月ヶ瀬小春のブログ -90ページ目

実話になるかもしれない作り話ショートショート「或る工場の話」①

 とある食品工場に新人の作業員が入ってくる。
工場長:「ここがみなさんの作業場です。最初は大変かもしれませんが、すぐに慣れますから。仕事で解らないことがあったら、周りの人に聞いてください。」
 と、工場長は説明しているが、他の作業員の態度は冷ややかだった。弁当の盛り付けをしているラインに新人作業員が入る。食品が流れてきてベテラン作業員たちは配置についているが、盛り付けが簡単な作業を担当していて、新人作業員は難しい作業を任される。新人作業員が作業にてこずり、弁当の盛り付け方が上手く行かない。すると、
金田:「ちょっと、トンカツ、きれいに並べなさいよ!」
河野:「すみません。」
 河野が必死で作業しているが、ベテランは何の手助けもしない。新人作業員の小林が見かねて河野をフォローする。
小林:「何なのよ、この工場。」
 洋菓子を製造するラインでは、ケーキを乗せるプラスチックトレイが少なくなったので新人作業員が補充していると、
木田:「そんな物、出してどうするのよ!商品は流れ終わっているじゃない!見てわからないの!」
新人A:「すみません。」
坂田:「あんないい方しなくてもいいのにねえ。」
 と、新人を慰める。
パンの製造ラインでは、焼きあがったパンをトレイに入れる作業中、新人作業員が作業にてこずってパンを床に落としてしまう。
西浦班長:「いくつパンを無駄にしたら気が済むんだ!あんたがダメにしたパンを金額にしたら、あんたの時給を超えているんだぞ!」
新人B:「すみません。」
 西浦が新人作業員をフォローするが、
西浦班長:「書類を書いたり、事務的な仕事もしないといけないのに、あんたが失敗ばっかりするから、何もできないじゃないか!」
新人B:「すみません。」
 昼休み、新人作業員たちはくたびれた表情で休憩室で座っていた。みんな会話はなく、泣いている者もいた。
河野:「怖いが多い工場ですね。」
坂田:「上の人が怖い人たちを怒ると、みんなすねて帰っちゃったり、次の日仕事を休んだるするの。でもその怖い人たちは、仕事ができて作業も早いし、それにその人たちだけが使い方を知っている機械があって、仕事を休まれると、その機会が動かせなくなってみんな困るのよ。それで上の人たちは仕方なく黙っているのよ。」
河野:「はあ?」
小林:「ここはそんな理由でいじめを黙認してるんですか?」
 河野たちはあきれていた。
 数日後、工場長が新人作業員を連れて作業場にやってくる。
工場長:「ここがみなさんの作業場です。最初は大変かもしれませんが、すぐに慣れますから。仕事で解らないことがあったら、周りの人に聞いてください。」
 弁当の製造ラインでは新人作業員が作業にてこずっている。
金田:「何、ちんたら、ちんたら、してるのよ!」
新人C:「すみません。」
 冷蔵庫の前では新人作業員がベテラン作業員と2人で商品を冷蔵倉庫に入れようとしていた。
ベテラン工員:「あら、この商品、配送所に持っていくものなのに、間違えて持ってきちゃったみたい。あなた、この商品、配送所に持って行ってくれる?」
新人D:「わかりました。」
 新人作業員が冷蔵倉庫から商品を運び出していると、金田がやってくる。
金田:「ちょっと、この商品、配送所に持っていくものじゃないの!」
新人D:「えっ?あの、これは・・・」
金田:「こんな間違いをしているようじゃ、ここの作業員としては失格ね。」
新人D:「すみません。」
金田:「返事はいいけど、何にもできないんだね!」
 パンの製造ラインでも、新人作業員が作業にてこずっていると、近くで作業していた西浦が新人作業員にパンを投げつけて怒鳴る。
西浦班長:「何度同じ失敗をすれば気が済むんだ!」
 西浦が新人作業員を呼び出す。
西浦班長:「あんたねえ、もうそろそろ仕事に慣れていいはずなんだよねえ。なんで仕事が覚えられないのかなあ。今のあんたの仕事を見てると、契約の時の時給だと多すぎて支払えないんだよね。あんた一体、どうしたいの?仕事を覚える気はあるの?」
新人E:「仕事は覚えたいです。頑張りたいです。」
 そのとき、パン製造ラインの機械が不具合を起こし、停止してしまう。ほかの作業員が集まり、機械に触ろうとすると、
西浦班長:「おいっ!近寄るな!こいつはお前ら素人が触れるものじゃないんだよ!じゃまだ!どけ!」
 と言って、作業員を突き飛ばす。そして西浦が機械を操作して再び機械が動き出す。しばらくして先ほど呼び出された新人作業員が作業にてこずる。たまりかねた西浦は、作業員にパンを投げつけて怒鳴る。
西浦班長:「ばかやろう!もう辞めちまえっ!」
新人E:「はい。」
 新人作業員は静かに答えた。

