国立科学博物館 特別展「化石ハンター展」 | カ素ブログ

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お出掛けレポート中心。科博多め。気が向いたらオモチャのレビュー。

 

朝8時21分の品川駅。今年3回目の科博なんですが、前2回はそれぞれ別の所からだったので品川から行くのは昨年ぶりです。ってホント個人的にですが、いつも科博に直接行く時は品川乗り換えだったので3回目なのになんか久しぶりな気分だなぁってだけ。どーでもいいね。

 

↓1回目は原宿から。

 

↓2回目は六本木からでした。

 

 

 

8時46分、上野駅に到着。

 

8時55分、科博に到着。雨降ってます。予約確認のスタッフの方々、雨の中ご苦労様です。

9時開館なので少し待ちましたが、平日にも関わらずすでに10人ほど前に並んでいました。

朝から科博は過去何度もあったんですが、開館前に来たのは初めてでした。

 

て事で、特別展「化石ハンター展」です。世の夏休みが終わるのを待って満を持してやってまいりました。科博の特別展は混雑必至ですからね。

 

今展は探検家で博物学者の”ロイ・チャップマン・アンドリュース”が1922年にゴビ砂漠の探検を行ってからちょうど100年を記念して開催された展覧会で、古生物学史上非常に重要な「中央アジア探検隊」の成果からそれに続く化石ハンター達による発見の歴史を辿る特別展です。

 

アンドリュースは中央アジア探検以前に海洋生物調査に同行して来日した事もあるそうです。

 

1910年に来日の際、東京国立博物館の前身である”東京帝室博物館”を訪れ不明種として展示されていたクジラの骨を「ツチクジラ」と指摘した事もあるそうです。

 

今夏はクジラをよく見るなぁ。千葉行ったからか。↓

 

 

 

中央アジア探検隊は1922年に内モンゴルで次々と新たな発見をします。プシッタコサウルスも最初の化石の発見はこの調査だったそうです。

上はその後中国の遼寧省で発見されたミイラ状化石。プシッタコもミイラ状化石があるんですね。

 

プロトケラトプスも最初の発見はこの調査でした。学名に”アンドリュース”が付いてるんですね。

 

プロトケラトプスの化石は集団で見つかる事もあるそうで、成長段階を示す化石も見つかっています。

 

一番小さい幼体の頭骨。プチトマトのちょっと大きいやつくらいです。カワイイ。

 

中央アジア探検はアンドリュースの師である博物館の理事長”ヘンリー・F・オズボーン”が提唱していた「哺乳類と人類の起源がアジアにある」という説に端を発しています。

 

その探検で哺乳類だけでなく恐竜の化石も多数発見されるというミラクルが起こるワケです。

これ、あらゆる分野に於いて歴史的にもとんでもない出来事よね。

 

「ジュラシック・パーク」で大メジャーになったおなじみ「ベロキラプトル」。この子もモンゴルで多数化石が出ているそうです。

案外小さいです。中型犬くらい。「ジュラシック・パーク」は映画的演出であの大きさなんですね。

 

アンドリュースの中央アジア探検は1930年まで行われましたがその後に第二次世界大戦が勃発。終戦を待って1946年にソ連の調査隊に引き継がれ、そこでも多数の発見が成されます。

上はアンキロサウルス科の「タラルルス」。

 

「タルボサウルス」もモンゴルでの発見が最初だそうです。お宝だらけですなモンゴル。

ゴビ砂漠が如何に閉ざされた地だったかという事でしょう。

 

そしてタラルルスとタルボサウルスが合体した「タルボルルス」という新種。というネットでのネタでした。

強いんだか弱いんだかみたいな感じだな何か。

 

小さい頭骨シリーズ。「バガケラトプス」というプロトケラトプス科の恐竜で、その最小の幼体の頭骨です。

プチトマトの小さいやつくらいです。かわいすぎる。

 

「モノニクス」という恐竜でこの標本が唯一見つかっている化石だそうです。脚なっがい。

 

進化の過程で親指以外の指が無くなり残った親指が大きく発達しています。不思議。

またそれが名前の由来にもなっています。

 

1990年以降、日本からもゴビ砂漠への調査隊がほぼ毎年が送られモンゴル科学アカデミー等との共同で多くの成果を得ています。

上は1997年に発見された「シノルニトミムス」というオルニトミムス科の小型恐竜が14体も重なった状態の産状化石。14体のうち11体が幼体だそうです。これもスゴイね。

 

モンゴルでの調査は現在も続いており、日本の他にもアメリカ、カナダ、韓国、中国など様々な国で調査が行われています。まだ今後も新しい発見が期待できそうね。

 

アンドリュースの中央アジア探検隊は数多くの恐竜化石を発見しましたが、本来の目的は「哺乳類と人類のアジア起源説」の証拠を探す事でした。そしてその観点からも重要な化石を多数発見しています。

そのひとつが哺乳類の進化史上最大の大きさを誇る「パラケラテリウム」です。

 

この標本は普段は地球館の地下2階に常設展示されています。

科博に行く度に「でけえわぁ…」とは思ってましたが、壁際の隅に展示され手前にも幾つか別の標本がある事もあって正直”壁の一部化”している印象でした。

しかし今回は特別展のテーマとの合致もあって、晴れて表舞台に躍り出ました。おめでとうパラくん。

 

頭部が高すぎる所にあってよく見えないので別の頭部標本も展示されてます。うれしい心遣い。

 

脚のデカさ長さがもうね、とんでもないです。サイの仲間だそうです。ウソでしょ。

 

復元図では象のような足で描かれてますが、骨格は”蹄”が分かれたような形です。馬とも違うし、そういうところも面白い。

 

 

