月ヶ瀬小春のブログ -85ページ目

実話になるかもしれない作り話ショートショート「手紙」

 出所した高橋は、遺品整理の会社で働いていた。その日も高橋を乗せた車が依頼を受けたマンションの前で止まる。管理人が部屋の鍵を開けて室内に入ると、以外にも室内はきれいに片づけられていた。
高橋:「きれいな部屋ですね。」
同僚:「時々、部屋をきれいに片づけてくれていることもあるんだけど、そういう人は大体、余命宣告を受けた人なんだ。」
高橋:「余命宣告?」
同僚:「ああ。末期のガンで余命があと1年とか半年、っていうのがあるだろ?ということは、身辺整理っていうか、後片付けの時間があるっていう事なんだよ。」
高橋:「なるほど。」
 作業中、高橋は一通の手紙を見つける。
同僚:「どうした?」
高橋:「手紙です。」
同僚:「手紙?」
高橋:「これ・・・・・僕たち遺品整理の業者にあてて書かれたものですよ。」
同僚:「俺たちに?」
 高橋は、手紙を読んでみた。
住人:「私は、不妊症を患っていたこともあり、子供は授かりませんでした。主人も先に逝き、昨年私も癌を発症していることが分かったのですが、治療は行わないことにしたので、私が死んだら、専門の業者さんにお願いすることになると思い、この手紙を書きました。片づけられるものはすべて処分しましたが、その日がいつ来るかわかりませんでしたので、残して逝かなければならないものがあり、それらの処分をお願いいたします。」
同僚:「律儀な人だなあ。」
住人:「余命宣告を受けてから、日々、その日が近づいているのだと思って覚悟はしていても、やはり不安があるものですね。この手紙を書いていても、正直、寂しいものがあります。
 聞けば、今、遺品整理の業者さんが忙しいのだそうですね。それだけ家族のいない人が増えているのでしょうか。孤独死のニュースを目にすることも増えていますね。しかし中には家族がいるのに遺品整理を業者に任せる遺族もいるのだとか。いろいろ事情があるとは思いますが、なんだか、寂しい世の中ですね。
 もし、生まれ変わることができたなら、その時に生きる世の中が幸せに生きられる悲しみの無い世の中であればと思っております。」
 遺品整理の作業が終わり、高橋たちが会社の車に乗り込む。
同僚:「本当は、俺たちのような業者が忙しい世の中じゃいけないと思うんだけどな。この仕事をやって時々、なんでこんな世の中になったのかなって思うよ。」
高橋:「そうですね。」
同僚:「まだ、その手紙を持っているのか?」
高橋:「なんだか捨てられなくて。この手紙を読んでいて、どうやって約束を果たそうか、考えていたんです。」
同僚:「約束?」
高橋:「ええ。恩人と交わした大事な約束なんです。」
同僚:「そうか、その約束が果たせるといいな。」
高橋:「はい。」
 高橋は、銀の懐中時計で時間を見る。車が発車し、マンションを後にする。

実話になるかもしれない作り話ショートショート 「ニュース編」

アナウンサー1:「政府は海外で飲食店を経営している日本人に対して、1ヶ月以内に店舗を閉鎖して帰国するよう各国の日本大使館に要請しました。これは事実上の帰国命令という事になりますが、この帰国命令に従わなかった場合、罰金1000万円と飲食店を経営する権利や資格、また、調理師免許の剥奪という大変厳しい罰則が科せられるという事です。」
アナウンサー2:「また、海外に工場を持つ企業に対しても、5年以内に海外の工場を閉鎖して日本に帰国させるよう各企業に要請をしていて、その際に必要になる工場用地の確保については各自治体に協力を求めるほか、帰国後の飲食店の経営者についても助成金を出す方針です。」

実話になるかもしれない作り話ショートショート「ニュース編」

アナウンサー1:「東京、大阪、愛知の一部の小学校、中学校、高等学校に精神科医や心理カウンセラーを試験的に配置する試みが始まって今日で半年になることを受けて、このほど実態調査の結果が発表されました。」
アナウンサー2:「児童の悩みを聞いたり、ストレスを和らげることで児童の問題行動やいじめの発生は少なくなっていることで一応の成果を得たという事ですが、別の学校では児童の親が相談やカウンセリングを受けに来ていて、駆け込み寺のようになっている所もあるという事です。」
アナウンサー1:「この実態調査の結果から、政府は来年度から精神科医や心理カウンセラーを配置する学校を増やす方針を決めました。」