実話になるかもしれない作り話ショートショート「償い」①
或る日、1人の女性に連邦裁判所の判決が下った。
裁判官A:「判決投票の結果、被告人は有罪、そして刑罰はアフリカの難民キャンプで5年間の労働とします。」
真奈美:「はい。」
1週間後、アフリカにある難民キャンプにバスが止まり、真奈美と数人の日本人が下りてくる。全員不安そうな表情をしている。
男性職員A:「ここが君たちが働く場所であり、住む場所でもある。」
男性職員は、鞄からパスポートを取り出す。
男性職員A:「これは君たちのものだが、今は必要ない。」
と言って、パスポートを燃やしてしまう。日本人たちからどよめきが起こる。
男性職員:「心配するな。君たちがここで働く期間が終了したら、またパスポートを発行する。」
そこに1台のトラックが施設に入ってくる。別の男性職員がトラックの運転手に対応している。トラックに荷台にはシートにくるまれた荷物が3つ積まれていたが、シートには血が付いていた。
男性職員:「夜中に施設を抜け出した連中だ。この近くにはまだ処理されていない地雷がたくさん埋まっていて、ゲリラ化した兵隊たちもうようよいる。ここから逃げ出すなんて考えない方が身のためだ。」
日本人たちは、震えながらトラックを見ていた。
京子:「部屋には私が案内します。」
男性医師:「男性たちは私が案内します。」
男性職員:「よろしくお願いします。」
京子は女性たちを住居に案内する。
京子:「ここがみなさんの部屋です。」
部屋は簡素な造りだが、2段ベッドが2台置かれていて、トイレとシャワールームが完備されていた。
京子:「どうしたの。なんだか驚いた表情だけど。」
真奈美:「牢屋みたいなところに入れられると思ってたから。」
京子:「そう。確かにあなたたちの立場を考えるとその方がいいのかもしれないけど、ここでは立場に関係なく最低限の生活ができるように考えられているから。」
翌日、施設での作業が始まる。
男性職員B:「男はこれから地雷処理をしてもらう。女は施設内の子供たちの世話だ。
男性たちに鎧のような防護服が渡される。男性たちは震えながら袖を通していた。
男性職員B:「では、今から地雷の埋設地帯に向かう。命がけの仕事だ。妙なことは考えるな。」
男性たちを乗せたバスが、施設を出ていく。
施設の周りにはフェンスが張られていて、そのフェンスの少し先にはどくろが描かれた看板がいくつも立てられている。真奈美が看板を見ようと近づこうとすると、京子が止めに入る。
京子:「それ以上近づいちゃだめ。あのどくろの看板の向こうにはまだ処理されていない地雷が埋められているの。危険よ。」
真奈美の表情が恐怖でひきつる。
実話になるかもしれない作り話ショートショート「或る工場の話」③
別の工場では、河野と小林が食堂で食事をとっていた。
平田:「仕事は慣れた?」
河野:「はい。正直、ここにもきつい人はいるけど、前の工場と比べたら、ここの方が仕事がしやすいですね。」
野崎:「ここに来る前は、どこで仕事をしていたの?」
河野:「小林さんと一緒にコンビニのスマイルストアの工場にいました。」
と言う河野の言葉に、一緒に食事をしていた作業員たちが苦笑いをした。
平田:「あー。あの工場ね。」
野崎:「あの工場はちょっとね・・・・・・。」
南田:「あそこはいじめがひどい事で有名よ。」
小林:「勤めてたことがあるんですか?」
南田:「私、1年半あの工場にいたの。」
野崎:「私は1週間の短期で。でもその1週間は本当にきつかったわ。」
河野:「ええー!」
南田:「私がいた部署は工場の中で平和な部署だったの。だけど他の部署はいじめが相当ひどかったそうよ。」
平田:「私は、スマイルストアの工場は知らないんだけど、以前勤めていた会社の中にはきついところがあったわね。いろいろ勤めてみて思ったんだけど、どの会社も雇った人が使えなかったら、次の人を雇えばいいと思っている会社が多いわね。確かに頼りない仕事をしている人を見るとイライラする気持ちはわかるんだけど、それで頼りない人を怒ったりすると、怒られた人はみんな辞めちゃうでしょ。そしたら、辞めた人の仕事量が残っている人たちへのしわ寄せになるから、結局残った人たちがしんどい思いをするのよね。だから、頼りない人がいても怒るのを我慢して長い目で見なきゃいけないんだけど、今の会社はそれができないみたいね。」
