ザ・ウォーク(2015)

※ネタバレなし

【「命綱なしで」踏破する挑戦】

1970年代、主人公フィリップ・プティは幼少期にサーカスに才能を見出される。彼はそこで芸の際を開花させる。やがて彼は世界各地を旅をする大道芸人となる。そんな彼が人生の集大成として、目を付けたのは、当時建設中の「世界貿易センタービル」(WTC)。

世界の建造物で最高の高さの二つのビルに綱を渡し、その上を「命綱なしで」踏破する。それがフィリップの目論む挑戦だった・・・

【純粋な挑戦の熱意】

WTCを踏破することに、とくに実利はありません。「ただ、困難に挑戦したい」そんな自らの技術への挑戦的な姿勢こそが彼の意図。誰もが一笑に付すような荒唐無稽な発想に懸命に取り組まんとするフィリップの姿勢に一人、また一人と理解者が集う。

「懸命に何かに取り組もうとする姿は人を引き付ける」

彼らは、団結しフィリップの夢を叶えるための計画を立案、実行へと移します。

まず、警備員の守るWTCへの潜入作戦。そして、最上階についたら2対のビルの端から端へ綱を渡す。

計画を実行に移すチームプレイが始まると、そこからはまるで「スパイ映画」の様相。「ミッション・インポッシブル」的な活劇でそれぞれのメンバーが個性を活かした活躍。目を光らせる警備員。計画を揺るがすイレギュラーへの臨機応変な対応。目まぐるしくリアルタイムで変動する活劇に目が離せません。

【何かを始めること】

本作の凄いところ、それは本当に目的が「高い所で綱渡りをして、みんなを驚かせたい!」ただそれだけの動機を2時間かけて描くという事。

「世界のために」とか「誰かのために」とかいう動機はありません。ただ、大きいことをやってみたいというフィリップの「純粋な熱意」があるのみ。しかし、そのような熱意が人を引き付ける。

まずは、何かやってみる。そうすることで人生が動いていく。

前向きなメッセージ性は、自分も何かやってみたいと思わせられます。

本作の監督は、ロバート・ゼメキス。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズがあまりに有名ですが、それ以外にも名作は多いです。「コンタクト」「フライト」「ポーラー・エクスプレス」「フォレスト・ガンプ/一期一会」・・・

本作を入り口に様々なゼメキス作品に触れてみてはいかがでしょうか。

 

【心理学的には・・・】

心理学的には、あることに損得勘定抜きで没頭している人に、「報酬」を与えてしまうと、やがて「報酬」目的の努力へとすり替わり、元々向けていた情熱が弱まってしまうという研究があります。

本作の命がけの「綱渡り」に「報酬」はありません。困難に取り組む損得勘定抜きの挑戦こそ、偉業への第一歩なのかもしれません。