『KAMIKAZE TAXI』 (1995) 原田眞人監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

日本の現役名俳優の一人役所広司。近年の作品で言えば、白石和彌監督『孤狼の血』 (2018)、 西川美和監督『すばらしき世界』 (2021)、そしてヴィム・ヴェンダース監督『PERFECT DAYS』 (2023)と素晴らしい演技を見せている。自分が初めて認識したのは『タンポポ』 (1985)で、その作品での印象はむしろ大根。それから10年後に出演したこの作品では、かなり俳優としてこなれた演技。そしてこの翌年に彼は『Shall We ダンス?』でブレイクすることになる。

 

彼がこの作品で演じているのは、日本語がたどただしい日系ペルー人の移民のタクシー運転手の寒竹。今日の価値観で言えばかなりアウトな設定なのだが(非黒人が黒塗りで黒人のマネをするのと同じ文脈)、そうした無粋なことを言わなければエンターテインメント作品としてはかなり楽しめる作品だった。

 

主人公のもう一人が元男闘呼組の高橋和也。彼が演じているのは下っ端ヤクザの達男。彼が働く組は悪徳政治家に取り入ることで勢力を伸ばしていたが、あるいきさつから達男の恋人が組の親分に殺され、達男はその恨みから悪徳政治家の金を盗み出す。そしてその逃亡の途中に寒竹と出会うというストーリー。

 

逃亡といっても逃げ切れないことを悟っている達男の目的は復讐にある。最期を覚悟した男と、その復讐に偶然知り合い助けるようになる男のロードムービーとなっている。

 

『KAMIKAZE TAXI』というタイトルの「TAXI」は寒竹がタクシー運転手であるところから来ているとはすぐに理解したが(彼が働くタクシー会社の名前が「そよかぜタクシー」というのも笑える)、達男と寒竹の偶然の出会いが実は運命的なものだったというところに「KAMIKAZE」の意味がある。あまりにも出来過ぎ感はあるものの、二人の男の「復讐」がテーマとなっているので重要な設定と言える。

 

自分が観たのは140分の「インターナショナル・バージョン」だが、オリジナルは185分。140分版でも前半はかなりテンポが遅い印象だった。もう少し編集で締まった作品に出来るだろう。

 

復讐をモチーフにしたノワール系の作品だが、ところどころにコミカルな要素が特徴的。それを担っているのが、組長の亜仁丸を演じたミッキー・カーチス。死に際はいい味を出していた。また、矢島健一演じる組の幹部石田の網パンツも笑えた。

 

時折、役者の演技ではないリアルと思われる映像をはさみ込み、ペルー音楽を劇伴として独特な味わいを出していた。エンターテインメント作品ではあるが、なかなか味わい深い作品。観て損はない。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『KAMIKAZE TAXI』予告編