月ヶ瀬小春のブログ -86ページ目

実話になるかもしれない作り話ショートショート 「臓器移植」

 夜、ある豪邸で悲鳴が上がる。老夫婦が階段を上がり、寝室の扉を開けると、ベッドの上で男女が血まみれになって死んでいた。死体のそばにはナイフを持った青年が立っている。
老人:「圭吾、圭吾!お前が殺したのか?」
青年:「はい。僕が息子さん夫婦を殺しました。早く警察を呼んでください。僕は逃げませんから。」
 数時間後、青年は取り調べを受ける。
青年:「及川夫婦を殺害したのは僕です。間違いありません。」
捜査員A:「動機は何だったんだ?」
青年:「許せなかった。及川夫婦のすべてが許せなかった。」
捜査員B:「できるだけ詳しく説明できないか?」
青年:「はい。僕は幼いころ、移植手術を受けました。その時にドナーになったのは、及川夫婦の子供なんです。」
捜査員A:[何だって!」
捜査員B:「じゃあどうして殺したりしたんだ?」
青年:「僕のドナーになった及川夫婦の子供は、2人の虐待の果てに殺されたんですよ。」
捜査員A:「虐待?」
青年:「ええ。20年ぐらい前の事です。過去の事件を調べても何も見つかりませんよ。あの夫婦は事件にならないように事故に見せかけたんですから。」
捜査員B:「どういうことだ?」
青年:「及川夫婦の夫は、有名企業の御曹司で、次期社長の座は決まっていた。でも及川は、自分の子供を日常的に虐待していた。そのうち子供が成長して言葉を話すようになった時、虐待の事実を及川に父親に話すようなことがあれば、次期社長の座は無くなってしまう。それを恐れた及川は、事故を装い自分の幼い息子を階段から突き落としたんです。」
捜査員A:「何だって!」
青年:「そして及川夫婦の息子の心臓が僕に移植されたんです。息子をドナーにして善意を装ったつもりでいたみたいですけど、証拠隠滅ですよね。」
捜査員A:「君、えらく詳しいじゃないか。どうやって調べたんだ。」
青年:「調べたというより、教えてもらったという感じですね。」
捜査員B:「もしかして、内臓記憶とか、細胞記憶ってやつか?」
青年:「たぶんそうだと思います。」
捜査員A:「何だ、その内臓記憶って。」
捜査員B:「臓器移植とか骨髄移植を受けると、移植された人に臓器の元の持ち主の記憶や性格がうつるらしいんですよ。酒が飲めなかった人が飲めるようになったり、味覚まで変わることがあるそうです。どこの国だったか、殺人事件で殺された人の臓器を移植された人が、犯人の顔を覚えていて、逮捕に至ったこともあるそうです。」
青年:「今の刑事さんの話を聞いていると、僕に起きた事はその内臓記憶なのかもしれません。物心ついた時から、時々同じ夢を見るようになったんです。大人から暴力を受ける内容で、最後にいつも階段から突き落とされるんです。とても寂しくて、悲しい、本当に怖い夢でした。それでいろいろ調べたんです。そしたら、あの夫婦にたどり着いたんです。」
捜査員A:「それで、犯行を思いついたのか?」
捜査員B:「せっかく助かった命なのに、ご両親に申し訳ないとは思わなかったのか?」
青年:「僕の両親は、移植でしか助からない病気の僕のために、必死で働いてくれました。そして僕の移植が決まった時も、昼も夜も働いてくれました。そして働き疲れて、くたびれて死んでいきました。その時に僕は、もう誰も悲しむ者はいない、自由に行動できると思ったんです。」
 青年が逮捕され、連行される。その時青年は老夫婦に、
青年:「僕は、幼いころ、移植手術を受けました。その時ドナーになってくれたのは、あなたたちのお孫さんなんですよ。」
老人:「何だって!」
老人の妻:「祐介が?」
青年:「あなたに虐待の事実がばれると、次期社長になれないことを恐れた息子さんが、事故に見せかけて階段から落とされて死んだあまたのお孫さんですよ。覚えておられますか?」
老人:「そんな事が・・・・・・・。祐介・・・・。」
老人の妻:「祐介・・・・・・・祐介・・・・・・・・・。」
青年:「これはきっと、お孫さんからのメッセージでしょうね。」
 老夫婦は泣き崩れる。青年を乗せたパトカーが豪邸の前を去っていく。

実話になるかもしれない作り話 ショートショート ニュース編

アナウンサー1:「神奈川県にある児童養護施設の施設長が人身売買の疑いで逮捕されました。施設長は、臓器移植が必要な病気の子供を持つ親に、施設に預けられている子供を臓器移植のドナーとして売買していました。」
アナウンサー2:「調べに対し施設長は、施設に預けられている子供は、親からの虐待を受けていたり、身勝手な親に親権を放棄された悲しい境遇を強いられている子供がほとんどだった。ブローカーにこの話を持ちかけられた時、子供の臓器移植を望む親の子供を愛する気持ちの強さを感じた。施設の子供たちがこのまま生きていくよりも、ドナーとなって移植を希望する家族の一員として生きていく方が幸せなのではないかと思った、と供述しています。」
アナウンサー1:「これを受けて、警視庁は施設長に人身売買を持ちかけたブローカーも全国に指名手配して行方を追っています。」

実話になるかもしれない作り話ショートショート ニュース編

アナウンサー1:「豊島区の病院の新生児室から生後間もない乳児が連れ去られた事件の続報です。乳児が連れ去られてから1時間後の午後3時ごろ、文京区のアパートに住む住民から男が住んでいる部屋から赤ん坊の泣き声がするとの通報があり、警察が駆け付けたところ、連れ去られた乳児を発見、保護するとともにこの部屋の住民の男2人を逮捕しました。」
アナウンサー2:「逮捕された男2人は同性愛者で、警察の調べに対し、2人の子供がほしくて盗むことにしたが、赤ちゃんが目を覚ました時、ミルクをあげようとしたが、泣き止まないので困っていたと話しています。」
アナウンサー1:「この、乳児の連れ去り事件、先日も不妊症に悩む夫婦の事件を報道したばかりですが、この夫婦の未遂事件も含めると全国で25件発生しているという事で、医療機関は警戒を強めています。」