月ヶ瀬小春のブログ -95ページ目

もしかしたら、実話になるかもしれない作り話 第5話 ②

 増井たちは、きょとんとしている。しかし、柿沼だけは高橋を見た瞬間、
柿沼:「そんなばかな・・・。どうして日本人が?」
増井の妻:「どうしたんですか?柿沼さん。」
高橋:「あのう。」
柿沼:「近寄らないで!そこのあなた、動いちゃだめよ。」
安藤:「柿沼さん?」
柿沼:「いいですか。みなさんは私が戻るまで動かないで下さい。あの人間にも絶対に触っちゃだめですよ。」
 と言って、柿沼はどこかに行ってしまう。
笹川:「動かないでって言われてもなあ。」
安藤:「ねえ。柿沼さん、あの人の事、日本人って言ってなかった?」
梶田:「え?あれが日本人なの?」
 梶田が高橋にかけよる。それに続いて安藤たちも高橋に駆け寄る。
高橋:「何なんだあんたたちは!一体、どうなっているんだ?」
増井の妻:「ちょっとあなた、柿沼さんが近寄るなって言ってたじゃないの。」
増井の夫:「いいじゃないか少しくらい。日本人は今じゃ見ることができない珍しい人種なんだよ。あ、これ、新しい展示物かもしれないな。」
高橋:「日本人が珍しい人種?俺が展示物?」
 そこに柿沼が数人の男性を連れて戻ってくる。男性は白衣を着ていて、ガスマスクを着用していた。
柿沼:「私が担当したグループを連れて戻ってきたら、突然現れて・・・。あなたたち、その人間には近づくなって言ったじゃない!」
梶田:「これ、展示物じゃなかったの?」
ジン:「これは驚いたな。まだ残っていたとは。」
柿沼:「あのう、プログラムミスでしょうか。」
ジン:「いや、ご苦労だった。君のミッションは終了した。ゆっくりと休んでくれたまえ。」
 と言って、ジンが柿沼の耳を抑えると、柿沼は直立して動かなくなる。

もしかしたら、実話になるかもしれない作り話 第5話 ①

 博物館の中を柿沼たちが歩いている。柿沼は制服を着ていて、ほかの5人は普段着を着ているが、髪の毛の色が金髪だったり、右目と左目の色が違うものがいたり、どこの国の人なのかわからないいでたちだった。
柿沼:「いかがでしたか?バーチャル博物館は。」
笹川:「日本の歴史をバーチャル映像で見るなんて、すごいことを思いついたね。」
安藤:「本当にその時代を生きているような感じで凄かったわ。でも私たちが見たのは、日本という国が亡くなる直前の日本の様子を見たわけでしょ?私たちの先祖があんな形で絶滅したんだと思うと、なんだか複雑だわ。」
柿沼:「みなさんは日本人の遠い子孫ですものね。お気持ちはわかりますよ。」
増井(夫):「今、日本はどうなっているんですか?私は、この目で日本が見たいんですよ。」
柿沼:「それが、あの巨大地震が起きた時、日本にある原子力発電所がすべて破壊されて、その時に漏れた放射能の汚染が予想以上にひどかったらしいんです。私が調べたデータでは、核燃料が流されてしまったところもあって、放射能汚染と瓦礫で核燃料を探したくても探せない状態が今でも続いているんです。ですから今現在、日本に入ることはできないんですよ。」
梶田:「えーっ。20年以上も経っているのに?」
柿沼:「ええ。」
増井の夫:「じゃあ仕方がないな。」
柿沼:「いつか、必ず日本に行ける日がきますよ。」
増井の妻:「ああ、あなた。個人で体験するセクション、あなたが選んだのは、どんなセクションだったの?」
増井の夫:「ああ、あれね。おもしろいというか、とにかく凄かったんだよ。」
梶田:「そうそう。俺が選んだのも凄かったんだぜ。」
増井の夫:「なんで君が先に喋るんだ。」
梶田:「先に話をさせてくれよ。」
増井の夫:「私だって話したいことがたくさんあるんだ。」
梶田:「俺の方が面白いって。」
安藤:「ねえ、ちょっと。あれ、だれかしら?」
高橋:「あの。出口はどこでしょうか。」
 現れたのは、高橋だった。

