不安要素だらけのアメリカとイラン 戦争を続けることで利益を得るネタニヤフ
アメリカとイランとの間で戦闘終結に向けたMOU、
了解覚書、基本合意書を交わしました。
60日間の停戦期間が設けられ、その間に交渉を行います。
それを受けて原油価格が暴落、
ナフサなどの石油製品の価格も急落しています。
ただ、先行きは不透明です。
イランは、国軍と革命防衛隊に異なる軍事組織が並立しながらも、
どちらも最高司令官は最高指導者です。
しかし、アリ・ハメネイが殺され、
次男のモジタバ・ハメネイが後継者となったのですが、
この人物の動向がよくわかりません。
国軍と革命防衛隊の指揮系統にも影響が出ているでしょうし、
特に革命防衛隊は、独自の判断で動いている部分も大きいでしょう。
よって、ペゼシュキアン大統領やアラグチ外相が何を言ったとしても、
あてにならないというのが現実です。
イランは、停戦期間の後にはホルムズ海峡で通行料を徴収するとしていて、
国民には「我々はアメリカに勝った」としています。
イラン国民がこういう認識である場合、
中途半端な妥協ができなくなる可能性が高くなります。
日露戦争の戦後、
「ロシアに勝ったのに、なぜ賠償金が全く得られないんだ」
「我々が戦費のために重税を徴収されたのに」
という不満が爆発し、各地で大規模な暴動が起こりました。
トランプ大統領側にも、この種のスキルがないスタッフが多く、
トランプ自身は、如何にオバマの核などの合意を否定することだけが重要なのですが、
それがなかなか難しくなっています。
アメリカが負けているのかはわからないのものの、
トランプ個人は、この戦争で得るものはなさそうです。

ジョシュア・ローム
「Ipponkasa (One Umbrella)」
一方、国内ではあまり大きく報じられませんが、
この戦争の当事国にはもう一つの国、イスラエルがあります。
ある意味で、イスラエルの動向がこの戦争の先行きを左右するといえます。
実際、これまでもアメリカとイランとの間で
停戦などの合意が近づくと、イランがレバノン領内を攻撃するなど、
イランが反発する軍事行動を起こしています。
これまでもお書きしてきたように、
中東のテロリストたちのほぼ全てはイランが育てた、
あるいは支援を受けています。
武装組織ヒズボラは、レバノン正規軍を凌ぐほどの軍事力があり、
イランはイスラエルを非難しています。
イスラエルがレバノン領内を攻撃するのは、
イスラエル国民にとって、
レバノンに展開するヒズボラが国家安全保障上の重大な脅威であるからで、
アメリカもイスラエル軍の撤収には
ヒズボラの脅威解消が不可欠だという認識です。
そして、もう一つ。
ネタニヤフ首相に「戦争を終わらせる気がない」という指摘もあります。
だから、ガザでの戦闘が節目を迎えつつあっても、
レバノンやイランとの戦争をやめないのだ、という指摘です。
ネタニヤフは収賄や背任などの罪で起訴されていて、
戦時下を理由に、公務への支障や国家の分断回避を図るとして恩赦を申請。
トランプも「完全な恩赦」を求める公式書簡を送っています。
ネタニヤフとトランプは、これらの裁判を「魔女狩」だとして非難しています。
ICC(国際刑事裁判所)がネタニヤフに対し逮捕状を発行しているのですが、
国内では戦闘継続中である限り「戦時下の指導者」であり続けるのでした。
彼には「戦争をやめられない事情」があるのです。
ただ、中間選挙が近いトランプは、
早急に、この戦争を一旦でも止めておく必要があり、
ネタニヤフに何度も釘を刺しているようです。