実話になるかもしれない作り話ショートショート「マスコミが報道しない飛行機事故」②

 コクピットでは警告音が鳴り響いていた。
パイロットB:「やっぱり来たか。」
パイロットA:「こちら1号機。2号機応答せよ。後ろで動きがあったようだ。サポートを頼む。」
パイロットC:「了解。すぐにそちらに向かう。1号機、直ちに座席の横にある赤いレバーを引け。」
 座席では搭乗者全員が手錠を切り離したところだった。
男B:「本当に上手く行くのか?」
男A:「なんでお前はそんな情けないことばかり言うんだ。爆薬?飛行機がドカン?だとしたら、パイロットはどうなる。あんなもの、脅しに決まってる。地雷処理なんてまっぴらだ。あんなところに行ってたまるか!」
男B:「そうだな、そうだよな。」
男A:「おい、お前たちも手伝ってくれ。パイロットを襲って適当な場所に降りてもらうぞ。」
 男たちはコクピットの扉を開けようとするが、びくともしない。
男A:「くそっ、頑丈な扉だな。」
 男たちは何度も扉を蹴る。そのうち扉がゆがみ、隙間ができる。
男A:「よし、もう少しだ。」
 その時、飛行機が大きく揺れる。
男B:「何だ?今のは。」
男A:「気流が悪いんだろ。そんなことよりもさっさと手伝え!」
男B:「ああ、わかった。」
 男たちはコクピットの扉をこじ開ける。
男A:「やったぞ!」
 搭乗者たちが歓声を上げる。そして扉を開けると、突風が吹いてくる。
男A:「うわっ!何だ?」
 男たちが突風に吹かれながら、コクピットを覗く。
男B:「お、おい。パイロットがいないぞ!」
男A:「何だと!」
 コクピットは無人で、天井には穴が開いていた。
男B:「そんな・・・・・・。」
男A:「そういうことかよ・・・・・・・・・・ちくしょうっ!」
 コクピットの計器類に中にモニター画面があり、数字が映っていた。その数字が5、4、3、2、1、と表示した次の瞬間、飛行機が爆音とともに粉々になる。
 その様子を見届けるようにヘリコプターが旋回していた。ヘリコプターには救出されたパイロットが乗っていて、爆発した飛行機を見てつぶやく。
パイロットB:「飛行機は、廃棄処分が決まった旅客機、飛行機に取り付ける爆薬は、軍事費削減で必要無くなった物、そして搭乗者は再犯を繰り返す犯罪者や、仮出所のために模範囚を演じている罪の意識がない囚人、これじゃまるで不要物処理ですね。」
パイロットA:「仕方がないだろ。犯罪が増えて、どの刑務所もパンク状態なんだから。でも、聞いた話じゃ、このフライトで使用する爆薬が少なくなってきているらしい。次はどんな方法を考えるのかな。」

実話になるかもしれない作り話 ショートショート マスコミが報道しない飛行機事故①

 或る海域に飛行機事故が多発する場所があるが、マスコミはこの海域で起きた事故については一切報道しないという。
 この日もその海域を通る飛行機が離陸準備をしていた。軍服を着た男が搭乗者に説明をしている。
軍服の男:「お前たちはこれからこの飛行機でアフリカの地雷埋設地帯へ行ってもらう。そこでのお前たちの仕事は、地雷処理だ。途中、燃料補給でいくつかに飛行場に降りるが、その時、絶対に妙なことは考えるなよ。この飛行機にはいたるところに爆薬が仕掛けてあってな。お前たちが妙な行動を起こすと瞬時にセンサーが反応してこの飛行機はドカンだ。」
男A:「ふんっ。ばかばかしい。」
パイロットA:「君、すごく緊張しているな。このフライトは初めてか?」
パイロットB:「私はこれで5回目なんですが、このフライトだけはどうしても慣れないんですよ。」
パイロットA:「そうか。俺も正直怖いよ。サポートがついてくれてはいるが、あの海域に来たときが一番緊張するんだ。」
パイロットB:「無事に到着地につくといいですね。」
 飛行機が離陸する。少し遅れて軍用ヘリコプターが離陸する。
男B:「さっき軍人が言ってたことは本当なのかな。この飛行機に爆薬が仕掛けてあるって。」
男A:「あんな話、はったりに決まってるだろ。とにかく今は、様子を見るんだ。」
 男たちが座る座席の窓際には、青いレンズが光っていた。やがて飛行機は燃料補給のため、ある飛行場に降りる。燃料補給の間、監視が見守る中、男たちは食事をとる。
男A:「この感じだと上手く行くかもしれないな。」
男B:「まさか、お前・・・・。」
男A:「ああ。」
 と言って、やすりをちらりと見せた。窓際の青いレンズに男が持つやすりが映る。飛行機は再び離陸し、ヘリコプターも離陸する。
パイロットB:「そろそろあの海域上空ですね。」
パイロットA:「そうだな。」
 パイロットは操縦桿を強く握りしめた。一方、座席では男がやすりで自分の手錠を切っていた。
男A:「あともう少しだ。」
 そして、男の手から手錠が切り離される。
男A:「やったぞ!」
 その瞬間、青く光っていたレンズがジワリと赤い光に代わる。