TPPに前進するイギリスと後退するタイ | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

来月にも茂木外相が訪英する予定であると報じられています。
日英FTAについては、まずは日本が空白期間を生じないようにするには7月中の大筋合意が必要だと発言し、イギリスも7月中の大筋合意に自信を見せていましたが、茂木外務大臣は17日の記者会見で、「そろそろ詰めの協議に入らなければならない。日程や、どういった形で交渉を行うかは調整中だ。」と述べたそうなので、7月中の大筋合意は否定されたと見て間違いありません。まぁ初めから無理のあるスケジュールです。
なおイギリスはEU離脱に備え、正式ではないもののTPPへの参加意思を表明しており、日本だけでなくオーストラリア、ニュージーランドと通商協定の交渉も進めています。
その一方でイギリスはファーウェイの5G製品を排除するなど、反中国の動きを鮮明にしてします。新型コロナウイルスのパンデミックによって中国依存の危うさが顕在化しただけでなく、中国が香港の一国二制度を事実上廃止させたことで、イギリスは政治的にも経済的にも一気に脱中国/反中国を進めており、今回の件もその一環でしょう。

なお世界的に脱中国の動きが強まっているかと言えばそうでもなく、中国税関総署が14日発表した2020年1~6月の貿易統計では、東南アジア諸国連合(ASEAN)との貿易額が国・地域別で初の首位となった報じられています。
1~6月の輸出と輸入を合計した貿易額をみると、ASEANとの貿易額は前年同期比2%増の2978億ドル(約32兆円)とプラスを維持されており、ASEAN諸国の中国との繋がりはむしろ強化されているようです。

そんな情勢の中、タイではTPPの推進派だった副首相ら4閣僚が辞任したと報じられており有力視されていたタイのTPP参加がまた一歩後退しました。仮にイギリスがTPPに参加してタイが不参加という状態になると、TPP内のイギリス連邦勢力が半数(6/12)を占めることになり、日本の相対的な地位低下に繋がりかねません。
アメリカ大統領選でオバマ政権時に副大統領を務めたバイデン氏が勝利すればアメリカもTPPに復帰する可能性が高く、アメリカまでイギリス連邦勢力に含めると過半数を占めることになります。そういう視点からタイの動向に注目していたのですが、残念なことにタイのTPP参加はまだ当面先になりそうです。
とは言え、イギリスのTPP加入は日本にとってメリット大なのでこれ自体はむしろチャンスと言えるでしょう。あとは日本が積極的にタイに働きかけをしてくれることを期待します。