私の故郷はある片田舎にあります。
以前にもお話ししたことがあります。
高校を卒業すると同時に故郷を離れ、やがて大学を無事に卒業し、
「世界一の外科医になるんだ。」
と何の根拠も無しに志だけを高く持って、ありとあらゆる修行をしていました。
アメリカの最高峰の研究機関への留学も現実味を帯び始めたある日、母親の体調が崩れました。
母は心臓が弱く、当時の主治医の見解では、
「いよいよ危ない。回復は見込めない。」
との事でした。
これまでに親孝行らしいことは何一つ出来ていませんでした。
「親孝行、したい時に親は無し。」
とは決して言いたくはなかったので、当時の教授に直談判して、これまでに積み上げてきたものを全て捨てて、母親の元に帰らせていただきました。
山に囲まれた盆地で、側には大きな川がある、自然豊かな中にある病院でした。
母親は体調を一時的に持ち直す事が出来ました。
私も生活していかないといけませんので、その病院の院長に、母親がお世話になっている間だけでも雇っていただけないかとお願いし、その病院を離れた後も微力ながら医療応援を続けさせていただいています。
そこに60歳代前半のルミナルタイプ乳がんの方がお越しになられました。
原発巣のCT画像です。
乳頭に直接浸潤しています。
この様な乳がんは嫌な予感がします。
乳頭から皮内リンパ管に広範囲に進展、あるいはリンパ行性転移しやすいからです。
腋窩部のCT画像です。
対側(右側)と比較して、比較的大きなリンパ節転移が多数認められました。
肺条件のCT画像です。
通常、肺転移は血行性転移、胸膜転移はリンパ行性転移と考えられていますが、胸膜転移は無く、両肺にわたって、多数の肺転移を認めました。
この方は出来れば根治したいと願われました。