実話になるかもしれない作り話ショートショート 「取調室」
或る日、1人の女が逮捕された。容疑は自殺幇助だった。
女:「どうして私が逮捕されないといけないんですか?」
捜査員A:「自殺した被害者の遺書にあなたの名前があったものでね。」
女:「それが逮捕の理由ですか?じゃあ、自殺した人の遺書に名前が描かれている人はみんな逮捕されるっていう事ですか?いじめも犯罪になるっていう事ですか?」
捜査員B:「場合によってはそういうことになりますね。数年前に憲法や法律が大幅に改正されて、その時に犯罪に関する事もいろいろと改正されたんですよ。」
女:「そんな・・・。私、彼女をいじめた覚えはありませんよ。彼女の遺書に私の名前があったそうですけど、迷惑なのはこっちですよ。」
捜査員A:「あなた、被害者を給湯室に呼び出して説教していたそうですね。」
女:「えっ?」
捜査員B:「被害者に与えていた仕事も、本来の仕事とは関係のない雑用ばかりだった。」
女:「どうして?」
捜査員B:「仕事で失敗した時も、あなたと親しい人の失敗は何も言わないのに、被害者が同じ失敗をしたときは、被害者をひどく叱りつけたそうですね。給湯室で。」
女:「なぜそんなことがわかるんです?」
捜査員A:「そういう証言があったものですから。」
女:「証言?そんなばかな。給湯室には私とあの子しかいなかったのよ。目撃者なんていないはず・・・・。」
捜査員A:「ということは、被害者を給湯室に呼び出したことは間違いないんですね。」
女:「・・・そうよ。あの子を給湯室に呼び出したのは本当よ。誰にも気づかれないようにしていたのに。その、証言って、誰の証言なんですか?」
捜査員B:「捜査内容については詳しく話すことはできません。」
女:「まさか・・・・・聞いたの?あの子に・・・・・。」
捜査員B:「ですから、捜査内容については、お話しすることはできないんですよ。」
捜査員A:「被害者が自殺する前日、事業に関するあるアイデアが採用され、高い評価を得た。このアイデアを考えたのは、社内ではあなたという事になっていますが、本当は被害者が考えたアイデアだったそうですね。」
女:「やっぱり・・・・・・。」
捜査員B:「当然、被害者はあなたに詰め寄った。でもあなたは被害者にこう言った。誰にも言わないでね。このことを誰かに話したら、どうなるか、わかっているわね、と。」
女:「聞いたんでしょ・・・。あの子に・・・・。怖かったんですよ。入社して間もないのに頭角を現してきて、上司からも信頼されていて、私のポジションが取られると思ったんです。ちょっといじめたら会社を辞めるだろうと思っていたのに、自殺するなんて・・・・こんな事になるなんて・・・・・」
この取調べの様子を数人の男性がマジックミラー越しに見ていた。
男性:「被害者の降霊実験の結果がこんなに効果があったとはね。このシステムをもっと早く導入していれば、未解決事件は起こらずに済んだのかもしれないな。迷宮している事件や未解決事件を中心に被害者の降霊実験を続けてくれたまえ。」
実話になるかもしれない作り話ショートショート「償い」⑥
真奈美:「もしもし。・・・・もしもし?」
男性医師:「真奈美ちゃんだね。」
真奈美:「先生!どうしたんですか?急に」
男性医師:「急な電話で驚かせて済まない。実は・・・京子さんが亡くなったんだ。」
真奈美:「ええっ!・・・・どうして?」
男性医師:「施設に入ってきたばかりの子供が遊んでいる最中、地雷が埋められている場所に入り込んでしまってね。京子さんはその子を助けようとして、地雷を踏んでしまったんだ。」
真奈美:「そんな・・・・・。」
