月ヶ瀬小春のブログ -82ページ目

実話になるかもしれない作り話ショートショート「DNAは知っている」⑦

 1年後。ウィルスは世界中で猛威を振るっていた。世界のマスコミはこのウィルスを新型インフルエンザと報道していた。街を歩く人々はマスクをつけて歩いている。ワクチンの開発は国を挙げて急ピッチで行われていた。そしてようやくワクチンが完成する。
医師1:「やったぞ!早速これを患者に投与してくれ。」
 早速患者にワクチンが投与される。しかし翌日、患者の容体が急変する。救命措置が取られるが、患者は死亡する。
医師2:「何故だ。実験ではこのワクチンでウィルスは死滅していたのに。」
 死亡した患者が徹底的に調べられる。そして検査の結果、
医師3:「そんな馬鹿な・・・・・。ウィルスのDNAが変異している・・・・・。ウィルスが全く別のものになっている。このワクチンは何の効果もないだろう・・・・・。」
 ワクチンの開発はさらに続けられた。そして再びワクチンが開発され、患者に投与されるが、患者は翌日死亡した。この時の検査で検出されたウィルスも、DNAが変異していた。そんなイタチごっこが繰り返されて10年が過ぎた。ウィルスの猛威は衰えておらず、国や地域の中には住民が死に絶えてしまったところも出ていた。
 アメリカでも、ウィルスによる死亡者が多数発生した州は、住民が出入りできないように封鎖された。外出の時にはマスクが欠かせなくなっていた。オフィスビルや飲食店、個人の家の入り口にはエアーシャワーが設置され、室内に入る時はそのエアーシャワーを通らなければならなくなった。エアーシャワーは、ウィルスを完全に除去する機能が付いているため、室内に入るには15分もかかってしまう。
デビッド:「まったく厄介な病気ですね。」
 と、パソコンの画像を見てデビッドがぼやいた。パソコンにはウィルスとそのDNAの配列を表した画像が映っていた。
手塚:「そうだな・・・・・。だが、この病気、本当にインフルエンザなのかな。」
デビッド:「ええ?専門家は新型のインフルエンザと言っていたでしょ。」
手塚:「それは知ってる。でも、症状が違うんだ。俺には全く別の病気としか思えない。というより、いろいろな病気を合成させているように思えるんだ。」
 その時手塚は、10年前の事件を思い出す。
手塚:「そうだ、デビッド。君、10年前に患者が自殺した事件を覚えているか?」
デビッド:「ええ。覚えてますよ。あの事件が何か?」
 手塚の部屋の前にスタッフがやってきて入ろうとするが、ドアの前で立ち止まり、2人の話を立ち聞きする。
手塚:「あの時、警察が患者の所持品からカルテまで持って行ってしまったんだが、その所持品の中にシベリアの大規模火災の記事が載った新聞が入っていたんだ。その時俺は、老人が自殺したのは、そのシベリアの大規模火災の記事が原因じゃないかと思ったんだ。」
デビッド:「あの大規模火災は、温暖化で溶けた永久凍土から漏れたメタンガスが発火したんですよね。」
手塚:「確かに新聞記事にはそう書かれていたが、あの地域には昔から妙な噂があるんだ。」
デビッド:「噂?一体、どんな噂なんです?」
手塚:「あの地域の地下に、”負の遺産”が埋められているという噂なんだ。」
 手塚たちの話を立ち聞きしていたスタッフが、慌てたように手塚の部屋から立ち去る。

