『茶飲友達』 (2022) 外山文治監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

佐々木マナは、仲間とともに高齢者専門の売春クラブ「茶飲友達」を設立し、男性たちのもとへ高齢女性を派遣していた。会員の募集は新聞の三行広告。それは「茶飲友達、募集」というものだった。「ティー・ガール」と称される売春をする在籍女性の中には、介護疲れの女性やギャンブル依存症の女性などさまざまな事情を抱える者がいた。そして「茶飲友達」を運営する若者たちもまた、出口の見えない社会で閉塞感を抱えて生きていた。マナは、彼らを「ファミリー」と呼び、擬似家族のような絆を育んでいたと思っていた。

 

老人の性問題を絡めたかなり攻めた内容。年代に関わらず生きにくさを抱える者たちが疑似家族を形成するのは、是枝裕和監督『万引き家族』と同じテーマ。結論から言えば、いい題材を得て面白く観せながらも、監督の方向性がイマ一つピンと来なかった作品。

 

高齢者が春を売り春を買うことが、もし違法じゃなければ倫理的に許容されるべきかということは重要な視点。であればこそ、もう少しマナを中心とする若者グループの描き方に配慮が欲しかった。確かに彼らもそれぞれ生きにくさを抱えていて、人生にもがいている。そこからなんとか這い上がろうとする生き方は肯定できても、結局、特殊詐欺グループ的な巧妙さが鼻についた。彼らにそれほど肩入れできないのが、この作品の難点と言える。

 

老人ではないが、身体障碍者の性というやはり攻めた題材を扱った作品に『セッションズ』 (2012) がある。その作品を観た時には、素直に問題の深刻さを受け止めることができた。この作品にも社会問題をテーマにしている意識はあるのだろうが、もう少し「真面目に」作ってほしかったと言わざるを得ない。

 

感情的にすんなり受け入れにくい展開もちらほら。例えば、人生の崖っぷちから救われたはずの松子の最後の手の平返しとか、散々自分の娘(マナ)を否定しておきながら拘置所の面会での「家族だから」という母親のセリフとかには、「はあ?」というリアクションしか取れなかった。最後に取り調べを担当する婦警の説教じみた正論が妙に説得力があるように聞こえたのは、やはり監督の方向性に疑問を感じていたからだろう。

 

人生の多面性を踏まえて、いわゆる「いい話」にしたくなかったのだろうとは想像するが、やはりすっきりしなかった。面白く観せていただけに、「惜しい」というのが正直なところ。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『茶飲友達』予告編