月ヶ瀬小春のブログ -100ページ目

もしかしたら、実話になるかもしれない作り話 第3話 ⑥

 ある日の朝、施設ではたくさんの子供が学校に行く準備で大わらわになっていた。そこに1台のタクシーが止まり、男性が下りてくる。
高橋:「どうしてこんな所に。」
 高橋は一通の手紙を手にしていて、施設の前で不思議そうにしていた。そこに、タクシーに気付いた女性が施設の建物から出てくる。
水木:「高橋君。やっぱり来てくれたのね。あなたが国境無き医師団に参加するって聞いて、その前にどうしても相談したい事があったのよ。」
高橋:「そんなことより、君が突然病院を辞めたことで病院が大騒ぎになってるそうじゃないか。水木、一体何があったんだ?」
水木:「・・・・。わかった。じゃあ早速、要件を言うわ。ついてきて。」
 2人は施設の廊下を歩いていく。施設は子供でいっぱいだった。
水木:「おはよう、おはよう。学校に遅刻しないように早く準備して。おはよう。気を付けてね。いってらっしゃい。」
高橋:「子供がたくさんいるなあ。」
水木:「高橋君もそう思う?この子たちはねえ、みんな親から親権を放棄された子供たちなの。」
高橋:「ええっ!」
水木:「東大卒のエリート男性の精子を使って人工授精をしたのに、生まれてきた子供は学校の成績が悪くて、自分の言うことを聞かないとか、先天性の病気や障害を持って生まれてきたので、育てられないとか、そんな理由で子供を預けてくるの。」
高橋:「そんな、身勝手な。」
水木:「私も、ここに子供を預けに来る親を見ていて、腹が立つときがあるわ。でも、その原因は、私たちにあるのかもしれない。」
高橋:「水木・・・・・。」
水木:「人工授精や不妊治療、代理出産。子供ができない人たちを助けるために治療や研究を続けてきたのに、ここに預けられる子供の数が増えていくのをみてると、私たちは一体、何のために医者をやってきたのか解らなくなるの。ついたわ。この部屋よ。」
高橋:「じゃあ、君が病院を辞めたのは。」
水木:「それも理由の1つだけど、本当はね。」
 水木が部屋の扉を開ける。部屋の中にはベビーベッドが並んでいた。
高橋:「この赤ちゃんがどうかしたのかい?」

もしかしたら実話になるかもしれない作り話 第3話 ⑤

ヤスヒコの父:「ヤスヒコ!」
ヤスヒコの母:「ヤスヒコ!どうしてこんなところに。お母さん心配したのよ。」
 と言って、ヤスヒコを抱きしめる。
保母:「園長先生、一体、どういうことなんですか?」
園長:「ヤスヒコ君がツヨシくんの引っ越し先、この施設の場所を聞きに来たのよ。とても真剣な表情だったから、私、ヤスヒコくんにここの場所を教えたの。でも、本当にここに来てるとは思わなかった。」
施設長:「園長先生、ヤスヒコくんの事、教えていただけませんか?」
ヤスヒコの母:「幼稚園からあんたがいなくなったっていうから、びっくりして会社から飛んできたのよ。本当にもう、バカなことして。」
ヤスヒコの父:「ヤスヒコ、一緒に帰ろう。」
 ヤスヒコは両親の手を振り払い、保母の後ろに隠れる。
ヤスヒコ:「僕、ここに引っ越す。」
ヤスヒコの母:「ちょっと、何バカな事言ってるの。帰るわよ。」
ヤスヒコ:「僕、ここにいる。」
施設長:「この施設は、離婚した親から親権を放棄された子供を預かっています。ヤスヒコくんと遊んでいたツヨシくんは両親が離婚し、親権を放棄したために、今日この施設に預けられました。」
ヤスヒコの父:「あの子が?」
施設長:「ヤスヒコくんを見ていると、この施設の子供たちと似ているところがあるんですよ。本当はすごく寂しいのに私たちにはそれを隠していて、自分はいつも一人ぼっちと思っているところとか。」
ヤスヒコの母:「ヤスヒコ。」
施設長:「ヤスヒコくんは、お2人の事、もう、気付いているんじゃないですか?」
ヤスヒコの父:「それは・・・・・」
施設長:「一度、お2人でよく話し合っていただけませんか?ヤスヒコくんの事はそのあとで相談に応じます。」
ヤスヒコの父:「ヤスヒコ・・・・・・」
施設長:「ヤスヒコくん、そろそろお家に帰りましょうね。」
ヤスヒコ:「いやだ!ここにいる!」
施設長:「大丈夫よ。あなたがここに引っ越すかどうかはお父さんとお母さんが決めて下さるわ。」
ヤスヒコ:「でも・・・・・・」
施設長:「また、遊びにいらっしゃい。」
ヤスヒコ:「うん。」
ヤスヒコの父:「みなさんには、ご迷惑をおかけしました。」
ヤスヒコ:「先生、さよなら。」
施設長:「さよなら。」
 ヤスヒコの家族が乗った車と、園長と保母が乗ったタクシーが施設を出ていく。それと入れ替わるように1台の車が施設に入ってくる。車からは柿沼が出てくる。
柿沼:「そろそろ時間です。みんな待ってますよ。」
増井の妻:「あら、もうこんな時間なんですか?すぐに戻ります。」
 柿沼は携帯で電話をすると、2人は車に乗り、施設から出ていく。

