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2015年版の『エベレスト』を観たので、1997年の作品を観てみた。
これは同じ原作、ジョン・クラカワー著『空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか』を基にしたテレビで放映された作品。
作調の大きな違いは、1997年版がジョン・クラカワーの目を通して見たドラマであり、彼の言葉によるナレーションが所々に入っている。より説明的であり、ドキュメンタリー的と言える。
それに対し、2015年版は俯瞰的に全ての登場人物を扱いつつ、登頂隊のガイドであった登山家ロブ・ホールにフォーカスしてドラマをまとめている。
その効果は、1997年版の方が、何が起こったかがよく分かり、何が悲劇の原因だったかも(午後2時の登頂リミットを無視したこと)より明瞭になっている点に表れている。2015年版はそれを犠牲にする代わりに、登場人物の心情を掘り下げて描き、よりドラマチックになっている。
そして実際の状況がそうなのであろうが、1997年版のシーンの多くが夜の猛吹雪の中であり、全く光景にメリハリがない。それを2015年版は意識的に昼間の明るいシーンに置き換えていると感じた。
映像作製技術の進歩が2015年版をよりエンターテイニングにしているが、どちらの方が「死の恐怖」であるとか「自分だけでも助かりたい人間のエゴ」といった美しくないリアリティが描かれているかといえば、断然1997年版である。
エベレスト登山が観光化して、不適切な男女間の交流が神の怒りを買ったというシェルパの言葉や、ほかの登山チーム(台湾チーム)の中には登山知識に欠けていた者もいたために死者を出したとかといった当時のエベレスト登山が抱えており1997年版に描かれていたエピソードは、2015年版からはオミットされている。つまり2015年版の方が「きれいに」作られている。
史実に関心があるなら別だが、映画(=エンターテイメント)としては、やはり2015年版の方がよりよい出来なのは仕方ないところか。
★★★★★ (5/10)
『エベレスト 死の彷徨』本編(1/6)