実話になるかもしれない作り話ショートショート「DNAは知っている」⑥

 数時間後、ロシアの大使館。捜査員たちが大使館員と面会していた。大使館員の机の上には古い書類の束が置かれていた。書類には、赤い文字が大きく書かれている。
捜査員3:「実は、今朝自殺した人物の部屋を捜索しているときに、この書類を見つけましてね。内容を調べたところ、あなた方のマスコミが報道したシベリアの大規模火災の内容とかなり食い違う事が書かれていました。なぜ、こんなにも内容が違っているのか教えていただきたいと思いましてね。それでこちらに伺ったんですよ。」
 大使館員の表情はこわばり、震えていた。
捜査員3:「私は、ロシア語は得意ではないのですが、この書類に書かれた赤い文字、これは国家最高機密を表す言葉だそうですね。この地域での調査の許可をいただきたい。」
 大使館員は、言葉が出ず、うなずくだけだった。
 翌日、シベリア。宇宙服を思わせる防護服に身を包んだ男が数人立っている。目の前には巨大なクレーターが口を開けていた。
防護服の男1:「地球温暖化の影響で永久凍土が溶けて地盤沈下が起こり、この地下にあった弾薬庫が破壊され、中に貯蔵されていた弾薬が爆発を起こしたようです。」
防護服の男2:「と、同時に弾薬の中に積まれた”負の遺産”も、飛散したというわけか。」
防護服の男1:「はい。」
防護服の男2:「その、”負の遺産”だが、どんなものが積まれていたんだ?」
防護服の男3:「それについてはここの土を採取して調査中ではありますが、資料には、記載されているだけでも20を超えていまして、それらがすべて弾薬に積まれていたのかどうかは不明です。だた、気になるのは、それらを掛け合わせて”別のもの”を作ってはいないかと・・・・・。」
防護服の男2:「別のもの?」
防護服の男3:「ええ。そうなるとかなり厄介ですよ。書類に記載されていたものはすべて、感染力が強く、発病すると重篤な症状を起こすものばかりですからね。
 そこに防護服の男2人が報告に来る。
防護服の男4:「ここから30キロ離れた地点に集落の焼け跡がありました。」
防護服の男2:「焼け跡?」
防護服の男4:「焼け跡の近くにはその集落の住人と思われる多数の死体が埋められていました。」
防護服の男2:「ただの火事ではなさそうだな。」
防護服の男5:「集落の住民は、火災が起こる前には既に死亡していたようですね。集落で火災が起こる前、村人が死んでいると警察に通報した者がいるんです。」
防護服の男2:「その第一発見者は今、どうしている?」
防護服の男5:「それが・・・・・第一発見者は警察に通報した後、帰る途中事故を起こし、死亡しています。」
防護服の男4:「地元のマスコミは、集落の火災と交通事故については一切報道していません。」
防護服の男2:「確かこのクレーターは、日本が死んだ日と同じ時期にできたそうだな。」
防護服の男1:「はい。」
防護服の男2:「事態はすでに始まっている。覚悟を決めた方がいいぞ。」
防護服の男1:「・・・・・・はい。」

実話になるかもしれない作り話ショートショート「DNAは知っている」⑤

 手塚が病院に到着すると、病院の前に数台のパトカーが止まっていた。
手塚:「一体何があったんだ?」
 病院に入ると、デビッドが警察から事情を聴かれていた。
手塚:「デビッド。どうした。一体何があったんだ?」
デビッド:「ああ、先生。実は、僕の目の前で老人が屋上から飛び降りたんですよ。」
手塚:「何だって!」
デビッド:「挙動不審の老人がエレベーターで上に上がるのが見えたので、後を追いかけたんです。そしたら本当に飛び降りようとしていたので、僕は止めようとしたけど間に合わなくて・・・。その老人、飛び降りる直前、ロシア語で何か叫んだんです。」
手塚:「ロシア語?」
 捜査員たちは、病室にあった老人の持ち物からカルテまで押収していった。その様子を手塚たちが見ている。手塚は、押収された老人の持ち物の中に、今朝の新聞が入っていることに気づく。その新聞には、ロシアの大規模火災の記事が載っていた。
手塚:「ロシアで大規模火災?」
 捜査員たちがいるところに別の捜査員がやってきて、上司らしい男に耳打ちする。
捜査員1:「自殺した老人の部屋から見つかったかばんですが、ようやく開ける事が出来ました。中には書類が入っていて、ロシア語で国家最高機密をあらわす文字が書かれていました。」
捜査員2:「それでカバンを開けるのに苦労したわけか。」
 捜査員2が手塚と目が合う。
捜査員2:「詳しいことはこっちで聞こう。」
 と、少しあわてた様子で部屋を出ていく。
 その日の午後。手塚はシベリアの大規模火災の記事を読んでいた。
デビッド:「日本の巨大地震の続報ですか?」
手塚:「いや、シベリアの大規模火災の記事だよ。自殺した老人の所持品の中に新聞があって、この記事が見えたんだ。ちょっと気になってね。」
デビッド:「シベリアの大規模火災、ですか。」
手塚:「ああ。」
 デビッドは、老人が飛び降りる直前の事を思い出していた。
デビッド:「あの老人、一体、なんて言てったんだろう?」