イギリスがEUとのFTAやTPP参加へ前進/対中包囲網としてのTPP | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

イギリスがEU離脱後に向けて精力的に動いています。
 英国のジョンソン首相と、EUのフォンデアライエン欧州委員長、ミシェル大統領らは15日、テレビ会議形式で会談し、3月に始まった英EUの自由貿易協定(FTA)交渉の中間評価を行った。英国の延長拒否決定を踏まえて離脱後の「移行期間」を年末に終えることを確認。年内の妥結、協定批准に向けて7月に交渉を加速させることで一致した。
 FTA交渉開始後、首脳級の協議は初めて。共同声明で「新たな推進力が必要だということで合意した」と強調。可能なら早期に合意の大枠を固める方針も表明した。

 英政府は17日、オーストラリアおよびニュージーランド(NZ)とそれぞれ自由貿易協定(FTA)締結交渉を行うと発表した。英政府は豪州、NZとの交渉について「TPP参加への理にかなった一歩だ」と説明している。

過去記事[イギリスが日本やアメリカと通商交渉を開始]でイギリスが三正面同時交渉を開始したと書きましたが、豪州やNZも合わせれば五正面同時交渉となります。ただし豪州やNZとの交渉はイギリス政府自身が「TPP参加への理にかなった一歩だ」と評しているように、事実上のTPP参加前交渉と見るべきでしょう。
豪州やNZもイギリス連邦の一部であり、元々イギリスと縁深い国ですので、イギリスのTPP参加については前向きに対応すると考えられます。
特に豪州は最近になって新型コロナウイルスの対応や香港問題などで最大の貿易相手国である中国との関係を悪化させており(豪は脱「中国依存」模索 関係悪化で=貿易相)、脱中国の動きを明らかにしたイギリス(過去記事[イギリスの脱中国と入TPP])と同様に中国依存を減らそうとしており、ますます歩調を合わせて動く可能性が高いです。
日本も英企業であるアストラゼネカと新型コロナウイルスワクチンの交渉をしており、イギリスとのパイプを強めるためFTAを締結してTPPへ繋げる動きを一段と加速させることも想定されます。

イギリスがTPP加入に前向きであると最初に報じられた時はにわかには信じがたい話でしたが、最近になってイギリスのTPP加入が急速に現実味を帯びてきました。元よりこの動きがあったとは言え、新型コロナウイルスに端を発する流れが後押ししている状況です。
TPP署名時に「中国のような国に国際経済のルールを書かせてはならない」とTPPが対中包囲網であることを宣言したのはオバマ米前大統領のでしたが、皮肉なことに今やアメリカ抜きでTPPの対中包囲網が進行しています。トランプ政権中にアメリカがTPPに再加入することはあまり期待できませんが、次期大統領がバイデン氏になればアメリカの再加入も視野に入ってきます。
仮に米英ともにTPPへ加入することになれば、いわゆるファイブ・アイズ加盟各国の諜報機関が傍受した盗聴内容や盗聴設備などを共有・相互利用するための協定を締結した国の総称で、締約国はイギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5ヵ国)の全ての国が加入することになり、そちらにTPPの主導権を握られることになるのは避けられないでしょう。アメリカ抜きにしてもイギリス連邦の影響は強く、日本としては親日国であるタイの加入が一つの鍵になります。

すでに動き出しているイギリスと大統領選挙後のアメリカによって、今年から来年にかけてこれまで以上に世界が大きく動くのはもはや疑う余地もありません。日本もしっかりと地盤固めを進めてほしいですね。