『バットマン・ビギンズ』 (2005) クリストファー・ノーラン監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



『ダークナイト』三部作の1~2を再評価すべく再観賞。現在の高評価ほど、当時個人的にはそれほど評価していなかったため。三部作完結編の『ダークナイト・ライジング』のレビューは過去のブログ参照のこと。

まず『バットマン・ビギンズ』。

旧4部作に比較して非常にシリアス。それがクリストファー・ノーランのカラーだが、この『バットマン・ビギンズ』では、それでもまだコミックらしい要素が残っている。

それは例えばシャドー・オブ・リーグの修行のようす。勿論、忍者発祥の地である日本人が見ての滑稽さではあるが、そうした滑稽さを排除するところがクリストファー・ノーランによるバットマンであり、それは次作以降で更に洗練されたと感じた。

プロットの大きな穴は、人々に幻覚を生じさせる薬物を上水道に混入しつつ、それを熱変換機で蒸発させて人をパニックに陥れる策略に関して。なぜ薬物が混入した水道水を体内に取り込んでも効果が生じないかという説明として、「気化した蒸気を吸引しなければ効果はない」とされたが、それではシャワーの湯気や、調理中の鍋の湯気はどうなんだというかなりお粗末な問題点はある。

あとミスキャストが多い。ヘンリー・デュカードを演じるリーアム・ニーソンは、この役柄だとオビ=ワンを指導するクワイ=ガン・ジンをイメージさせる。ラーズ・アル・グールを演じる渡辺謙も食傷気味。映画途中で明かされるようにどうでもいい役なのだから、もっと無名の役者の方がミステリアス感が出ただろう。次作以降も重要な役であるゴードン巡査部長を演じるゲイリー・オールドマンが一番残念。彼は『レオン』の悪徳麻薬捜査官のノーマン役や、『トゥルー・ロマンス』でのキレたスパイビー役といったとがった役が似合う役者。ロートル感漂うゴードン役はいかがなものか。

と、難癖をつけたものの、作品の前半に描かれるコウモリのイメージがトラウマになり、それを克服することで悪に対抗するタフさを備えるという主人公の成長を描いたところは、そんじょそこらのスーパーヒーロー物にはない深さがある。

本来は旧4部作の前日譚として作られた作品だったが、そのヒットからリブート物として三部作構成ができたということがよく分かる出来。それでも現在の評価は高すぎるのではないか。ゴッサム・シティの悪を排除するという大それたことは、ブルース・ウェインほどの金持ちが道楽でするには非現実すぎないだろうか。

★★★★★ (5/10)

『バットマン・ビギンズ』予告編