ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結(2021)

※ネタバレあり

【超危険ミッション】


バットマン、スーパーマンでおなじみのDCコミックの悪役キャラのチーム「スーサイド・スクワッド」の活躍を描く作品。マーベル映画の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズで手腕を振るい、直近では「スーパーマン」(2025)の監督も担当したジェームズ・ガンによる采配が光ります。

本作は第一作「スーサイド・スクワッド」(2016)の続編的位置づけであり、一部キャラの続投もありますが、本作単体でも成立するもののため、予習や予備知識は全くの不要。単体で十分に楽しめます。

 

ただ、中心となるハーレイクインを軸に時系列順に見る順番を記載すると第一作「スーサイド・スクワッド」(2016)、番外編「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」(2020)、本作「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」(2021)の順番となります。

本作のシナリオの大筋はシンプル、犯罪歴から投獄中という強大なヴィラン達。彼らの弱みに付け込む形でアメリカ政府高官のアマンダは、ヴィラン達に減刑と引き換えた言う形で南米の島国に存在する研究所の破壊という危険なミッションへ強引に駆り立てる。

ヴィラン達の頭部には小型爆弾が埋め込まれ、作戦行動中は常にオンライン上で監視される。少しでも命令に背くことがあれば、即座にアマンダに抹殺される。ヴィラン達の生還の可能性は、目の前の危険なミッションの達成のほかない・・・

【斬新すぎるオープニング】


まずオープニングから凄い!マイケル・ルーカー演じる大物感あふれるヴィラン、サバントを中心に、キャプテン・ブーメラン、TDK、ブラックガードなど一癖ありそうなヴィラン達が次々紹介され、彼らの活躍に期待を持たせながら、目的地の島への上陸シーンへ。

 

しかし、そこで驚愕の事実!チームの一人のブラックガードがすでに敵と内通しており、彼ら舞台は待ち伏せの奇襲を受ける。

 

弾丸の雨を浴びる中、内通者のブラックガードが真っ先に始末されてしまい、その他メンバーも実力を満足に発揮できないままに、次々と戦死!容赦のない作風を嫌というほど痛感させられる。

そして、いかにも中心人物のように描写されていたサバントが恐怖から逃亡。敵前逃亡とみなしたアマンダは小型爆弾でサバントを始末。

 

部隊はハーレイクインとリックフラッグのみ残して壊滅、オープニング音楽としてアップテンポな音楽が挿入され、キャラクター紹介のごとく、名前と共に各キャラにカメラが向いていく・・・

いや、もう全滅してるから!

キャラの全滅後に、キャラ紹介のオープニングを挿入し、音楽にのせて彼らの遺体を大写しにするという斬新かつ悪趣味な試み。脱力系ギャグとゴア表現の両立という無理筋を実現する手腕に脱帽しますが、衝撃はそこで終わりません。

彼ら舞台の全滅後に、イドリス・エルバ演じるブラックスポート率いる別動隊が上陸。そうサバント中心の部隊はアマンダが用意した陽動であり、ブラックスポート部隊こそ本命。

開始してすぐに、人が使い捨てにされる冷酷な世界観が、軽快なテンポとブラックユーモアと共に顕現する圧倒的なオープニングです。

【丁寧なドラマとアツいアクション】


一方で、丁寧にドラマも描かれます。犯罪歴から娘と疎遠となってしまったブラックスポートの孤独。父を亡くし、頼る先のないラットキャッチャー2の孤独。奇妙な経緯から、一蓮托生となった二人は孤独という共通項から、お互いを守る絆を深めます。

ピースメイカーとリック・フラッグは共に命をかけた戦いを経験する中で、お互いの戦闘技術にリスペクトを抱くようになる。それゆえ後半の方針の違いから対立へと向かう流れは切ない。お互いの意地をかけたバトルは本作のハイライト。

そして研究所の破壊を目指すブラックスポートと並行する形で別動隊の生き残り、ハーレイクインの戦いも描かれる。破天荒な性格ではあるもののジャベリンの遺した槍を大事に扱う、失った仲間のことを忘れない律義さに胸を撃たれます。(名前は良く間違えますが・・・)

ハーレイクインのアクションが、実にカッコ良い!円形のバトルフィールドで時計の針のごとく両手拳銃を躍動させるバトルは、リアリティにかけるものの、マンガ的ケレン味あふれるロマンの塊のような格好良さ。

円形の部屋での伝統が終われば、ドアを活かした奥行きのあるバトル、そして、直線で構成される廊下での槍のアクションへシームレスに展開するテンポの良さに目を奪われます!

 

【悪党としての魅力】

 

スーサイドスクワッドの任務と並行する形で、反政府軍の革命の物語が展開します。革命軍の物語が映画のトーンを引き締める役割を担うことで、王道から逸脱したアウトローのスーサイドスクワッドの、悪党としての個性が守られる工夫がなされます。

 

本作の前作「スーサイド・スクワッド」(2016)や「ヴェノム」(2018)は立場上悪党でも、映画の主役という立場から、どうにも善性を帯びてしまう部分もありました。

 

本作のスーサイドスクワッドのメンバーは上述の工夫から、時折人情を覗かせつつも、悪党としてのアウトローな魅力は最後まで全開です。

 

悪党の、悪党としての魅力を最後まで描き切ったという点では、バットマンシリーズのヴィランを中心とした連続ドラマ「GOTHAM/ゴッサム」を想起します。

 

邪道でショッキングな魅力あふれる本作ですが、上述のような繊細な演出もしっかり効いている。

 

予想を覆す大胆な演出とアクション。国外に拠点を置いた違法実験問題を題材とした重厚な脚本。グレーゾーンのキャラクターを活かした切ないドラマ。多彩な魅力あふれる傑作と言えるでしょう。