月ヶ瀬小春のブログ -80ページ目

実話になるかもしれない作り話ショートショート「DNAは知っている」⑬

 日本人の集落から帰る途中、手塚はデビッドに、
手塚:「これで2度目なんだ。」
デビッド:「えっ?何がです?」
手塚:「前にも、額に目がある人を見たんだ。」
デビッド:「ええっ!一体どこで?」
手塚:「半年前になるかな。うちの病院だよ。」
 半年前、手塚が夜勤をしているときだった。手塚がトイレに入ろうとした時、トイレからぬれたシーツを持った男性が出てくる。気になった手塚が男性の後を追って病室に行くと、女性が赤ん坊を抱いてベッドに座っていた。その横に男性が座り、うれしそうに赤ん坊を見ている。
手塚:「君、ここで出産を?どうしてスタッフを呼ばないんだ。」
 手塚がスタッフを呼ぼうとすると、
女性:「もう大丈夫ですよ先生。それよりも、この子を見てやってください。」
 と言って差し出した赤ん坊を手塚は抱き上げる。しかし手塚は、赤ん坊の姿を見て言葉を失う。赤ん坊の額にはもう1つ目が付いていた。
女性:「かわいいでしょ。男の子なんです。」
 手塚が女性に赤ん坊を手渡す。その赤ん坊を男性と女性がとても幸せそうに見ている。手塚にはその様子がとても不気味に見えた。
女性:「私たち、そろそろ行かなきゃいけないんです。」
手塚:「行かなきゃいけないって、どこに?」
男性:「大丈夫、心配しないで下さい。僕たちは今、とても幸せなんです。この子のおかげで幸せなることができたんです。この本物の幸せを守るために行かなければならない所があるんです。」
手塚:「・・・そうですか。しあわせに。」 
 自分の部屋に戻った手塚は我に返る。
手塚:「何だ、今のは・・・・・。俺は一体、何を・・・・・・・」
 翌朝、手塚は夫婦の病室に向かう。しかし、病室は空き室になっていた。
手塚:「305号室に入院していた妊婦はどうしたんだ?」
スタッフ:「あの病室の妊婦だったら、退院しましたよ。」
手塚:「ええ?」
スタッフ:「昨日、夜中に突然だったので驚きましたよ。」
手塚:「一体、どこに行ったんだ。」
デビッド:「そんな事があったんですか。」
手塚:「催眠術にかけられているような妙な感じだったが、確かにあの赤ん坊の額にはもう1つ、目が付いたいたんだ。
 

実話になるかもしれない作り話ショートショート「DNAは知っている」⑫

 手塚たちが家から出ると、集落の日本人たちが外に出ていて、両目を閉じた状態で立っていた。しかし、額の眼だけは開いていて、日本人たちは全員同じ方向を見ている。
手塚:「君、一体、どうしたんだい?」
 と、話しかけようとした時、額の眼を見て驚く。額の眼は怒りをあらわにしていて血の涙がたまっていた。その血がにじんだ額の目線の先には、調査員たちがいた。
調査員4:「計画を進めるにあたってどうだね、この環境は。」
調査員2:「放射線量は高い数値ではありますが、計画では、基地の管理には専用のロボットを設置するのでこの程度の環境だと特に問題は無いですね。」
調査員4:「とにかく早急に計画を進めてくれ。よそに先を越されては困るからな。」
調査員3:「この村の住民はどうします?まだ他にも生存者がいる可能性がありますが。」
調査員4:「あんな連中、蹴散らしてしまえ!」
 日本人たちの額の眼からは血の涙が流れていた。その目が調査員たちを睨みつける。
デビッド:「一体、どうしたんでしょうね。」
手塚:「デビッド、今すぐここを離れるんだ。」
 手塚は強引にデビッドの手を引き、村から出ようとする。
デビッド:「先生、どうしたんですか?」
手塚:「彼らの額の眼を見たか?恐ろしいくらいに怒りをあらわにしている。彼らは、あいつらの目的を知っているんだよ。」
デビッド:「あの調査員たちの目的?まさか・・・」
手塚:「あいつらは、ここを軍事拠点にするつもりだろう。たぶん彼らはそれに気づいたんだ。」
デビッド:「だから、額の眼があんなに?」
手塚:「ああ。俺たちはここに来てはいけなかったんだ。ここに居たら、何か恐ろしいことが起こるかもしれん。」
デビッド:「先生・・・。」
手塚:「日本は死んだ。生存者は無し。放射線量は基準値をはるかに超えていて、人が入れる状態じゃない。俺たちが日本で見たものは、瓦礫の山と犠牲者の骨の山だった。調査結果を聞かれたらそう答えろ。わかったな。」
デビッド:「先生・・・・・。わかりました。」
 手塚とデビッドが村を出る。
手塚:「おい、そろそろ迎えが来るんじゃないのか?」
調査員4:「そうだな。帰るとするか。」 

