※ネタバレあり。

 

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)は、キャプテン・アメリカシリーズの第三弾。アベンジャーズの分裂を主題とするイベントムービー的作品との印象で見られることも多いものの、前作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)が政治サスペンスとして高い評価を獲得したのと同様に、本作も社会情勢を巧みに織り込む重層的な側面がある。

 

本作は冒頭、キャプテン・アメリカ=スティーブ・ロジャース率いるアベンジャーズの対テロ作戦、及び救命活動において人々が巻き込まれる悲劇から始まる。

 

事態を受け、国連はサディアス・ロスを派遣し、アベンジャーズの面々へ『ソコヴィア協定』への加盟を迫る。加盟をすることでアベンジャーズの出撃に当たり「国連の許可」が必要となる。

 

『ソコヴィア協定』への加盟は人的被害に対する反省の姿勢を社会へ示し、不安定化したアベンジャーズの「信用の回復」を行い、「社会的立場」を守るメリットがある一方で、今後のアベンジャーズの対テロ作戦への出撃に遅れが生じ、「救命できる人数が減少」するリスクが生じる。

 

反省の意志を示し、「信用の回復」に努めるべきというトニーの主張、現場における「救命人数の最大化」を志向するスティーブの主張。この二つの正義が本作の主題となる。

 

さて、「国連」にまつわるもので本作のプロットを想起させる出来事が、近年にあった。それは1990年に勃発した「ルワンダ内戦」を巡る出来事だ。

 

世界における大規模な内戦に際しては国連は「国連平和維持活動(PKO)」により、内戦の終結を目的として多国籍軍を派遣する事例が多々ある。

 

しかし、「ルワンダ内戦」においては死傷者が多発する深刻な事態に直面しつつも、国連は直接的な介入を行うことはなかった。直前の1988年に勃発した「ソマリア内戦」に際し国連の派遣した多国籍軍が主に「モガディシュの戦闘」等で重大な被害を被り、続く「ルワンダ内戦」への干渉に国連も慎重となったという背景だ。

 

他国への干渉は難しい問題であり、被害を考慮すれば干渉に慎重になる立場も理解できる。一方で、犠牲を前にしながら行動できないというのも健全な状態とは言えない。

 

当時、国連PKO部隊司令官だったダレール将軍は「ルワンダ内戦」における犠牲を目の前にしながら直接介入できない葛藤を『なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか』(2012)という著作に記し、論争を呼ぶこととなった。

「シビルウォー」とは内戦の意味。アベンジャーズの内戦を示すタイトルだが、近年国際社会が直面した二つの内戦へのジレンマを総括するという本作の作風も含意したタイトルと言えるだろう。