もしかしたら実話になるかもしれない作り話 第3話 ④

 その日の午後。幼稚園では子供たちが遊びまわっている。その中をタケルが何かを探すように歩きまわっている。見かねた園長がタケルに声をかける。
園長:「タケルくんどうしたの?」
タケル:「ヤスヒコくん、どこ行っちゃったの?」
園長:「ええ?ちゃんと探した?」
タケル:「ヤスヒコくんのかばんが無かったよ。」
園長:「・・・まさか・・・。」
 児童養護施設では保母がツヨシを施設に預ける手続きをしていた。
施設長:「ツヨシくんは、私たちが責任を持ってお預かりします。」
保母:「先生、よろしくお願いします。」
施設長:「ツヨシくん、今日からここがあなたの新しいお家よ。お友達がたくさんいて、とても楽しいところよ。これからあなたのお部屋に案内するわね。それからほかのお友達にもご挨拶をしましょう。いらしゃい。」
 施設長がツヨシの手を引いて保母と一緒に施設を案内している。その様子をヤスヒコが養護施設の門の前でこっそりと見ていた。
ツヨシ:「あっ、ヤスヒコくん!」
 ツヨシがヤスヒコに駆け寄る。
保母:「ヤスヒコくん、どうしてここに?」
ヤスヒコ:「園長先生にツヨシくんの新しいお家を教えてもらったの。」
保母:「ヤスヒコくん。」
施設長:「ヤスヒコくんは、ツヨシくんに会いに来てくれたんだ。えらいねえ。園長先生には私から話しておくから、あなたたち、一緒の遊んでらっしゃい。」
ヤスヒコ、ツヨシ:「はーい!」
保母:「先生、いいんですか?」
施設長:「あの2人はとても仲良しみたいね。」
保母:「はい。うちの幼稚園で長期で預かっている子供は、なんだか元気がなくて、室内で遊ぶ子供が多いんです。ツヨシくんもそんな子供でした。ヤスヒコくんはそんな子供たちと仲が良くて、よく外に連れ出して遊んでいたんです。」
施設長:「そう。じゃあ、ツヨシくんがこの施設に来ると知った時は驚いたでしょうねえ。」
保母:「そうですね。」
 ツヨシとヤスヒコが楽しそうに遊んでいる。
保母:「私、ツヨシくんの笑顔を初めて見ました。」
施設長:「そう。」
 子供たちが遊んでいるところに車が止まり、車内からヤスヒコの両親と園長、増井の妻が下りてくる。