アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015)
※ネタバレあり
【王道中の王道】

思えば、マーベル映画は常に王道への挑戦を絶やさないシリーズでした。ヒーロー同士の信念の衝突を描いた「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」。悪役サノスを中心に展開された「インフィニティ・ウォー」。グレーゾーンの戦士の集結「サンダーボルツ*」等。変化球的な名作が豊富です。
本作、「エイジ・オブ・ウルトロン」はそのような変化球的な作品群に繋がりつつも、極めて王道。悪を打倒し平和を守るというシンプルな構図にヒーローそれぞれの魅力が詰め込まれます。
【ホークアイにスポットが】

特筆したいのは本作において遂にホークアイ=クリント・バートンにスポットが当たった点。前作「アベンジャーズ」においては始まってすぐにロキに洗脳され敵方となり、後半の活躍でヒーローとしての巻き返しはあるものの、やや不遇でした。
本作では先頭に立ち、ヒドラ兵やウルトロン軍を前に一歩も引かない勇姿を見せ、弓矢のアクションも更に進化します。
更には鋼鉄の存在として永遠に劣化しない、生命としての優位性を主張するウルトロンに対するアンチテーゼとしても彼の存在感は発揮されます。
クリントは、ウルトロンとは違い生身の人間。本作においてクリントと家族の交流が初めて描かれ、家族を残して命を落とす恐怖を克服しながら、家族の未来を守るため戦いに赴く姿が描かれます。ヒーローとしての普遍的な彼の勇姿は、本作のテーマの体現です。
そんな彼の勇姿に感化され、ヒーローとしての一歩を踏み出すワンダの決意のシーンも素晴らしい。王道のヒロイズムの表現は本作の強みと言えます。
一作目においてロキの洗脳に敗北した経験から、ワンダの洗脳を回避する姿はとてもクール。さらにその経験は後の「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」にて洗脳に苦しむバッキーに寄り添う形でキャプテン・アメリカに味方するという彼の選択にもつながる。クリントは、シリーズ通してのキャラクター描写というマーベル映画の特性を最も活用する一人と言えます。
【見どころは多彩】

進化したアクション。その中でも特に豪快な活躍を見せるのがキャプテン・アメリカ=スティーブ・ロジャース。今作では素手で鋼鉄のウルトロン兵を引き裂くなどの暴れっぷり。相手が生身の人間でなくロボットだからこそできるアクション。
これを人間相手に行えばR指定は不可避でしょう。「デットプール2」における、ジャガーノートのようになってしまいます。スティーブも、人間相手にやろうと思えばできるのでしょう。強い道徳心を持つスティーブは、そんなことしないでしょうが・・・
そして、ニック・フューリーの活躍。これまで数多くの問題を起こしてきた彼の「秘密主義」ですが、本作ではそれがサプライズとして機能。追い詰められたアベンジャーズの前にヘリキャリアを駆り出して駆け付ける彼の勇姿は他のヒーロー以上に頼りがいのあるもの。
【余りにも隙が無さすぎる・・・】

そして、本作の問題点ですが、それはあまりにもヒーローのワンサイドゲームである点。まともに正面からウルトロンが兵を差し向けても、アベンジャーズはチームプレイで打倒してしまう。
それならばと、ウルトロンがナターシャを人質として捕らえるという策略を練っても、クリントとナターシャが共有するアナログな通信方法で、ウルトロンの電子的な監視を逃れつつナターシャを救助。
しまいには、スティーブの説得により、本来ウルトロンの味方だったはずのワンダとピエトロまでもアベンジャーズの味方となってしまいます。
このチーム、余りにも隙が無さすぎる・・・
スティーブの説得はかつて自身もワンダとピエトロ同様に人体実験に利用された過去の経験を踏まえたものです。キャラクター描写として堅実なものですが、ウルトロンに対してはやや気の毒。
【ヒーロー強すぎ】

ヒーロー側が強力すぎて、活劇としては、ややバランスを欠く構成。
ただ、トニーのトラウマは続く「シビル・ウォー」への重大な布石となりますし、本作でウルトロンより指摘される、スティーブは戦いの中でしか生きられないのかという問題提起は彼の物語の重大なポイントとなります。
そして、本作の良い点はヒーローのカッコ良さと信念がしっかり描かれている点。
マーベル映画の流れにおいても必見の重要作と言えるでしょう。




