X-MEN:アポカリプス(2016)

 

※ネタバレあり

 

【感情の集大成】

 

プロフェッサーX=チャールズとマグニートー=エリックの若き日を描きX-MEN誕生の秘密が明かされる新シリーズ。そのひとまずの集大成となるのが本作。前作「フューチャー&パスト」との比較から、ややスケールダウンしたという評価を受けることもある本作ですが、ドラマ部分においては極めて誠実な作品です。その理由は「感情の集大成」が描かれるから。

 

新シリーズのドラマの集大成として、本作の注目ポイントを解説していきます。

【ひとまずの安寧?】


まず、本作の状況から整理します。舞台は1983年、「フューチャー&パスト」から10年後。エリックによるセンチネルを用いた襲撃事件から、人々を救った英雄としてミスティーク=レイブンが評価される場面から始まります。ミュータントでありながら人間を救った彼女の行いは、人とミュータントの共存の象徴として社会に広まり、人間とミュータントの表立った闘争は鳴りを潜め、ミュータントにひとまずの安寧の時代が訪れます。

しかし、当人であるレイブンは納得はしていません。表立った衝突はなくなっても、目につきにくい所でミュータントへの攻撃は残っているからです。学生だったサイクロップス=スコットはミュータントであることが明らかとなり学校を追われ、ナイトクローラー=カートは闇の闘技場で見世物として戦いを強制される。様々なミュータントに向けられる悪意を目撃したレイブンは、旧友のチャールズの元を訪れます。共にミュータントを救うためです。

【チャールズの葛藤】


一方のチャールズは夢をかなえていました。「恵まれし子らの学園」、社会に馴染めないミュータントを保護する教育機関を設立し大勢の子供たちを守り、育てています。立派な行いを成し遂げたチャールズですが、世界中のミュータントを救おうというレイブンの申し出への協力をためらいます。強大な力を持つ自分が社会情勢に干渉することは、新たな火種となりかねず、うわべだけであっても、ミュータントが受け入れられつつある社会情勢を悪化させかねないからです。

レイブンは、そんなチャールズの説得を試みます。確かに今のチャールズの行いは立派だ。救われている子供たちもいる。しかし、救える力があるのに、学園の内側にこもり、外で助けを求めるミュータントを見捨てて良いのか。可能な限り、救いの手を伸ばし続けるべきではないか。

そして、続くレイブンの言葉が、チャールズを動かします。

「エリックの家族が、亡くなった」

【エリックの悲劇】


逃亡の後、人間と折り合うことを知ったエリックは山奥の街で、妻と娘と共に、正体を隠して生活していました。ただ、人助けのためのわずかな隙から、彼は自らの正体の痕跡を見せてしまいます。それから先は、一瞬でした。共に汗を流し、働いていた仲間の密告。親しかった隣人たちの追跡、その果てに、自らを庇い、命を落とす妻と娘。

再び憎悪に染まったエリックは、遥か過去より蘇ったミュータントの始祖、アポカリプスに懐柔され「黙示録の四騎士」として、世界に牙をむきます。

事の顛末を知ったチャールズは、自らの行いを改めます。外に目を向けることをしなかったために、友人の悲劇を見過ごした。今、彼を救えるのは自分たちだけだ。彼はレイブン、ビースト=ハンク、そして、若きミュータントを率いてアポカリプスの野望の打倒を決意します。世界を救うため、人類とミュータントの未来のため、何より、友であるエリックを救うため・・・

【ただ、友を救うため】


本作の魅力は何といっても「感情の集大成」が描かれる点です。「ファースト・ジェネレーション」ではキューバ危機を背景とした緊迫の国際情勢。「フューチャー&パスト」では未来と過去を巻き込む時代への選択。先行する2作品においてはスケールの大きさから、それぞれの立場から責任を背負うチャールズ、エリック、レイブン、ハンク達は自らの「心のままの決断」ができないというように追い込まれていたように思います。

しかし、本作における彼らは旧2作品の衝突を経て、お互いがむける信頼に気づいています。だからこそチャールズ、レイブン、ハンクは感情のままに、友のエリックを救おうとします。「国際情勢」でも、「未来を決める運命」でもない。ただ、友を救いたいという純粋な想いこそ、本作の根幹をなすものです。

そして、そのようなまっすぐな想いに気づくからこそ、終盤、エリックはその思いに応え、チャールズ達を救います。

本作は前作までの派閥間の大きな対立とは異なる、個人レベルの対立が描かれます。ハッキリした社会規模の大きな対立の後、気づきにくい個人間の対立へ移り変わっていく。まるで現実社会の様相を反映するようなシリーズの構成はとても興味深いものです。

複雑だった過去作の経験を踏まえ、最後にはむき出しの感情が、結束への鍵となる。積み重ねた友情が、最後には報われ、一つに結実する。新シリーズ集大成として、文句なしの結末と言えるでしょう。