もしかしたら、実話になるかもしれない作り話 第4話 ⑧
その日の夜、横山と藤堂はスタッフルームにいた。そこに三村がコーヒーを持って部屋に入ってくる。
三村看護師:「どうぞ。」
藤堂:「ありがとう。」
横山:「ありがとう。」
三村看護師:「あれっ。高橋先生は?」
藤堂:「さっきトイレって言ってたけど。」
横山:「それにしては遅すぎない?」
そこに内線が入る。
三村看護師:「はい・・・。はい・・・。そうですか。わかりました。警備室からなんですけど、北病棟の防犯カメラに廊下を徘徊している患者が映っているそうです。」
藤堂:「わかった、すぐに行くよ。」
横山:「私も行くわ。」
高橋が廊下を歩いていると、泣き声が聞こえてくる。高橋が泣き声が聞こえるほうに歩いていくと、柴山が座り込んで泣いていた。
高橋:「何だ、柴山さんか。脅かすなよ。柴山さん、どうしたんですか?消灯時間ですよ。病室に戻りましょう。」
柴山:「いや、帰りたくない!部屋に戻ったら、殺されるわ。!」
高橋:「ええ?」
柴山:「あいつが私を殺しに来るの。どうして私を捨てたのって殺しに来るのよ!」
高橋:「何、言ってるんですか。さあ、病室に戻りますよ。」
高橋は柴山を立たせようとする。しかし柴山は悲鳴を上げて高橋を突き飛ばす。
柴山:「きゃあー!!何するのよ!触らないでって言ったでしょ!」
高橋:「柴山さん落ち着いてください。」
柴山:「殺すのね。私を殺しに来たのね。」
柴山は刃物を取り出し、高橋に襲い掛かる。
柴山:「お前なんか殺してやる。」
高橋はよけきれず、腕を負傷する。柴山は半狂乱で刃物を振り回し、高橋に襲い掛かる。高橋はそれを交わすがはずみで転んでしまい、身動きが取れなくなる。
柴山:「お前なんか、殺してやる。」
高橋:「柴山さん、やめてください!」
柴山が刃物を振りかざして高橋を刺そうとした時、柴山は背後から殴られ、気絶する。そこには院長と警備員が立っていた。
もしかしたら実話になるかもしれない作り話 第4話 ⑦
妊婦はすでに死亡していて、妊婦の足元の壁には何かが激しくぶつかった血の跡が付いていて、床には肉片が落ちていた。看護師たちは血だらけの白衣を着たまま力なく床に座り込んでいた。藤堂も血だらけの白衣を着たまま呆然と立ち尽くしていた。
高橋:「藤堂、一体何があったんだ?」
藤堂:「いつもこうなんだ。最後の検診の時の胎児はとても元気なのに、出産になると、羊水から出るとき重力に耐えられないらしくて胎児がひしゃげてしまうんだ。」
高橋:「何言ってるんだ。おい、藤堂!しっかりしろ!」
藤堂:「もう7年も続いているんだ。女性看護師はみんな分娩室を怖がって入るのを嫌がるんだ。」
高橋:「何だって!」
そこに院長が分娩室に入ってくる。
院長:「急いで妊婦と胎児を検査して原因を調べてくれ。」
高橋:「院長、今、藤堂が言ったことは本当なんですか?こんなことが7年も続いているっていうんですか?」
院長:「ああ。日本はこの7年間、子供が1一間生まれていないんだよ。」
高橋:「そんな・・・・・・」
長崎看護師:「院長、先ほどから妊婦の母親に待ってもらっているんですけど・・・・。」
院長:「私が行くよ。母親を診察室に通してくれ。」
長崎看護師:「わかりました。」
藤堂:「院長、私も行きます。」
院長:「君は検査を急いでくれ。」
藤堂:「わかりました。」
診察室に妊婦の母親が通される。
加奈子:「あの、さっきの騒ぎは何だったんですか?娘と孫は大丈夫でしょうか。」
院長:「娘さんとお孫さんについてなんですが、非常に残念なことをお伝えしなければなりません。」
加奈子:「そんな・・・・・。一体、何が原因なんですか?」
院長:「こちらとしても検査結果に驚いているんです。お孫さんのDNAを調べたところ、異常が見つかりましてね。失礼ですが、娘さんの父親、つまり、あなたのご主人はどうされてますか?」
加奈子:「私は、精子バンクを利用して子供を産みましたので、娘には父親はいません。そんな私を見て育ったためか、娘も精子バンクを利用して子供を・・・。」
院長:「・・・・・そうでしたか。それならつじつまが合うな。実は検査の結果、あなたの娘さんはあなたが利用した精子と同じものを利用した可能性があるんです。」
加奈子:「そんな・・・・・・。じゃあ、娘は・・・・・。」
院長:「非常に酷な話ですが、娘さんは実の父親と交配したことになるんです。」
加奈子:「なんてことを・・・・・出産前、娘は言ってました。赤ちゃんを産んだら父親を探すって。父親に孫の顔を見せるんだと言ってたんです。それなのに私は・・・なんて恐ろしいことを・・・・・」
加奈子は泣き崩れる。
もしかしたら、実話になるかも知れない作り話 第4話 ⑥
高橋:「何の騒ぎだ?」
横山:「また分娩室ね。」
高橋:「分娩室?」
分娩室のスタッフルームには血だらけの白衣を着たスタッフが怯えて座り込んでいた。そこに白衣を着た女性が部屋に入ってくる。
安藤:「ああ。柿沼さん。」
笹川:「帰りましょ。帰りましょうよ。」
柿沼:「このセクションは、相当な覚悟をしていないときついって言ったじゃないですか。」
梶田:「覚悟はしていたけど、半端じゃないわ。」
増井の夫:「もうダメ。もうダメだわ。」
増井の妻:「破水が始まったと思ったら、血が噴き出してきて、私の肩をかすめて肉片が壁にぶつかったんです。」
柿沼:「あー。よりによって一番きついセクションを選んじゃったみたいですね。」
安藤:「でも私たちは、日本人の血を持つ者として、本当のことが知りたかったんですよ。どうして日本人があんなことになったのかって。」
柿沼:「そうなんですか。でもこの状態だと一度戻った方がいいみたいですね。ちょっと待っててください。」
柿沼は携帯を取り出し電話をかける。
その時、高橋と横山が分娩室のスタッフルームに駆けつけ、扉を開ける。高橋たちは無人のスタッフルームを通り過ぎ、分娩室に入る。しかしその惨状に呆然とする。