実話になるかもしれない作り話ショートショート「DNAは知っている」⑪

日本人:「額のこぶは、妻やほかの仲間全員にできていました。最初は小さかったものが、日を追うごとに大きくなって7日目の朝、目を覚まして鏡を見たときは、本当に驚きました。妻やほかの仲間たちみんなの額のこぶが、もう1つの眼になっていたんです。」
手塚:「君、奥さんが妊娠していたと言っていたよね。君の子供はどうなったのかな。」
日本人:「そのあと、無事に生まれました。でも、子供の額には、もう1つの眼が・・・。」
手塚:「やはり、そうか・・・・・。」
日本人:「これは、放射能が原因でしょうか。」
てづか:「俺は専門家じゃないからよく解らないが、そんな事よりも俺には、日本に生存者がいたこと、そして今もこうして生きてくれている事が嬉しいんだよ。」
日本人:「そうですか。」
 デビッドは、手塚が日本人と会話している様子を見ながら、日本人の家や、村の様子を見ていた。そして目の前にある入口の空いた家を見て、
デビッド:「先生、あれを・・・。」
 といって、入口が開いている家の奥を指さす。
手塚:「どうしたデビッド。あれは・・・・・・・・。」
日本人:「あの棚がどうかしましたか?」
手塚:「あの棚に置かれている物は、君が作った物なのか?」
日本人:「ええ。そうです。あの棚を作った時、何かを置かなきゃいけないなと思って、いろいろ考えていた時に、ひらめいたものを形にしてみたんです。」
手塚:「あれを置いてあるのは、この家だけなのかな。」
日本人:「いいえ。この村の住民の家にはみんな置いてありますよ。あなたたちにとってはとても気になる物のようですね。どうぞ、ゆっくり見ていってください。」
手塚:「そうか。じゃあ、ちょっと見せてもらうよ。」
 と言って、手塚とデビッドが家の中に入る。
デビッド:「先生、これ・・・・・・・。」
 棚の上には、DNAの配列をかたどった模型が置かれていた。模型はガラスのような素材で作られていて、虹色に輝きまるで宝石のようだった。
手塚:「これは、DNAの模型だな。こんな複雑なものを一体、どうやって作ったんだ?」
デビッド:「よく見ると、塩基配列は完璧ですよ。でも先生、この棚はこんな高い位置にあるけど、何か意味があるんですか?」
手塚:「この棚は、神棚と言って、神を祀るための神聖な場所なんだ。」
デビッド:「ええっ!そんな場所にDNAの模型があるという事は、彼らにとっての神は、DNAということですか?」
手塚:「おそらくな。」
 デビッドは、家の中を見渡しながら、
デビッド:「この家を見ると、テレビやパソコン、電話もありませんね。先生の会話を聞いていてずっと不思議に思っていたんですけど、通信機能もないのに、彼らはどうして、”日本が死んだ日”を知っていたんでしょうか。」
手塚:「デビッド。今の会話がわかるのか?君は日本語は話せなかったよな?」
デビッド:「ええ。だから、さっきの日本人、英語が堪能なんだな、って思ったんですよ。」
手塚:「俺は、あの日本人とは日本語で会話していたんだぞ。」
デビッド:「ええっ?僕には、今までの会話は、英語に聞こえましたよ。」
手塚:「そんな馬鹿な・・・・・。」