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もしかしたら実話になるかもしれない作り話(パイロット版)第1話 その3

高橋:「妻の葬儀の世話をしてもらったのに、挨拶が遅くなってしまっ本当に申し訳ありませんでした。」
おばあさん:「実は、嫁が亡くなったことを知ったのは、昨日なんです。」
佐々木:「ええっ!」
おばあさん:「突然息子が帰国してきたので何かあったのかと聞いたら、嫁が亡くなったっていうんです。それであわててここに来てみたら、もう葬儀は済んだ後で。嫁の会社は何も教えてくれなかったんですよ。」
高橋:「突然、妻の同僚から電話があったんです。私は本当に何も聞いてなかったので、同僚のほうがびっくりしてましたよ。正直、妻には家にいてほしかったんです。でも、家には私の母もおりますし、妻が産休を取る時も会社がその辺をよく理解してくれていたので、仕事を続けさせていたんですが、まさかこんな事になるなんて。」
おばあさん:「仕事は続けても構わないけど、まさか単身赴任することになるなんて。やっぱりあの時殴ってでも辞めさせればよかったんだわ。」
佐々木:「あの、近所の人から聞いたことなんですけど、鈴木さん、本当は子供と一緒に過ごすのが一番いいのかなって、おっしゃっていたそうですよ。鈴木さん、高橋さんのところに帰るつもりだったんじゃないでしょうか。」
高橋:「あいつが?そうですか。それを聞いて安心しました。」
 おばあさんが泣き始める。するとおばあさんが抱いている少女も泣き出してしまう。
高橋:「ああっ。すみません。今日は本当にありがとうございました。ご主人にもよろしくお伝えください。」
佐々木:「ええっ。・・・ああ、はい。」
高橋:「では、失礼いたします。」
佐々木:「お気をつけて。」
 高橋たちは佐々木に深々と頭を下げ、佐々木の家を後にする。その様子を佐々木が見ていると、何を思ったのか、少年が振り返り、佐々木をじっと見つめる。
高橋:「アキラ、何やってるんだ。早くこっちにおいで。」
 高橋に呼ばれて少年は父親の元に戻っていく。幼い少女はずっと泣き続けていて、高橋たちが帰った後も少女の泣き声は佐々木の耳を離れなかった。
 そこに佐々木の息子が塾から帰ってくる。
ひろし:「母さん、ただいま。」
佐々木:「お帰りなさい。」
ひろし:「お父さんただいま。」
 ひろしは仏壇に手を合わせる。
ひろし:「あの人たち、だれ!」
佐々木:「あの人たちって?」
ひろし:「さっき、家に前に人がいたじゃない。」
佐々木:「ああ、あの人たちは、おととい亡くなった鈴木さんの家族よ。」
ひろし:「あのおばさん、家族がいたんだ。でも、なんで死んじゃったの?」
佐々木:「日曜日、家の近くで救急車が止まったでしょ。その時に運ばれたのが鈴木さんだったの。くも膜下出血だったそうよ。」
ひろし:「そうなんだ。じゃあ、お父さんと一緒だね。」
佐々木:「そんなことより、あんた、今日は早かったじゃない。どうしたの?」
ひろし:「頭が痛いから、早退してきたんだ。」
佐々木:「大丈夫?じゃあ、ごはんは?」
ひろし:「いらない。」
佐々木:「そう。早くお薬を飲んで寝なさい。」
ひろし:「うん。」
 ひろしが自分の部屋に入ろうとすると、
佐々木:「ねえ、ひろし。」
ひろし:「なに。」
佐々木:「あんただけは、お父さんのようになってほしくないのよ。わかるでしょ。今頑張っておけば、お父さんのように苦労しなくて済むんだから。」
ひろし:「うん。」
 と、うなづいたひろしの表情はとても寂しそうだった。しばらくして佐々木がパジャマ姿で様子を見にひろしの部屋に入る。ひろしは帰宅した時の服装のまま学習机に座り、両手で頭を抱えてうずくまっていた。驚いた佐々木はひろしを起こそうとする。
佐々木:「どうしたのひろし。そんなかっこうで寝てたら風邪をひくでしょ。ほら、起きなさい。」
 と言ってひろしを起こそうとした時、ひろしは床に倒れてしまう。しかしひろしは目を覚まさない。
佐々木:「ひろし、どうしたの。起きなさい。ひろし!ひろし!」
 ひろしはすでに死亡していた。呆然とする佐々木の背後に移るテレビにニュースが流れる。
アナウンサー:「今年の「過労死」とみられる死亡者の数が2万人を超えました。「過労死」はこれまで働き盛りの男性に多く発生していましたが、近年では働く女性や学生の過労死も増えてきており、年々若年化しているということです。事態を重く見た政府は、男女雇用機会均等法の改正や、教育制度を見直す方針を明らかにしました。」

