『ディストラクション・ベイビーズ』 (2016) 真利子哲也監督

Fri, August 04, 2017 17:46:53 Theme: 邦画 た行

 

愛媛県松山市、芦原泰良(柳楽優弥)は、両親を早くに亡くし、港町で喧嘩に明け暮れていた。そしてある日、同居していた弟の将太(村上虹郎、映画初出演『2つ目の窓』で主役)の元から姿を消す。泰良は、道行く人々に次々と喧嘩を仕掛け殴り合う。同じ18歳の北原裕也(菅田将暉)はそんな泰良に興味を持ち、彼と行動を共にするようになる。泰良と裕也は、街で暴力沙汰を起こし続け、いつしか世間からの注目を集める。そして2人は自動車を盗み、街を立ち去るのだが、その車に乗っていたキャバクラ嬢の那奈(小松菜奈)は拘束されて、彼らに同行する羽目となる。

 

これはなかなかよかった。少なくとも前半はとてもよかった。泰良(名作『ファイト・クラブ』のタイラー・ダーデンを想起させるネーミング)のケンカのスタイルは最初はかなりダサい。それがケンカを繰り返すうちにどんどん洗練されていく。一見してボクシングをやっていたことが分かる三浦誠己演じるチンピラの兄貴をクロスカウンターで倒すところなど、かなりのかっこよさ。無意味な暴力を肯定するわけではないが、劇中の北原裕也ならずとも、泰良のケンカっぷりには引き付けられる。

 

泰良の破壊衝動は自己破壊願望と裏腹である。運転させられた那奈が車をぶつけるべくスピードを上げた時の、助手席の泰良の表情がそれを物語っている。つまり、彼がケンカを吹っ掛ける相手は、必ず彼に反撃してくることが期待される。また相手が戦意を喪失した時点で、彼の衝動は完結する。なぜなら彼に反撃することはないからである。そしてその方法はあくまで生身の身体である。

 

後半になって面白味が削がれたのは、そうした基本ルールが破られるから。例えば那奈の運転する車が衝突し、相手の車の運転手に殴りかかるが、彼が反撃する気配もないのに、執拗に後頭部を叩きつける。またラストシーンも警官に反撃するのは銃によるものである。それでは、彼の「暴力の美学」が損なわれてしまうと個人的には感じてしまった。

 

泰良は狂犬かもしれないが、通り魔殺人犯とはその衝動の根源が違うように感じる。あくまで彼の凶器は生身の身体であるべきである。彼の拳と相手の顔の骨と骨とがぶつかるくぐもった音が観る者の神経を逆なでるからこそ、この映画が生きてくるのである。

 

この映画は言うまでもなく柳楽優弥のための映画であり、彼の存在感なくしてこの作品はあり得なかっただろう。それにしても『そこのみにて光り輝く』でも見せた犬のような役をやらせると、菅田将暉ははまる。そして、ちょろっとしか出てこない池松壮亮の贅沢な使い方が個人的には好きだった。

 

紋切り型の言い方だが、インディーズっぽいところがいい作品である。その粗削りなところを、作品の味を損なわずにシェイプアップできれば、もう少し後半も前半のスピード感を維持できたように感じる。

 

日本映画の今を見せてくれる好作品だったと感じる。観るべし。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『ディストラクション・ベイビーズ』予告編

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