月ヶ瀬小春のブログ -92ページ目

実話になるかも知れない作り話ショートショート ニュース編

アナウンサーA:「夫婦げんかの果ての痛ましい事件です。今日未明、神奈川県横浜市のマンションで、妻が生後2ヶ月の長女を床に叩きつけて死なせるという事件がありました。
アナウンサーB:「この夫婦は夫と妻がそれぞれの名字を名乗る別姓夫婦で、結婚の際、生まれた子供は夫の姓を名乗らせるという取り決めをしていました。ところが、出産直後から妻が自分で産んだ子供だからと、妻の姓を名乗らせたいと言い出したため、口論が絶えなかったという事です。」

実話になるかもしれない作り話ショートショート「婚活倶楽部」

 とあるビルに梶田が入っていく。エレベータから降りた梶田は受付に向かう。
受付:「いらっしゃいませ。」
梶田:「あの、婚活倶楽部入会希望の梶田と申します。申し込みの書類と健康診断の結果表を持ってきました。」
受付:「はい。梶田様ですね。では、入会に関しての説明がありますので、中にお入りください。」
梶田:「ああ、すいません。」
 梶田は緊張した面持ちで部屋に入る。
女性社員:「健康診断書と、申し込みの書類、預からせていただきます。」
梶田:「婚活倶楽部に入会するのにいろんな事をやらなきゃいけないんですね。」
女性社員:「入会希望の方はみなさん同じことをおっしゃいます。」
 女性社員は苦笑いしながら答えた。
梶田:「何か、あったんですか?」
女性社員:「実は以前、当社の婚活倶楽部と会員の方が詐欺罪で訴えられそうになったことがあるんですよ。」
梶田:「ええっ!」
女性社員:「当社の倶楽部で知り合い、結婚されたあるご夫婦なんですけど、なかなか子供に恵まれなかったので、ご主人が奥様も一緒に病院で検査を受けようと話したところ、奥様の方が性転換を受けたことを告白したそうなんです。」
梶田:「ええっ!それって、奥さんは元男だったってことですよね。」
女性社員:「・・・そうですね。ご主人は相当ショックだったようで、奥様と当社を詐欺罪で訴えると言い出して、マスコミにも取り上げられて、本当に大変でした。」
梶田:「うわー。」
女性社員:「入会前に奥様と簡単な面接をしたんですけど、その時は私たちも本当の女性だと思ったんです。」
梶田:「そいつ、うまく化けたんだなあ。ああ、失礼。で、裁判はどうなったんです?」
女性社員:「ああ、それはうちの社員とご主人が話し合って示談が成立して訴えは取り下げてもらったんですけど、離婚は避けられませんでした。ただ、その時の騒ぎで当社が少々、トラウマになっているところがありましてね。」
梶田:「それで健康診断書を。」
女性社員:「はい。ご足労をおかけして申し訳ないのですが、当社の婚活倶楽部にご入会の際には、当社と契約した医療機関で必ず健康診断を受けていただくことにしているんです。」
梶田:「なるほど、そういう事でしたか。」
女性社員:「おかげでトラブルはなくなりましたけど、それ以前に入会いただいた会員の方に健康診断の受診をお願いしたら、何名か退会を希望する人がいましたね。」
梶田:「ええ!じゃあ、バレるのが嫌だったんだ。」
女性社員:「いや、それはわかりませんけど。」
 1時間ほどして入会手続きを終えた梶田が帰りのエレベーターを待っていた。エレベーターが到着し、梶田が乗ろうとすると、もう1人、エレベーターに乗ってくる。
梶田:「おお。柿沼さん。」
柿沼:「そろそろ時間なので迎えに来ました。」
梶田:「この時代の婚活って大変だね。」
柿沼:「この会社はまだましな方ですよ。別の会社には詐欺罪で訴えられて多額の賠償金を支払ったところもあるし、殺人事件まで起きているんですよ。」
梶田:「うわー。悲惨だな。」
 柿沼が携帯で電話をかける。2人が乗ったエレベーターが1階に到着する。扉が開くと中は無人で、そのエレベーターに男性が乗り込む。エレベーターは再び上昇し、婚活倶楽部の階に到着する。エレベーターを降りた男性は婚活倶楽部の受付に向かう。
受付:「いらっしゃいませ。」
山田:「あの。婚活倶楽部の入会申し込みに来ました。山田と申します。」

実話になるかもしれない作り話 ショートショート「次世代型ゲーム機」②

 坂村は、受付に警察手帳を見せる。
坂村:「私、こういう者ですが、社長さんとお会いできないでしょうか。」
受付:「は、はい。少々お待ちください。」
 受付の女性は、あわてた様子で社長に内線をかける。
 同じ頃、安藤たちはユーザーの家についていた。
安藤:「えーと、205号室・・・。この先ね。」
 と、205号室の部屋の前に来ると、管理人らしい男性と2人の男性が205号室に入ろうとしていた。
安藤:「あの。この部屋は、小林博さんのお宅ですよね。」
飯田:「ええ。そうですよ。お宅は?」
安藤:「ああ。私たちは、アザーワールドというゲームソフト会社の者です。」
 と言って、飯田に名刺を渡す。
飯田:「アザーワールド?この会社、さっきうちの署の者がそちらに伺ったはずなんですけど。」
安藤:「ええっ!」
 一方、会社では、社長たちが坂村の話を聞いていた。
社長:「ええっ!餓死?」
坂村:「家族から捜索願いが出ていた人を捜索したところ、そのうちの数人がお宅が開発したゲーム機アザーワールドを装着した状態で自宅で亡くなっているのが見つかりましてね。解剖の結果、餓死だという事がわかったんです。」
社長:「どうしてそんなことに。」
坂村:「このゲーム機は、ゲームソフトの映像を脳内に送り込むことができるそうですね。ゲームのプレイヤーにとっては、ゲームソフトの世界が現実のように映る。」
社長:「そうです。ゲームソフトの世界の臨場感と迫力を五感で感ることができるのが、この、アザーワルドの魅力なんですよ。」
坂村:「しかし、時間がたつと、空腹になってくる。それで食事をとるわけですが、食べているのは、架空の世界の食べ物であって、プレイヤーの胃には何も入ってこない。」
社員B:「そうか、それで・・・・・。」
坂村:「それと、所用。つまり・・・・・その・・・・・トイレ、ですね。」
 社員全員が不快な表情になる。
社員C:「トイレも、そのままってことか・・・・・・。」
社長:「・・・・・・そういうことでしたか。」
 社長は、がっくりと肩を落とす。
 安藤たちは、ユーザーが住むアパートの前で口をハンカチで押さえてしゃがみこんでいた。ユーザーの部屋から布がかぶせられた担架が運ばれてくる。
飯田:「これで10件目ですよ。」
安藤:「ええっ!そんなに!」
飯田:「みんな、お宅のアザーワールドを頭に装着したまま餓死していたんです。」
安藤:「そんな・・・・・。あ、あの。お願い、社長に連絡して。私、今とてもじゃないけど・・・。」
社員E:「わかりました。」
 安藤が、気分が悪そうにしていると、
柿沼:「そろそろ戻りましょうか。」
安藤:「柿沼さん。このセクションも結構きついですね。」
 柿沼は携帯で電話をすると、安藤と一緒に車で立ち去る。アパートからユーザーの遺体が運ばれているとき、飯田は社員たちを前にこんな話をした。
飯田:「遺体を運ぶ時、いつも不思議に思うんですけど、このゲーム機で亡くなった人は悲惨な亡くなり方をしているのに、死に顔はとても幸せそうな表情なんですよ。」