もしかしたら、実話になるかもしれない作り話パイロット版第1話その2

 3日後、マンション近くの町会館では葬式の後片付けが行われていた。会館のそばでは葬式の手伝いを終えた主婦たちが雑談をしている。
主婦A:「家族の出席者がいないなんて、寂しい葬式だったわねえ。」
主婦B:「鈴木さん、家族がいないのかしら。」
主婦C:「私は引っ越しの挨拶のときに仕事の関係でここに来たって聞いたけど、家族のことは何も話してなかったわね。私の印象はとても忙しそうな人。朝早くから出勤して、家に帰るのは夜中が多かったのよ。」
佐々木:「そうなの。」
 そこに渡辺がやってくる。
渡辺:「みなさん、今日は本当にお疲れ様でした。」
主婦A:「ああっ。渡辺さん。あなた大変だったわねえ。」
主婦B:「鈴木さんと一緒に病院に行ったんですって?」
渡辺:「ええ。あの日の朝、救急車のサイレンの音で目が覚めたんです。いつもはそんな音が聞こえても気にしないんだけどあの時だけはなぜか胸騒ぎがしたんです。」
佐々木:「胸騒ぎ?」
渡辺:「私、急いで外に出たら、バス停のところに救急車が止まっていて、鈴木さんが運ばれるところだったんです。」
 その日、渡辺がパジャマ姿のままマンション近くのバス停に来てみると、鈴木が救急車に乗せられるところだった。渡辺は救急隊員に駆け寄り、
渡辺:「私、この人の身内のものです。一緒に乗せてください!」
 渡辺と鈴木を乗せた救急車が発車する。
渡辺:「鈴木さん大丈夫?私の声聞こえる?」
 必死で鈴木に声をかけるが、鈴木の応答はない。
渡辺:「救急車で運ばれているときには既に鈴木さんは・・・。医者はくも膜下出血だと言ってました。」
主婦A:「くも膜下出血。」
 この言葉を聞いて佐々木が動揺する。しかし周りに気づかれないようにそれを隠そうとする。
主婦B:「でもあなた、鈴木さんとはそんなに親しかったわけじゃないでしょ?どうして急に?」
渡辺:「鈴木さんが亡くなる前日にお会いしたんです。買い物帰りに鈴木さんを見かけて声をかけたら、鈴木さん、体調不良で会社を早退してきたって言ってました。その時、本当にやさしい目で、娘のことを見てたんですよ。鈴木さん、お子さんが3人いらっしゃるんです。」
主婦C:「あの人、子供がいるの?」
渡辺:「あの時、娘を見ていて、何か思うところがあったんですかね。娘に向かってこんな悪いお母さんを許してねって。そしたら、次の日、あんなことになっちゃって。」
 渡辺はこらえきれなくなって泣き始める。ほかの主婦たちも泣き始める。
 その日の夕方。佐々木の自宅。佐々木が夕食の準備をしている。リビングではテレビが映っていて、ニュースが流れている。
アナウンサーA:「昨年5月に埼玉で発生した連続児童殺害事件初公判で、被告人の弁護を担当していた弁護士が、検察側の指示に全面的に従うという、異例の判断を示しました。」
アナウンサーB:「公判後の記者会見で大谷昌徳弁護士は、被告人と被害者両方の立場を考え、今回の裁判の内容を全体的にとらえた結果、この被告人に弁護士は必要ないと判断した。司法に携わる人間として当然の判断だと話しています。」
アナウンサーA:「この裁判を受けて政府は、司法制度審議委員会と協議し、司法改革の暫定案と、現在改正が進められている憲法の暫定案を早急にまとめる方針を明らかにしました。では、次のニュースです。刑務所の所長が、発がん物質を混ぜた食事を受刑者たちに与え、殺害しようとしていたことがわかりました。」
アナウンサーB:「逮捕されたのは大阪の刑務所に努める53歳の刑務所所長です。犯行の動機について容疑者は、受刑者の中には罪の意識の無い者や、ほとぼりがさめるまで刑務所で過ごしている者がいる。そんな人間が出所したら、また同じことを繰り返すのではないかと思うと恐ろしくなり、犯行を計画した、と話しています。」
アナウンサーA:「この事件について大阪府警は、発がん物質の入手経路や、共犯者がいないかなど、さらに詳しく調べる方針です。次は季節の話題です。」
 佐々木の家のチャイムが鳴る。
佐々木:「はーい。」
 玄関のドアを開けると3人の子供を連れた男性とおばあさんが立っていた。子供は小学生ぐらいの少女、幼稚園ぐらいの少年、そして2歳ぐらいの少女で、おばあさんに抱かれていた。
高橋:「こんな時間にお邪魔してすみません。私、高橋と申します。この度は、私の妻が大変お世話になったようで。」
佐々木:「奥様が?」
高橋:「ああ、そうか。あいつ、会社では旧姓を使っていたからなあ。私の妻は、みなさんに葬儀の世話をしてもらった鈴木真理子です。」
佐々木:「まあ、鈴木さんのご主人ですか。」

