多くの施設、医師から、進行乳がん(切除不能・転移・再発乳がん)の治療選択肢は一つしか示されない様です。
すなわち、
「延命治療」あるいは「緩和治療」
です。
確かに人は遅かれ早かれ、一つしか無い命をいつか失います。
その選択肢は一つしか有りません。
しかし、転移・再発乳がんに罹患した方は、その瞬間に、突然、命の期限を切られる方が多く存在します。
例え30歳代でも、40歳代、50歳代、60歳代でも、70歳代、80歳代でもかわりは有りません。
充実した人生を元気に歩まれていても、結婚されたり、お子さまを授かられたり、子供の成長を見守っておられる方も、明るい未来を夢見て過ごされていおられる方も、人生に一区切りつけられてゆったりと過ごされておられる方も同じです。
自らの人生など関係無く、選択肢が一つしか示されない事は、本当に辛いことだと思います。
「もう治る事はありません。
これからの治療は延命や症状緩和が目的になります。」
と言われる事がほとんどの様です。
中には、
「もう貴女が治る可能性は100%ありませんから、その事実を早く受け入れた方が楽になりますよ。」
と言われたり、
「今のうちに死に場所を探しておいてください。」
と言われた事がある方もおられる様です。
大切な方、ご主人やお子さま、ご家族やご友人を目の前にして、その様な事を告げられて、自らの行く末、お子さま方やご家族の行く末を考えて、途方に暮れる方、その現実を中々受け入れられない方がほとんどだと思います。
ただ、以前にもブログに書きましたが、ホルトバギー先生方のグループは、およそ20年前に治療した転移乳がんでも、およそ16%が無病状態に到達し、その40%以上の方々は10年以上生存される事を既に報告されています。
また、それよりも古い論文でも、
「数は少ないが、長期無病状態に到達される症例は、確かに在る。」
と述べられています。
事実、私のブログに出させていただいている方々は、遠隔転移が全て消え、その状態を維持しながら、今この瞬間を元気に過ごされています。
さらにその何倍もの方々が、同じ状態に到達されています。
進行乳がんに対する治療や未来の選択肢が、
「治らない治療、延命の治療、緩和の治療、治らない未来」
しか示されないのは、忸怩たる想いです。
以前ある患者さんから、
「たとえ1%でも治る可能性があるなら、希望を持って生きられます。
でも、100%治らないと言われたら、希望を持って生きる事が出来ません。」
と伝えられました。
また別の方からも、
「たとえ寿命が同じだったとしても、絶対に治らないと言われて生きる人生と、たとえ少しでも治る可能性があると言われて生きる人生とでは、全然違ってきます。
治る可能性があると言われたら、明るく生きられます。
100%治らないと言われたら、明るく生きられません。
生きる人生が全く違ってきます。」
と教えていただきました。
もちろん100%治らない・治せないと思っているのに、治る可能性はあると伝える事は、無理だと思います。
しかしもし、患者さんがその様な治療を求めて、セカンドオピニオンを希望されたなら、気持ち良く送り出してあげる事は出来るのではないかなと思います。
私は今現在も、まだまだ道半ばです。
人の命の可能性を日々感じながら生きています。
治療がかなり難しいかな、と正直感じる事があっても、患者さんの生命力、薬の力、私のほんの少しの知識を集約することによって、奇跡の様な結果に辿り着ける事がいまだに多々あります。
私の引き出しがまた一つ増えた瞬間ではありますが、
そんな時、私もまだまだだなぁ、これが当たり前の様に、多くの方々に出来ないといけないなぁ、と思い返しています。
医師が「治らない」と思って、たまたま治る事は、進行乳がんの治療の世界では、まず無いと私は思っています。
1人でも多く、「進行乳がんは治る可能性がある病気だ」と思う医師が、1人でも増えてくればと、心より願っています。