もしかしたら、実話になるかもしれない作り話 第4話 ⑫

 藤堂は、院長の話を聞いていて、患者との会話を思い出していた。
藤堂:「不妊治療をやめるんですか?」
牧田:「はい。子供はあきらめます。」
藤堂:「そんなことを言わないで、がんばりましょうよ。」
牧田:「・・・・・もうがんばれません。」
 牧田は涙ながらに訴える。
牧田:「検査も治療もお薬も、こんなにお金がかかると思いませんでした。最初に検査してそのお金を支払うときに、保険証を見せたら、不妊症に治療には保険はきかないって言われて保険証をつきかえされたんです。保険がきかないって知らなかったから本当にびっくりしました。でも、それで子供ができるならって思って頑張ってきたけど、もう耐えられません。主人も治療費のことあって、いろいろ頑張ってくれていたけど・・・。」
藤堂:「牧田さん・・・・・・。」
牧田:「この間、治療に来たとき、外科の待合にたくさん人がいるのを見ました。あの人たち、性転換手術を受ける人たちだそうですね。テレビで見ました。性転換手術に保険が適用されることになったって。」
藤堂:「ええ。」
牧田:「外科にいた人たち、すごくうれしそうな顔をしていたんです。私、すごく怖くなって、そしたら、不妊治療に通っているのがばかばかしくなったんです。私たち、こんなに頑張っているのに、世の中からないがしろにされているみたいで。」
藤堂:「そんなことはありませんよ、牧田さん。」
牧田:「性転換手術を受けるっていうことは、子供を作ることができない人が増えるっていうことですよね。そんな手術に保険を適用するって、それが日本にとって本当に良いことなんですか?」
 藤堂は、何も答えられなかった。
 第3処置室では横山が柴山の手を握りしめ、子守歌を歌っていた。横山は子守歌を歌い終わると柴山の脈が止まっていることを確認し、
「お父さんとお母さんにちゃんとごめんなさいを言うのよ。それから、いつかまた生まれ変われたら、そのときは本当の自分を大切にしなきゃだめよ。」
 と言って、柴山の顔に白い布をかぶせる。
山田:「7年間子供が1人も生まれていないって、ニュースで言ってましたけど、その親になれなかった人は、もしかして僕と同じ世代の人なんじゃないですか?」
藤堂:「いや、それは、統計を取っていないので、その辺は何とも・・・。」
山田:「僕が育った施設には、僕と同じ境遇の子供がたくさんいました。その子供が成長して、社会に出て、やがて伴侶を見つけて結婚ということになるけど、その中には、僕と妻のように兄弟だと知らずに一緒になる人がいるってことですよね。」
藤堂:「それは・・・・・・。」
山田:「だから子供が生まれてこない社会になってしまったんでしょ。僕と同世代の人は、子供が作れない、親にはなれないということですか?」
藤堂:「そんなことはありませんよ。」
山田:「じゃあどうして僕がこんな目に会わなきゃいけないんですか!なんで妻があんなことに・・・・・。」
藤堂:「山田さん。」
牧田:「藤堂先生。」
藤堂:「はい。」
山田:「先生。」
藤堂:「何ですか?」
山田、牧田:「日本は一体、どうなるんですか?」
藤堂:「緒方院長。日本は一体、どうなるんですか?」
高橋:「藤堂。」
院長:「日本は・・・・・・。外務省に勤める友人に聞いたんだが、日本政府は、アメリカの51番目の州になることに同意したそうだ。」
高橋:「何だって!」
院長:「近々、政府から発表があるだろう。」
藤堂:「そんな・・・・・。」
院長:「日本は、もう・・・・・・・・。」