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男と女を分けるもの -万民が納得する答えはない- イマネ・ヘリフ選手

8月6日、パリオリンピックのボクシング女子66キロ級にて、
アルジェリア代表のイマネ・ヘリフ選手が準決勝で勝利。
9日に行われる決勝にて金メダルを賭けた一戦に出場します。

彼女は、2回戦が初戦となり、右ストレートを浴びせ、
相手が棄権したことで勝利を収めました。

ここから、「彼女は性別は?」と騒がれることになります。

先に申し上げておきますと、私はこの問題の結論を出せません。
おそらく、万民を納得させるような答えを出せる人はいないでしょう。

私は子どもの頃、男性と女性は身体的特徴により
二分できると疑いもなく思っていました。
正確には、疑う以前にそんなことを考えたこともありませんでした。

ただ、やがてヒトの性に男性と女性という
明確な境界線なんてないという認識に変わりました。
色彩でいえば、グラデーションのようなものだと考えるようになったのです。

ただ、それも正しいとはいえないようです。
性の区別はもっと複雑のようです。

この件についていえば、彼女は性分化疾患の可能性があるからです。
男性の染色体はXYで、女性はXX染色体ですが、
彼女はXYらしく、これは国際ボクシング協会(IBA)の会長がコメントしていて、
昨年のIBA女子世界ボクシング選手権で、
彼女は決勝に進んでいるものの失格となりました。
その理由として、後に出てきた話として、
テストステロン値の高さだとされていたようです。

IBAは「DNA検査でXY染色体を持つことが証明された」ともしていて、
ただ、そのコメントがロシアのタス通信に出されたものであり、
彼女がロシアの有望株で無敗だったアザリア・アミネワ選手を
破った直後の失格だったことも、話を難しくしています。
そもそも、IBAは元々AIBAで、
AIBAの負債を肩代わりするとして、
当時のロシア人が代表の座に就くなど、
信頼に足るだけのガバナンスがあるとはいえません。
     

和田三造「昭和職業繪盡 拳闘家」

 

彼女について国際オリンピック委員会(IOC)は、
「パスポート上は女性なので問題ない」と判断、
今大会での出場が認められています。

男性と女性を区別する医学的基準には、前述の染色体構成のほか、
生殖器官、性ホルモンなどがあります。
染色体構成では、XYが男性ではあるものの、
Y染色体が機能不全なら身体的には女性になる可能性があり、
性自認も女性になることが多いようです。
また、性ホルモンでは、男性はテストステロンが優位で、
女性はエストロゲン、プロゲステロンなどが優位という特徴です。

ただ、性別はその人の社会生活に大きく関わっているものであり、
社会的要素も無視できません。
特にその人個人の性自認を外すわけにはいかないでしょう。

おそらく、社会的にはイマネ・ヘリフ選手は、
女性だといって問題ないかと思います。
身体的特徴も女性です。

ただ、スポーツ競技となりますと話は難しくなります。
彼女はテストステロンが優位で、
テストステロンには筋肉を肥大させる効果があり、
男性のほうが女性より筋肉が発達するのはその影響です。

ドーピングでテストステロンが禁止されているのは、
深刻な副作用があることに加え、フェアではないからですが、
生まれつきの場合はどうなのかという議論があります。

また、それが格闘技の場合、
相手選手が危険にさらされる可能性があります。
実際、今大会2回戦で彼女の対戦相手は
開始早々にケリフからの2発の強烈なパンチを浴びせられ、
わずか46秒で棄権しています。

格闘技で男性のようにテストステロンが優位な選手は、
相手を危険にさらす可能性があるといえます。
彼女個人の身体的特徴については、
性分化疾患ということですから、
主治医や本人にしか分からないこともあるはず。
そこをどうこう言う資格は、私たちにありません。

ただ、今後、競技として、あるいは格闘技として、
どう考えるか、決めておく必要があるでしょう。
性分化疾患ではなくとも、テストステロンの分泌量は、
個人により差があり、
それがパフォーマンスで有利に働くことあるでしょう。

彼女のような特徴がある選手を失格にすれば、
その選手は最大級の不利益を被ることになるでしょう。
しかし、出場を認めれば、
ほかの選手たちを危険にさらす可能性があります。
矛盾する二つの命題について、
解決するアイディアを思いつかないのです。