もしかしたら、実話になるかもしれない作り話(パイロット版)

第1話
 マンションが立ち並ぶ住宅地を、1人の主婦が買い物袋を片手に幼い子供の手を引いて歩いている。ふと、主婦が後ろを向くと、1人の女性が歩いてくるのが見える。
渡辺:「鈴木さん?」
 渡辺は通りかかった鈴木に挨拶する。
渡辺:「鈴木さんこんにちは。」
鈴木:「ああ。こんにちは。えっと・・・。」
渡辺:「私、渡辺です。」
鈴木:「渡辺さん。ごめんなさい。私、人の名前を覚えるのが苦手でいつも迷惑をかけているんですよ。」
渡辺:「ここに引っ越してきてまだ1ヶ月でしょ。無理もないですよ。私もここに引っ越してきたばかりのときは近所の人たちの名前がなかなか覚えられませんでしたから。それよりも鈴木さん、今日はどうしてこんな時間に?」
鈴木:「会社を早退してきたんです。体調がよくなかったもので。今日はゆっくり休んで、また明日から頑張らなくちゃ。」
 と、鈴木は話しているが、笑顔には陰りが見える。渡辺が心配そうに鈴木を見ながら歩いていると、渡辺の娘が転びそうになる。すかさず鈴木が渡辺の娘を支え、そのまま抱き上げる。
渡辺:「ああっ。ごめんなさい!」
鈴木:「いいんですよ。気にしないで。本当にかわいい子ね。」
 鈴木は渡辺の娘を愛おしそうに抱きしめ頬ずりする。しかし、渡辺にはそんな鈴木の様子が寂しそうに見えた。
鈴木:「女って、やっぱり子供と一緒に過ごすのが一番いいのかもしれないわね。」
渡辺:「ええっ?」
鈴木:「私、子供がいるんです。1番上が10歳で、2番目が4歳、3番目が2歳になります。ここには単身赴任で来ました。」
渡辺:「単身赴任。」
鈴木:「ええ。私が勤める会社がこの地域を中心に、あるプロジェクトを展開することになり、そのプロジェクトのチーフを私が担当することになって、それでここに。」
渡辺:「そうなんですか。でも、お子さんが3人もいらっしゃるんでしょ。大丈夫なんですか?」
鈴木:「あなたも同じことをおっしゃるんですね。私の単身赴任が決まった時、主人の母親に言われました。子供が3人もいるのになぜそんな仕事を引き受けたんだって。でも、このプロジェクトは以前から進めたいと思っていた事なんです。この機会を逃したら、もう2度とチャンスは来ないんじゃないかと思ったんです。だから私は。」
渡辺:「お仕事熱心な方なんですね。鈴木さんは。」
鈴木:「そうね。私母親失格ですね。」
渡辺:「誤解しないでください!私、そんな意味で言ったんじゃないんです。!ただ、私は・・・・。」
鈴木:「いいんですよ。悪いのは私なんです。だって、私は家族よりも仕事を選んでしまったんですから。でも、やっとわかりました。」
 鈴木は渡辺の娘を抱きしめ、
鈴木:「ごめんなさいね。どうか、こんな悪いお母さんを許してね。」
 といって渡辺の娘に頬ずりすると、鈴木は自宅マンションに帰っていく。そんな鈴木の後姿を見た渡辺は一抹の不安を感じながら、鈴木を見送る。
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