17年目のおめでとうを 〜多発骨転移を乗り越えられたこの方に〜 | the east sky

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いつの日か、すべての進行乳がん(切除不能乳がん・転移乳がん・再発乳がん)が根治する日を願っています。

以前にもブログで書かせていただいたことがあるかもしれませんが、ざっとみて見つかりませんでした。



17年前、ある患者さんが乳房腫瘤に気付かれて私の所に受診されました。


その時の初診時の骨シンチグラフィです。

とても年季を感じる画像です。


正面像です。



昔も今も乳がん診療ガイドラインでは、骨シンチグラフィは推奨されていないかと思いますが、私は昔から乳がんの初診の方には、骨シンチグラフィを必ず撮影しています。



骨転移の早期発見は生存率を改善すると私は思っていますし、骨関連事象も減少すると考えているからです(と言いますか、骨転移早期発見した方で、治療により骨関連事象はほとんど経験がありません)。




黒い異常集積は全て骨転移です。


背面画像です。


頭蓋骨から頚椎、両肩、胸椎、腰椎、骨盤、左大腿骨にかけて、多くの骨に転移を認めました。


ER陽性HER2陰性乳がんでした。


まだまだ今の様に数多くの武器が無かった時代でした。



病状をすべてお伝えした時、ご本人様からは、「娘が結納を控えているので、せめて結納までは元気に過ごしたい。」との希望を伝えられました。



その後、私は若いなりに、積極的に根治を目指して治療にあたらせていただきました。



その後の骨シンチグラフィグラフィの正面画像です。


向かって一番左端が治療開始から10年目の骨シンチグラフィ画像です。


まだ異常集積が少し残っていますが、骨シンチグラフィは直接乳がんの骨転移を反映している訳ではなく、言わば骨転移のためにがん細胞が住む「家」を見ています。



従って例え骨シンチグラフィで異常集積が残っていたとしても、他の検査(CTやPET検査等)で完全寛解状態と判断すれば、完全寛解あるいはそれに近い状態と考えています。



最近の骨シンチグラフィの背面像です。



正面像と同様に、向かって一番左端が10年後の画像、そして一番右端が今年、17年目の画像です。


異常集積はほとんど綺麗に消失しました。


もちろん再燃なく、結納の後ご結婚された娘様ご夫婦、お孫さん達に囲まれて元気に過ごされています。



17年前という古い時代であっても、例え全身の骨に乳がんが散らばっていても、また武器もあまり無い時代であったとしても、医師が諦めなければ、患者さんの望みを叶えられる事はありました。


つまり昔から、


「転移乳がんは、100%治らない。」


と言う事は無かったのです。



今はさらに沢山の武器が揃っていますし、がんの基礎研究も格段に進んでいます。


進行乳がんを治したいと願い、治そうと志す医師が、今後1人でも多く増えていかれる事を心より願っています。



そして、多くの医師が、進行乳がんの方々と手を取り合って、根治を目指す事が当たり前の世が来る事を切に願っています。




追伸)進行乳がんの根治を目指した治療は、本当に多くの方が望まれています。


その様な治療に興味を持たれ、共に実践したいと望まれる先生方を募集しています。


見学だけでも構いませんので、ご興味がある先生は是非ご連絡ください。