サイコパスにならう成功哲学
今日の一冊:「サイコパス 秘められた能力」サイコパスとよばれる人がいます。連続殺人の犯人や、精神異常者、スパイなどが例にあげられることが多いのでなんだか恐ろしくて、あまり近づきたくない人たちのように思います。この本の英語のタイトルは、" The Wisdom Of Psychopaths "Wisdomというのは智慧のことなので、「サイコパスの智慧」と訳せます。人間の心をもっていないような、非情で邪悪な人たちの智慧?タイトルには続きがあります。" What Saints, Spies, Serial Killers Can Teach Us About Success "「聖人、スパイ、連続殺人魔がわたしたちに成功について教えてくれること」面白いのは、スパイや連続殺人鬼といっしょに「聖人」とあることです。聖人というのは、たとえば聖書に出てくる、人々を導いたり救ったりする人のことです。スパイや連続殺人鬼とは正反対の生きかたをしているように思える人たちです。聖人から成功について学ぶことが多いというのは、なんとなく納得できます。でも彼らがサイコパスとは、いったいどういうこと?基本的にわたしたちに備わったどんな特性にも、いい面と悪い面があるはずです。たとえば不安症の人は、ささいなことで不安になって、しなくていい心配をします。なんでも前向きに考え、よけいな心配をせず明るく生きている人をうらやましく思います。でも、そういう人たちがいたからこそ、わたしたちは今ここに生きていられるのです。ジャングルで暮らしていると、現代の生活とは違い、危険がたくさんあります。 猛獣がでてきて襲われるかもしれないし、知らない場所を歩くと崖から落ちるかもしれません。そんな危険に敏感(びんかん)なのは、ふだんから心配をしている人です。だいじょうぶ!と言いながら知らない場所へ行って、帰ってこなかった人はたくさんいます。でも不安や心配によって生きのびる可能性は高くなり、そのおかげで命がつながれました。わたしたちは不安症の祖先がいたおかげで、今ここに生きていると言っていいでしょう。ほかにも「天才にはいくばくかの狂気がつきもの」といわれるように、天才とよばれる人たちは思考回路がほかの人たちとは違っているという意味で、よくも悪くも区別されます。天才が発明した物やアイデアによって、わたしたちの生活はとても便利になりました。でも彼らのうちには精神障害があるとされる人が少なからずいて、人とうまく付き合えなかったり他の人が簡単にできることができなかったりして、日常生活に苦労する人もいます。同じようにサイコパスとよばれる人たちがもっている特性にも、いい面と悪い面があります。サイコパスの特徴はたくさんありますが、たとえば「説得力がある」これは自分の考えに自信があって、他人を自分の意見に同意させるのがうまいということです。しかし言いかえると、他人の考えより自分の考えを優先するということにもなります。他には、「嘘が上手で人をあやつるのがうまい」「良心の呵責・罪悪感がない」「他人がどう思うか気にしない」「自己中心」「無責任」「衝動的」「自信にあふれている」「魅力的」「カリスマ性がある」どれも、いいように言えば○○、わるいように言えば●●と言いかえられそうですね。ある人はサイコパスをこのように説明します。「抜け目なく、回転の速い頭脳をもち、人をひきつける話しぶりで並外れた魅力の持ち主」他のある人はこう説明するかもしれません。「人に隙をみせず、悪知恵を次から次へと思いつき、口がうまく自分をいいように見せる」だれか当てはまりそうな人を思いつきましたか?今わたしたちが暮らしている社会に、実はサイコパスはありとあらゆるところにいます。正確にいうと、サイコパスになる素質がある人と言ったほうがいいかもしれません。もっと正確にいうと、わたしたちみんなにサイコパスの素質は備わっているはずです。連続殺人鬼や精神異常者がサイコパスの代表のように言われるのには理由があります。彼らはサイコパスのもつ特性がとびぬけて強いため、例として分かりやすいのです。この本の中では、音の調整をするミキサーのつまみに例えられています。サイコパスが持つそれぞれの特性に、調整できるつまみが付いているものとします。彼らの場合はすべての特性が最大、つまり調整つまみが最大限まで上がっている状態です。中でも「衝動性」と「無責任」という特性がサイコパスの運命を分けてしまいます。このふたつを調整するつまみが、どの程度のレベルに合わせてあるかによって機能不全(犯罪者)になるか、社会的成功を手にするかが決まってしまうようです。社会的成功を手にしているサイコパスはたくさんいます。サイコパスが多い職業として、企業の社長や外科医、弁護士などがあります。「自信にあふれている」とか「説得力がある」とかいう特性があることからも納得できます。彼らは「衝動性」とか「無責任」というサイコパスの反社会的な側面がうまく抑えられています。この本の筆者であるケヴィン・ダットンは「サイコパスの7つの決定的勝因」をあげています。この7つの要素をうまく調整しながら使えることが、成功しているサイコパスの強みなのです。①非情さ②魅力③一転集中力④精神の強靭(きょうじん)さ⑤恐怖心の欠如⑥マインドフルネス⑦行動力「サイコパスの問題は頭のてっぺんからつま先まで邪悪だということではない。 皮肉だかその逆で、いいものを持ちすぎていることだ」どうやらサイコパスはわたしたちが自分にあればいいなと思う特性を、生まれつき持っています。お坊さんが瞑想の修行をして手に入れる集中力やマインドフルネスを持ち合わせ、医者など専門家が経験をつんで手に入れる恐怖心の欠如や行動力を、すでに身につけています。「高性能の最高級スポーツカーは、それ自体にいい悪いはなく、ハンドルを握る人間次第」サイコパスはたしかに、人がうらやむ最高級のスポーツカーのように高性能な特性をそなえています。でもスピードを出しすぎて事故をおこしてしまえば、何の意味もありません。高性能のスポーツカーは、うまく運転する人間がいてはじめて力を発揮できるのです。この本の筆者は、オックスフォード大学で心理学を教える先生です。自分の父親がサイコパスだった話から始まり、連続殺人鬼が集まる刑務所へ行った話や自分の脳に電流を流して、サイコパスに「変身する」実験をしたりしています。サイコパスの魅力にとりつかれている彼が書いたこの本は、サイコパスがもつ可能性とわたしたちがサイコパスから学べることがたくさんあることを証明しています。サイコパスの魅力にハマってしまう人が、ますます増えるかもしれません。サイコパス 秘められた能力