野崎:「新しい人を雇うのはいいんだけど、新しく来た人は当然その会社の技術を全然知らないんだから、いちいち教えていかないといけない。それって、1からやり直しているだけで一歩も先には進んでいないのよね。仕事を手伝ってくれる人がほしくて求人広告を出しているのに、せっかく雇った人材を生かせないというか、完全に死なせているのよね。」
南田:「私もいじめが嫌で会社を辞めたことがあるの。それでまた新しい会社に入ったら、そこでもいじめがあって、結局どこに行っても一緒なんだなってつくづく思ったわ。こんな言い方でいいのかわからないけど、確かにいじめは良くない。でも、どの会社にもいじめはあるんだから、もしも転職を考えているんだったら、その辺を踏まえて置かなきゃいけないと思うよ。」
アナウンサー:「大手コンビニエンスストア、スマイルストアの親会社であるスマイルホールディングスは、スマイルストアの店舗数を半分に削減すると発表しました。削減の理由についてスマイルホールディングスは、店舗に食品を提供している工場の人材確保が困難なためとしています。コンビニエンスストアの営業方針の転換にについてはつい先日エブリーマートが、パーキングエリアの店舗以外の店舗を、朝7時から夜7時に短縮すると発表したばかりです。」
実話になるかもしれない作り話ショートショート「或る工場の話」②
数日後、工場に新人作業員が作業場に入ってくる。
工場長:「ここがみなさんたちの作業場です。最初は大変かもしれませんが、すぐに慣れますから。仕事でわからない事があったら、周りの人に聞いてください。」
この様子を見ていた男性社員がぼやいた。
吉村:「また今日も1からやり直しだよ。」
工場長が事務所に戻ってくると、事務員が駆け寄ってくる。
事務員A:「工場長、お客様がお見えです。」
工場長が応接室に行くと、男性が座っていた。男性は深々と頭を下げる。
金田:「初めまして。私はここでお世話になっている金田雪子の夫です。実は、妻が車で事故を起こしまして、命は助かったんですが、介護が必要な体になってしまいました。それで工場長にこれを…。」
と言って退職届を渡す。
金田:「妻に代わって、ご挨拶に伺いました。工場のみなさんによろしくお伝えください。今まで本当にお世話になりました。」
工場長が事務所に戻ってくる。
工場長:「弁当ラインの金田さんが交通事故を起こして、介護が必要になったそうだ。それでご主人が退職届を持ってきたよ。」
事務所内に動揺が走る。
工場長:「弁当ライン、人は足りているのか?」
事務員B:「人数は大丈夫なんですけど、作業員のほとんどが今日、入ってきた人なんですよ。」
事務員C:「ほかの部署から応援を呼びますか?」
工場長:「・・・ああ、そうしてくれ。」
数日後、事務所に電話が入る。
事務員A:「工場長、木田さんから電話があって、ご主人が認知症を発症して介護が必要になったという事なので、退職を希望しているそうです。」
工場長:「洋菓子ラインはどうなってる?」
事務員B:「洋菓子ラインは、昨日入ってきた人がほとんどです。」
事務員C:「応援は弁当ラインにベテランが取られて洋菓子には人が回せないそうです。」
工場長:「・・・わかった。俺がラインに入るよ。」
工場長が洋菓子ラインに入る途中、製パンラインに人だかりがしていた。
工場長:「どうした。何かあったのか?」
吉村:「今、事務所から電話があって、西浦班長が倒れて、意識不明だそうです。」
工場長:「何だって!ああ、こんな所でじっとしていても間に合わないから、とにかく動かそう。」
と、工場長は製造機械を動かそうとする。
工場長:「え?パスワード?これにはそんなものが必要なのか?」
吉村:「その機械に触ろうとすると、素人が触るものじゃないって、西浦班長が怒るんですよ。俺、班長に殴られましたから。ほかの人も怖がって、誰も機械に近寄ろうとしないんです。」
工場長:「あいつ・・・おい、誰かパスワードを知らないか?」
作業員全員が首を横に振る。
工員1:「パスワードを知っているのは、西浦班長と、後は井田班長です。」
工場長:「じゃあ、井田を呼んでくれ。」
吉村:「井田班長は、月曜日まで有給を取ってます。」
工場長:「弱ったな・・・急いで井田と連絡を取ってくれ。」
工員2:「わかりました。」
製パンラインの様子が気になり、他の工員が集まってくる。
工場用:「これじゃ間に合いそうにないな。おい、この機械のパスワードを変更したいんだ。やり方を教えてくれ。」
工員たちが、顔を見合わせる。
工員3:「・・・やり方はわかりますけど、パスワードを変更するには、前のパスワードを入力しないとダメなんですよ。」
工場長:「何だって?」