男性医師:「子供は助かったんだけど、京子さんは・・・・・。俺は医者なのに、京子さんを助けられなくて本当に悔しいよ。久しぶりに君の声が聞けて、話もできたのに、こんなことを伝えなきゃいけないなんて。・・・すまない。京子さんを助けられなくて本当にごめん。」
真奈美:「先生・・・・・。」
真奈美は一晩中泣き続けた。京子の思い出が頭をよぎる。
真奈美:「京子さんが見た夢は、子供さんが京子さんを迎えに来ていたのかな。私が見た夢は、京子さんの最期の挨拶だったのかな・・・・・。」
1ヶ月後、難民キャンプにバスが止まり、数人の日本人が下りてくる。その日本人の中に真奈美の姿があった。
男性職員A:「今日からここが君たちの働く場所であり、住む場所でもある・・・・・君は!」
真奈美:「お久しぶりです。」
男性医師:「真奈美ちゃん!どうして戻ってきたんだ!」
真奈美:「私、ここで働くことにしました。」
男性医師:「京子さんと約束しただろ。君は日本に帰って幸せにならなきゃいけないって。」
真奈美:「私が幸せでいられるんだったら、どこでもいいんでしょ?」
男性医師:「まあ、そうだけど・・・・・。しょうがないな。いいかい。ここは死と隣り合わせの場所なんだよ。覚悟はできているんだろうね。」
真奈美:「はい。わかってます。」
男性医師:「よし、わかった。」
男性職員:「先生。いいんですか?」
男性医師:「責任は俺がとる。真奈美ちゃん、おいで。部屋に案内するよ。」
真奈美はある部屋に案内される。
男性医師:「今日からここが君の部屋だよ。」
真奈美:「この部屋、まさか。」
男性医師:「京子さんが使っていた部屋なんだ。」
部屋は簡素だがやさしい雰囲気の部屋だった。壁には京子が映る写真や真奈美が送った写真が飾られていた。真奈美の心に京子の思い出がよみがえり、真奈美の眼に涙があふれる。
男性医師:「あの後、片付けようと思ったんだけど、まだそのままなんだ。」
真奈美:「いいえ。このままでいいです。京子さんの香りがする。京子さんがそばにいるような気がする。」
そして再び真奈美は施設で働き始める。1日の仕事が終わり、真奈美は京子の部屋に戻る。部屋を見回しながら、真奈美は思う。
真奈美:「京子さんとの約束、守れなくてごめんなさい。でも、あの時私は思ったんです。私の罪は、まだ償えていないって。だから私も、その時が来るまで頑張ろうと思います。もうちょっと、このままでいさせてください。」
京子:「もう、仕方がないわね。」
と、京子の声が聞こえたような気がした。京子の写真が目に留まり、真奈美の眼に涙があふれる。
翌日、真奈美は働き続ける。そして子供たちと無邪気に遊ぶ。そんな毎日が続き、3年後。男性医師のアフリカでの勤務が終わり、後任の医師が派遣されることになった。
真奈美:「先生、日本に帰るんですか?」
男性医師:「いや、今度は中東に行くことになったんだ。そこもまだややこしい状況だからね。」
真奈美:「そうですか。」
男性医師の最後の勤務の日、仕事を終えた男性医師が真奈美の部屋に挨拶に来る。
真奈美:「先生、本当にお疲れ様でした。中東での仕事頑張ってください。」
男性医師:「ああ、ありがとう。真奈美ちゃんも・・・・・。」
男性医師は真奈美を抱きしめる。
真奈美:「先生!」
男性医師:「俺、臆病になったのかな。なんだか一人になりたくないし、君を一人ぼっちにしたくないんだ。」
真奈美:「先生。」
男性医師:「君を絶対に一人ぼっちにしないから。ずっと一緒にいるから。ついてきてほしい。」
真奈美:「先生・・・・・。はい。わかりました。」
男性医師:「ありがとう。」
男性医師と真奈美がアフリカを離れる前日、真奈美は部屋の整理をしていた。かばんに荷物を詰め、部屋に壁に飾られた写真をかばんに詰める。その写真には新しく、男性医師と花束を持った真奈美が並んで映る写真が加わった。
