進行乳がん(切除不能・転移・再発乳がん)では、
「治らないが延命は可能」
との認識が一般的な様です。
確かに、進行乳がんに対するほぼ全ての臨床試験では、
「どちらの治療法がより奏功率が高いか。」
や、
「どちらの治療法がよりがんの増悪を抑える期間が長いか。」
あるいは、
「どちらの治療法がより生存期間を延長させるか。」
を見ています。
なので、それを根拠に治療すれば、自ずと
「延命」
が治療の目標になります。
よって治療の順番は、自然と
「より延命効果が高い治療から。」
になってしまうのだと思います。
ですので、治療を行う医師の思考は、
「どの様に治療すれば無病状態に到達し得るか。」
ではなく、
「どの様な順番で薬剤を使えば、より長く延命出来るか。」
になってしまうのだと思います。
私は進行乳がん治療を良く将棋に例えます。
将棋では、将棋に勝つためには、自ら一手駒を進める毎に、それに対する相手の次の一手を見極めてから、次の一手を考えます。
自ら打った一手の効果を見極めてから、その次の一手が何十通りと選択肢がある中から次の一手を考えます。
その時には、相手がどう反応するのかも予想し、更に次の一手をどうするか。。
相手に勝つところまで、ある程度予想しながら、今の一手を考えます。
その時に、相手の性格や年齢、経験、くせのみならず、毎回の反応から体調、今日の状態、調子他、あらゆる事を総合的に分析し、勝つための次の一手を考えます。
目の前の相手によって打ち方は変わります。
似た様な相手でも、それぞれの違いを見極めて、それぞれに勝てる打ち方をします。
また、たとえ同じ相手でも、一手打つと相手の状態は変わります。
同じ相手でも、こちらが一手打つ毎に、相手は変わり続けます。
その対応を絶えず繰り返してはじめて、相手に勝つ事が出来るのだと思います。
ただ、自らの持ち駒だけを眺めて、例えば最初に
「歩を打ち続ければ、何もしないよりは長生き出来る。」
と考えて、ひたすら歩を打ち続け、歩が打てなくなったり、動かす歩が無くなったら、次に
「飛車」
を動かせば、何もしないよりは少し試合の結果を引き延ばせる、、、
やがて動かせる駒が無くなった時に、
「負けました。
でも、以前よりだいぶ負けるまでの時間を引き延ばせる様になりました。」
とか、
「以前は5分しかもたなかったけど、今回5分10秒、負けを引き延ばせる様になった!
次は5分15秒まで、負けを引き延ばせる様に頑張ろう!」
その様に考えながら将棋を打っている人は、1人も居ないと思います。
将棋は、
「勝ててなんぼ。」
です。
私は進行乳がん患者さん方も、そして進行乳がん治療も、それ程大きな違いは無いと想っています。