スパイダーマン: ホームカミング(2017)
個人的評価:A
※ネタバレあり
【スパイダーマン、MCUへ】
言わずと知れたヒーロー映画の金字塔スパイダーマンシリーズ。これまでに主演俳優の交代を経て、3つのシリーズが制作されていますが、今回紹介するのは最新の第三シリーズの第一作目「ホームカミング」です。本シリーズの最大の特徴はマーベル・シネマティック・ユニバースに公式に組み込まれることでアベンジャーズを始めとするヒーローたちとの共演が可能となった点。旧シリーズにおいては権利の都合上他のヒーローと共演できず孤独のヒーローとしての印象が強かったスパイダーマンとしては、これは注目ポイントです。
本作にはアイアンマンやキャプテン・アメリカも顔を見せ、物語を彩ります。高校生としての姿を中心に描かれる本作のピーター・パーカーはスーパーヒーローが入り乱れる世界でどのような冒険を見せてくれるのでしょうか。
【大いなる責任、特盛】
大いなる責任が、増しました。
ヒーローへの注目度の高い世界で
アベンジャーズ見習いとして
ピーターはあるべきヒーロー像の
模索に苦慮します。
また、彼には高校生としてのプライベートもあり想い人、リズとの距離感に悩みます。その上、対峙するヴィランの事情も考慮します。歴代のスパイダーマンもヴィランを思いやり、他者の事情にも敏感で、抱え込む性格ではありました。しかし、今作のスパイダーマンにはその上にアベンジャーズとしての責任が、更にのしかかります。
高校生という設定もあり、歴代で最もフレッシュな印象の彼ですが抱える責任も、実に大いなるものです。そして、そんな彼の抱える運命は、終盤の悪夢のようなどんでん返しでより顕著に表現されます。
【ピーターの選択】
ずっとスパイダーマンが追い続けてきたヴィラン、ヴァルチャーはピーターの高校の想い人、リズの父親でした。ヴァルチャーは不安定な財政状況のなか、家族を、そして共に働いてきたものの雇用を守るため、武器の密売という犯罪に手を染めていたのです。そして、そんな彼の仕事を奪ったのはピーターの師匠に当たるトニーの傘下の組織でした。
「誰かを救うことは、他の誰かを救わないことでもある」
現代の複雑性が生む、皮肉な因果の中でヒーローに憧れた少年は、ヒーローの現実に直面します。
ヴァルチャーは悪党ではありません。悪党になるしかなかった、家庭を持つ一人の父親です。彼を捕らえることは、罪のない想い人リズの家庭を破壊することでもあります。しかし、ここでヴァルチャーを止めなければ、罪のない大勢が彼の拡散する武器で命を落とす。ピーターは、スパイダーマンとしての選択をします。
【総括】
アベンジャーズとの合流で広がったスパイダーマン世界。しかしそこで描かれたのは煌びやかなヒーローとの共演ではなく、ヒーロー飽和の世界でより重さを増した、大いなる責任と向き合うスパイダーマンの覚悟でした。アベンジャーズ世界において今一度、スパイダーマンを再定義し、ヒーロー映画が数多く制作される中で、スパイダーマン映画の魅力を再生させた快作と言えるでしょう。








