骨転移の完全寛解を目指す際の画像の読み方、転移巣の状態の捉え方 | the east sky

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いつの日か、すべての進行乳がん(切除不能乳がん・転移乳がん・再発乳がん)が根治する日を願っています。




「一旦骨転移するともう全身病、治らない。」


と考えながら、その様な目で様々な画像を見ても、得られる情報は限られてしまいます。


「骨転移がある。あるいは、新規に出て来た。」



「骨転移がない。あるいは、消失した。」


だけを判断するかもしれません。


或いはそれだけにしか興味を持たなくなるかもしれません。



骨転移の完全寛解を目標とした場合には、それぞれの画像の見方が全く異なります。



骨転移が「ある」「なし」にしても、CT画像での判断か、PET画像での判断か、あるいは骨シンチグラフィでの判断かで意味が全く異なります。



初診の方の画像の場合、


○ 骨転移があるのか無いのか。


○ 骨転移があった場合、どこにあるか。


を確認する事は、全ての医師に共通かと思います。


が、それ以外の判断を私はとても重視しています。



○ 骨転移しているが、大人しくしているのか(眠った状態=dormant)


○ 骨転移細胞に増殖のスイッチが入り、活発に増殖しているのか


○ あるいは上記の状態が混在しているのか



他院ですでに治療されている場合には、さらに解釈が複雑になります。



○ これまでの治療が効いているのか


○ これまでの治療が効いていないのか


○ あるいは上記の状態が混在しているのか




50歳代でルミナルタイプ、局所進行乳がん、多発肝転移、多発骨転移の方がご主人とお二人で、セカンドオピニオンを経て転院して来られました。





全身の骨、肝臓に転移し、右乳房全体にがんが広がっていました。



前医で長らく治療を受け、原発巣、転移巣共に著明に病状の改善が見られていました。



そこで、原発巣切除を望まれましたが、決まって、


「原発巣切除は出来ない。」


との返答だったそうです。


他の病院にもセカンドオピニオンに行かれたそうですが、返ってきた返事はどこも同じだったそうです。



基礎医学的、また臨床医学的な両方の観点から至った私の考えは、


「転移巣が遺残した状態での原発巣切除は、その効果、メリットは低い。」


です。


以下はご提供いただいたCT画像を、骨条件に変換してみた像です。


一部に圧迫骨折が見られますが、全体的に順調に骨転移の縮小あるいは消失が進んでおり、再骨化が見られます。



しかし、何ヶ所かまだ気になるところがあります。



先程のCT画像を少し拡大してみます。



矢印の先に黒いところが見られます。


全ての骨転移が消えて、空洞化している場合もありますし、活動性溶骨性転移がまだ残っている可能性があります。



標準治療では、


「ほとんどの転移乳がんは治らない。」


とされていますので、いずれかに骨転移が遺残しており、今行われている治療が効かなくなってくれば、やがて再増大してくる事が推察されました。



患者さんが最終的に


「根治」


を目指される場合、私の治療戦略では、このまま治療を続けるかもしれませんが、変えるかもしれません。


その判断基準は、


「転移巣が全て消失、あるいは縮小に向かい続けているか。」


によります。