真奈美:「京子さん、私と先生は一緒にここを離れることになりました。次は、中東に行きます。どうか、見守っていてください。」
翌日、新任の医師と男性医師がバスの前で握手をしている。
新任医師:「二階堂先生、本当にお疲れ様でした。次は中東だそうですが、お体には十分に気を付けて。」
男性医師:「ああ、ありがとう。君も体に気を付けてな。」
新任医師:「はい。ありがとうございます。奥様も、お体に気を付けて、がんばってください。」
真奈美:「あ、はい。ありがとうございます。」
その日は穏やかに晴れていた。2人を乗せたバスは、抜けるような青空の下を走っていった。
実話になるかもしれない作り話ショートショート「償い」⑤
日本に帰国した真奈美は、とある工場で働いていた。仕事が終わり帰宅した真奈美の自宅のポストに、京子からのエアメールの封筒が入っていた。それを見つけた真奈美はとてもうれしそうに封を開ける。
京子:いつもノートや鉛筆を送ってくれてありがとう。本当に助かります。今日、うれしいことがありました。以前、施設に保護されていた子が久しぶりに施設に遊びに来てくれました。保護された時は瀕死の状態で、長くは生きられないんじゃないかと思っていた子が、見違えるほど立派になっていたのよ。彼は今農業をやっていて、畑で採れた野菜を持ってきてくれたの。足が不自由なのに本当に頭が下がります。
手紙には写真が同封されていた。写真には京子の手紙に書かれていた青年と京子、そして男性医師が映っていた。青年は、義足をつけていたが、とても元気そうで晴れやかな笑顔だった。寄り添う京子は、青年の母親のようにとても幸せそうに微笑んでいた。
真奈美:「京子さん、お母さんみたいで幸せそう。でも、先生はちょっと老けたかな。」
京子:私があの子の母親?私、母親と呼ばれるにはもうちょっと若いんだけどな。でも、先生はあなたに老けているって書かれているのを見て落ち込んでたわよ。
返事をもらった真奈美は手紙を読みながら笑う。季節は進み、
真奈美:近所に紅葉がきれいな並木道があるので写真に撮りました。気に入ってもらえたら嬉しいです。
そして冬。
真奈美:朝起きた時にいつもよりも寒いな、と思って外に出てみたら、こんなに真っ白でした。普段この辺は冬でもあまり雪は降らないんだけど、珍しかったので写真に撮りました。
写真には真奈美と小さな雪だるまが映る。
京子:写真、ありがとう。早速部屋に飾ります。紅葉に雪景色、見るのは久しぶりです。あ、そうそう、先生も写真がほしいと言っていたので、焼き増しして送ってね。
真奈美:「あ、先生の分、忘れてた。」
京子:お餅を送ってくれてありがとう。施設の子供たち、焼いたお餅が膨らむのを見てびっくりしてたわよ。おいしいって言って食べてくれた子もいるけど、怖がってなかなか食べてくれない子もいたり。ちなみにここではきな粉餅が大好評でした。
同封された写真には真奈美が送った鏡餅とそれを囲むように京子と子供たちが映っていた。
そして春。真奈美は近所の桜並木を見てつぶやいた。
真奈美:「この桜は絶対に京子さんに送らなくちゃ。」
京子:桜の写真、ありがとう。先生も喜んでいたわよ。桜って、本当にきれいね。特に日本の桜は、世界一だと思うわ。話は変わるけど、昨日、私の夢に私の子供が出てきたのよ。あの時の姿のままで。あの子、笑ってた。すごく嬉しそうに笑ってたのよ。あの子の笑顔を見てたら、なんだか私も嬉しくなっちゃった。
その日の夜、真奈美も夢を見た。京子が夫らしい男性と子供を真ん中にして手をつないで歩いていた。夫らしい男性と子供の顔は見えなかったが、京子は幸せそうな笑顔で3人は真奈美の前を通り過ぎて行った。
翌日、仕事を終えて帰宅した真奈美のもとに電話が入る。