『タンポポ』 (1985) 伊丹十三監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

言わずと知れた伊丹十三監督第二作目作品。

 

1985年公開当時は、監督デビュー作の『お葬式』ほどのインパクトはなかったけれども、それなりに面白かったことを記憶している。それから30年以上が経過したこの作品を見返して、やはり笑いというのは時代と共に風化しやすいということを感じた。

 

メインストーリー以外に12(第四の壁を破るオープニングと、食の原点である授乳シーンのエンディングロールを加えると14)のエピソードがサブストーリーとして挿入されている。それは食に関してのつながりはあるものの、メインストーリーとの直接的関係は全くない。伊丹十三監督がやりたいことを言わばテンコ盛りでやっているのだが、これが今観ると不要以外の何物でもない。まず笑えないものが多い。高級レストランでスパゲッティの食べ方教室などあり得ないし(当時もあり得たかどうか疑問)、外人のすることが正しいとばかりにマネをするのは、落語の「本膳」なら笑えても、あまりにもバカバカしくてつまらなかった。フランス料理店で、フランス語のメニューが読めなくても、ギャルソンは日本人なのだから、専務・常務ほどの社会的地位があれば、臆せず聞くはず。そして平社員がフランス料理の知識をひけらかすのもナンセンス(みんながビールなのに、いきなりコルトン・シャルルマーニュは頼まないだろう)。洞口依子の海女姿を見ることができたことはよかったが。

 

ラーメンという料理はもはや先鋭化していて、どのラーメン店もしのぎを削って味を追求している今日、まずいラーメン屋が行列のできる店を目指すという設定自体、あり得ないとも言える。食のウンチクがまだ神通力があった、昭和の時代ならではのストーリーだろう。演技もいかにも取ってつけたようで(山崎努と安岡力也のケンカシーンなど特にそう)、昔はこれで通用していたのだなと懐かしさすら感じた。旧作コメディとして、『鍵泥棒のメソッド』(2012年)という秀作を観た後だっただけに、余計に古さを感じてしまった。

 

とは言え、「伊丹映画」というブランドを築いた歴史的価値は認めるべきだろう。

 

★★★★★ (5/10)

 

『タンポポ』予告編