ラン・オールナイト(2015)
※ネタバレなし
【一夜の逃亡劇】
主人公のビリーはかつて最強の暗殺者として名をはせた男。街を牛耳るマフィアのボス、ショーンとは長年の親友であった。老齢に差し掛かるビリーの最大の悩みは、息子マイクと不仲であること。
息子のマイクは父とは対照的にリムジン運転手という手堅い職業にまじめに取り組んでおり家族も持っていた。マイクは凄惨な経歴を持つ父と、そんな父の稼いだ金で育てられた過去を憎んでいた。マイクはビリーに反発し、ビリーは孫にも合わせてもらえない。
ある日、ビリーとマイクの人生を揺るがす大事件が起きる。マイクがマフィアの殺人現場を目撃し命を狙われてしまうのだ。ビリーは息子の窮地に駆け付け、マイクを狙うマフィアの一人を殺害。しかし、事態は思わぬ展開を見せる。ビリーが殺害したマフィアはダニー。ビリーの親友、ショーンの息子であった。
ショーンはビリーの親友であったが、事情があるとはいえ、息子を殺害したビリーを見逃すことはできなかった。ショーンは配下のマフィアたちを総動員してビリーとマイクの殺害を目論む。
ビリーとマイク。すれ違い続けた親子の絆を問う、一夜の逃亡劇が始まる・・・
【信念を譲れない二人】
リーアム・ニーソンとエド・ハリス。二人の名優が演じる親友関係と対立は渋い魅力と哀愁を持って、ドラマを大いに盛り上げます。
お互いが親友だと理解している。しかし、息子の仇を取るため、息子を守るため。それぞれの信念を譲れない二人は心を引き裂かれながらも対立へと突き進むしかない。
スリリングで目を引く逃亡劇のなかで、ビリーとマイクの親子のドラマもしっかりと描かれる。逃亡劇のさなかマイクは父は人生を生きるための手段を間違えていただけで、父から自分へ向けられた愛情は本物だと気付きます。
そしてビリーも、これまで犯罪を犯した自らの人生の、せめてもの贖罪として、命を懸けて全力で息子を守ろうとする。
戦いの中でしか生きられない不器用な男の人生の総括、贖罪の物語は胸を打ちます。
バリエーション豊富なアクションシーンにはビリーの複雑な心情と意地がしっかりと反映されている。アクションを通して彼の必死の想いは観客へしっかりと伝わる。
アクションは、優れた演出力により、心情を表現する最高のツールとなりえる。
そんな思いを確信させてくれるアクション映画の傑作です。
【リーアム・ニーソンとジャウム・コレット=セラ】
主演リーアム・ニーソンとジャウム・コレット=セラ監督のコラボレーション作品は本作の他にも名作揃いです。「アンノウン」「フライト・ゲーム」「トレイン・ミッション」・・・
毎回、優れたサスペンス演出で観客の心を引き付けるジャウム・コレット=セラ監督ですが、彼はそれだけでなく毎回しっかりと異なるアプローチでリーアム・ニーソンの魅力を引き出します。
時に共感を覚える人物として、時に底知れぬミステリアスな存在として・・・
その才能を見出されてか、近年ではDCの大作「ブラック・アダム」の監督にも抜擢されたジャウム・コレット=セラ監督。
これを機に、彼の作品に触れてみるのはいかがでしょうか。

