もしかしたら、実話になるかもしれない作り話 第5話 ⑤
銃声が響く中、高橋の耳にかすかに自分を呼ぶ声が聞こえる。
椎名:「高橋君。」
銃弾を受け、気が遠くなっていく高橋の耳に、自分を呼ぶ声がだんだん大きくなっていく。
椎名:「高橋君・・・。高橋君。起きて。」
自分を呼ぶ声に目覚めた高橋は、ベッドに横たわり、両手首と頭に器具がはめられていた。高橋は横たわったまま、部屋を見渡してみる。ベッドにはSF映画に出てくるような機械が取り付けられていて、部屋はとても広いが、高橋が横たわるベッドが置かれているだけで、照明は高橋のベッドを照らす照明だけで、周りは薄暗い。ベッドのそばには、椎名がいて、高橋を心配そうに見ていた。
高橋:「ああ、椎名さん。これは、夢?ううっ、痛いっ。」
高橋の両手首と額からは、血が流れていた。椎名は高橋に取り付けた器具を外し、傷の手当てをする。
椎名:「大丈夫?このマシンで見る映像って、きつい内容のものが多いから、見ているときに暴れてけがをする人が多いのよ。」
高橋:「とても恐ろしくて、悲しい夢を見ました。」
椎名:「今あなたが見たものは、夢じゃないわ。今の世の中がこのまま続いたら、起こり得る出来事を想定して作られて仮想現実。もしかしたら、現実になるかもしれない夢。」
高橋:「でも、感覚がはっきりしていましたよ。銃で撃たれたときの痛みもまだ残っていて、この辺がしびれた感じがするんです。」
椎名:「このマシンは、バーチャルリアリティの映像を人の脳内に直接送ることができるの。だから、映像に移っているものを見るだけじゃなくて、触ることもできるし、においや痛みまで感じることができるのよ。」
高橋:「凄い機械ですね。ここにいる人たちは、みんなこの機械を使ってさっきのような映像を見ているんですね。」
椎名:「そうよ。でもあなたの場合は、特別プログラムだったから、映像も特別性なの。」
高橋:「ええっ。じゃあ、普段はどんな映像を見るんですか?」
椎名:「この時代になっても、なかなか犯罪が減らなくてね。日本にある施設はどこもパンク寸前なの。そこで考え出されたのがこのマシン。服役する期間を短くするかわりに自分が犯した犯罪を忠実に再現した映像をこのマシンを使って、受刑者に見せるの。たとえば殺人事件だったら、自分が自分に殺されるの。詐欺事件だったら、詐欺の被害に遭って自殺した人の、追い詰められて自殺に至るまでの映像とかね。」
高橋:「うわー。きついですね。」
椎名:「犯罪加害者の家族の映像もあるのよ。自分が犯した犯罪が原因で、残された家族がどんな思いでいるのか。」
高橋:「犯罪加害者の家族・・・」
椎名:「きつい内容のものが多いけど、このマシンを開発した目的は、再犯を防ぐこと。受刑者が2度とこの施設に戻ってこないようにする事だから。」
高橋:「僕の罪は許されるでしょうか。」
椎名:「それはこれからのあなた次第ね。」
2人がいる部屋に、もう1人入ってくる。
もしかしたら、実話になるかもしれない作り話 第5話 ④
高橋:「着床前遺伝子治療か?」
ジン:「ほう、よく知っているな。」
ギ:「お前、今化け物だと言ったな!」
増井の妻:「ええっ!なんで考えてることがわかるの?」
笹川:「こいつら、なんか変な力を持ってるぞ。」
チュウ:「先天性の病気や障害で苦しむ子供を無くす目的でこの遺伝子治療を研究してきたくせに、この体で生まれてきたとわかると俺たちを化け物扱いしやがって!」
チュウは、ガスマスクを指さすと、ガスマスクは宙に浮かび上がる。チュウは、指差した手を上にあげ、そのあと下にさげる。すると、その動きに合わせるようにガスマスクは上昇し、そのあと下に落ちて床に激しく叩き付けられる。
チュウ:「こいつらにも同じことをしてやる。」
ギ:「やめろ、落ち着け!」
チュウ:「この姿で生まれた仲間の中には、産声を上げないまま殺された者もいるんだぞ!」
増井の妻:「まあ、ひどいことを。」
増井の夫:「これは、相当俺たちのことを恨んでるぞ。」
ジン:「ある日、俺たちが住む施設に数人の男たちがやってきた。奴らは俺たちを化け物を見るような目で見ていた。いやな目つきだったよ。怖くなった俺は、「力」を使って奴らに物をぶつけたんだ。次の瞬間、化け物を見るようだった奴らの目が輝き始めた。奴らは声には出さなかったが、俺にははっきりと聞こえたよ。地球人を入れ替えよう、額に目があるこいつらを新しい地球人にしようってね。」
