詣の深い人達が聴いたら、マジで怒りだすか、笑い転げるかのどちらかではないだろうか(運営の人も同じことを言っていた) 。

自分は最初に観たとき、あまりの胡散臭さとアホらしさに、完全にバカ負けして笑いをこらえるのに必死だった。

中でもエマーソン、レイク&パーマーの「ホウダウン」と「悪の教典#9」を合体させたような「Progressive be-bop」という楽曲の破壊力は凄まじく、プログレッシヴ・ロックと地下アイドルの衝突によって生まれた化学反応は、今まで体験したことのない種類の衝撃(というか笑撃)だった。

そして、それが町田の原っぱの特設会場で行われているというシュールさがたまらない。

ちなみにこの曲のCDのジャケ写もELPのパロディになっているのだが(写真参照)、おそらく当のメンバー達は何にもわかっていないように思う。

偶然にもおまいつ客に知り合いがいて、その人にいろいろと現場の状況を教えてもらい、終演後にCDを購入し特典会に参加することにした。

とりあえずは全握だけにとどめておいたが、チェキ撮影会が始まると暇なメンバーがウロウロと歩き回りヲタと談笑していたりするユルさもいい。

こういう現場にいると「ああ、こういう雰囲気って久しぶりだな。最近は地下の現場に行くことも少なくなったし、たまにはこういうのも悪くないな」と思えた。

それから一週間後、今度は神楽坂のTRASH-UP!!に新曲「欝」のリリースイベントに行ってきた。

この「欝」という曲、タイトルはピンク・フロイドだが、楽曲そのものはフルートが導入されていたりして、聴きようによってはジェスロ・タルかフォーカスあたりを思わせる。また音のアンサンブルが非常によく出来ていて一聴の価値はある。

それもそのはず、自分は知らなかったが、この曲でバックの演奏を担当しているのはQuiという実力派の日本のプログレバンドらしい。

ライブハウスでも彼女達のユルさ、胡散臭さは冴え渡り、ライブ中のMCでクリスマスのライブを告知する際、「みんな、どうせクリスマスの予定とかないよね? 予定ある奴、手あげて。(ひとり挙手した人間に)予定って、おカネ払って女の子と接触するとかそういう意味じゃないよwww」というのには爆笑してしまった。

今年のクリスマスはキスハグと過ごすという展開もありかもしれない。