トモ:「額に目がある俺たちが新地球人種、そしておまえたちが旧地球人種、この旧地球人種をすべて処分し、俺たち新地球人種に新たな文明を築かせる。それが国連が考えた人類再生計画だ。」
安藤:「なんて恐ろしいことを。」
笹川:「国連がそんな計画を考えたなんて…。」
ジン:「お前たち旧地球人種は本当に残酷な生き物だな。」
高橋:「それがお前たちの復讐計画というわけか。」
ジン:「復讐。それは言いすぎだな。だが、君たちにこの地球を任せておくことはできないのは事実だよ。」
高橋:「何!」
ジン:「思い出してみろ。君たち旧地球人種が作ってきた歴史を。人種や宗教の違いという些細な理由で大量殺戮を繰り返し、そのしわ寄せの貧困と飢餓。今までにその問題は解決できたのか?」
高橋:「それは・・・・・・。」
ギ:「君たちの文明が発展すればするほど動植物が絶滅していくのはなぜだ?」
トモ:「化学物質や放射能で汚染された自然環境は元に戻せたのか?」
高橋:「いや・・・・・・。」
ジン:「何一つ、解決できていないよね。やはり君たちにこの地球は任せられないよ。こいつらを処分しろ。」
白衣の男たちが一斉に銃を構える。
ジン:「君たちの家族には旅行中の事故と伝えておくよ。では、来世で会おう。」
白衣の男たちは安藤たちを射殺する。
ジン:「次は君の番だ。」
ジンは高橋に銃を向ける。
高橋:「これは、お前たちの意思ではなく、この地球の、人間たちへの報復。」
ジン:「そう。これは、地球が君たちに下した最後の審判だ。」
ジンが引き金を引く。
もしかしたら、実話になるかもしれない作り話 第5話 ③
増井の夫:「柿沼さんが動かなくなったぞ。」
ジン:「レイ、テイ、柿沼に新しいミッションのプログラムをインストールしておいてくれ。」
レイ、テイ:「わかりました。」
レイが柿沼の背中を押えると、柿沼の背中が開き、機械がむき出しになる。
安藤:「何あれ、すごい機会。」
笹川:「柿沼さん、ロボットだったんだ。」
レイは、パソコンのキーボードを打つように柿沼の背中の機械を操作して背中を閉めると、柿沼は無言のまま歩き出す。レイとテイも一緒に部屋を出ていく。
その様子を呆然と見ていた安藤たちに男たちが近づき、それぞれの体に機械を押し当てる。
増井の夫:「痛てっ!何するんだ!」
安藤:「きゃあっ!」
増井の妻:「ちょっと、やめてよ!」
機械を押し当てた1人が機械を見てつぶやく。
コウ:「ふん。こいつらのDNAはこんなものか。」
高橋:「DNA?」
もう1人の男も高橋に機械を押し当てる。
高橋:「痛っ!」
ギ:「これは!」
トモ:「なんだ。どうした?」
ギ:「完璧だ。DNAの配列が完璧なんだ。こいつは間違いなく純粋な日本人種だよ。」
トモ:「なんだって!日本人種はすでに絶滅したはずだぞ!」
チュウ:「まさか、あの大変動の生き残りだっていうのか?」
シン:「そんなばかな。」
高橋:「俺が大変動の生き残り?」
ジン:「今までどうやって生き延びてきたのか不思議で仕方がないが、何も知らないようなので教えてやろう。日本は巨大地震による大変動で国は壊滅、日本人も死に絶え、絶滅した。もう20年以上も前の話だ。」
高橋:「そんな・・・・・・。」
ジン:「そこで国連は、人類再生計画を実行することになった。その計画に君たちも協力してもらう。」
高橋:「人類再生計画?」
ジン:「君たちのDNAをサンプルとして採取するだけだ。そしてそれが終わり次第、君たちを処分する。」
高橋:「処分?」
安藤:「処分って、私たちを、殺すっていうこと?」
梶田:「何だと!ふざけやがって!」
梶田が白衣の男につかみかかり、もみ合いになる。その時梶田は白衣の男のガスマスクを外す。しかし、梶田はガスマスクを外した男の顔を見て悲鳴を上げる。
梶田:「うわー!」
ジン:「本当は見せたくなかったが、処分する連中だから、最後に本当のことを教えてやろう。」
といって、ほかの男たちもガスマスクを外す。白衣の男たちには額にもう1つ目が付いていた。安藤たちが悲鳴を上げる。