とにかくデカい。常設展ではあまり近くで見れないので、こういう時の単独展示はうれしいですね。

近くでじっくり見る事ができます。なめ回すように見てきました。

 

パラくんの傍らに展示されてる「エンボロテリウム」の頭骨。なんでしょうねホント、奇抜すぎ。

奇抜ですがこの化石も「哺乳類のアジア起源説」にとって非常に重要な意味を持っています。

 

アンドリュースは恐竜や大型哺乳類の他にも齧歯類など小型哺乳類の化石も多く発掘していました。

 

「ツァガノミス」の復元図カワイイ。

 

かと思うとまたもどデカい哺乳類、「アンドリューサルクス」の頭骨。”アンドリュー”はそのままアンドリュースさんの名前から来ています。

先ほどの「パラケラテリウム」よりも若干小さいくらいの大きさです。それでもまあまあデカい。

 

上顎の歯とかもえげつない。まだ頭骨しか発見されていないそうなので、今後の調査で全身が出てくる可能性もぜんぜんありそうです。

 

1930年、アンドリュースのアジア探検最終年に発見された「プラティベロドン」。なんかもうちょっと呪われた感じの頭骨ですが、ゾウの仲間です。

 

上顎。ひっくり返されると何かの武器みたく見えてくる。

 

わけ分らんですね。進化って面白い。

 

1930年以降、戦争や国際情勢の影響がありながらもモンゴルでの調査はアンドリュースの軌跡を辿って断続的に続けられました。「プラティベロドン」はその後の調査でも化石が発見されているそうです。

 

ゴビ砂漠の調査が進む一方でチベット高原で「哺乳類の起源」を示唆する化石が発見され、新たな調査地としてチベット高原に目が向けられます。

 

「キロテリウム」とうユーラシア大陸に生息していたサイの仲間。シャクレ具合がすごい。

約5000万年前、ヒマラヤ山脈とチベット高原の隆起によってアジアの大気循環が変化した事で先ほどの「プラティベロドン」などは衰退していき、新たに「ヒッパリオン動物群」という乾燥地域に適応した動物群が現れます。「キロテリウム」もその仲間になります。

 

「ディノクロクータ」というハイエナ科としては最大の化石種。頭骨だけでもライオンほどの大きさです。

現生のハイエナよりも貪欲に狩りにしていたと考えられていて、上の「キロテリウム」を襲っていた証拠も見つかっているそうです。

 

約530~230万年前のチベット高原は北極よりも先に寒冷化した「第三極圏」と考えられています。

この環境に適応したと思われる哺乳類の化石が発見され、後に訪れる地球規模の氷河時代(アイスエイジ)の到来時にそれらの生物がチベット高原を下りアジアやヨーロッパに進出・進化したと考える説を「アウト・オブ・チベット説」と言います。

 

そしてその説を裏付けるきっかけとなったのが「チベットケサイ」の化石。展示されていた標本は3Dプリンタで出力したモノっぽかったです。

「チベットケサイ」は氷河時代に生息していた「ケブカサイ」よりも原始的な特徴を持っており、先に見つかっていた「ニホワンケサイ」を中間型に当て嵌める事で系統と年代が一本に繋がり「アウト・オブ・チベット説」が誕生しました。

 

非常にカッコイイ「チベットケサイ」の復元骨格標本。なんかファンタジー味があります。

発掘した頭骨は潰れていたので、デジタル処理で変形を直したところケブカサイとの相違が分かったそうです。最近は古生物研究にもデジタル技術が生かされていて時代を感じます。

 

 

「チベットケサイ」の生体復元モデルは上の前進骨格と共に世界初の復元だそうです。やっぱりこの尋常じゃない大きさの角の存在感がスゴイ。

この復元を見て思ったんですが、サイって毛が生えててもちゃんと”サイ”だなって思いました。

 

復元された「チベットケサイ」の幼体。恐竜や古生物の幼体の生態復元てたまに見ますが、こんな”あざとい”復元は初めて見ました。いや、あざとい。

 

一般公募で付いた「ちべたん」という名前があります。ちべたん、カワイイよちべたん…。

 

「アウト・オブ・チベット説」の2つ目の証拠してあげられる「プロトオービス(原始的なヒツジ属)」は現生のアルガリなどのヒツジ属よりも原始的な角の構造を持っていて、これらがチベットからシベリアやヨーロッパに分布していったと考えられています。

因みにプトロオービスはパネルの写真の方で、後ろの頭骨は現生のアルガリです。

 

その他にも「チベットユキヒョウ」や「チベットザンダギツネ」などチベットから下ったと思われる絶滅種の化石が見つかった事で寒冷環境で生きる哺乳類の進化のミッシングリンクが埋まりつつあります。「アウト・オブ・チベット説」を立証する証拠は揃いつつあるといったところでしょうか。

 

「化石ハンター展」、非常に面白かったです。

化石発掘に情熱を注ぐ研究者たちの軌跡を追うと同時に哺乳類の進化の道筋を学ぶ事が出来ます。

今回、このブログを書くにあたり改めて写真に撮ったキャプションやネットの記事を読み返して自分なりに反芻しましたが、それもまた楽しい作業でしたね。なのでブログが長くなりました。しゃーない。

 

「ちべたん」なんですけどねぇ、買ってしまいました、ちべたん。

普段あんまりグッズとかは買わない方なんですけど、買おうかどうしようかちょっと迷って、一回ショップを出ようとしましたがやっぱり欲しくなって買ってしまいました。だってカワイイから、ちべたん。

 

 

もう一回くらい行こうかな。次行ったら親の方も買っちゃいそうでコワい。

 

 

 

 

約2時間ガッツリ化石ハンター展を堪能して、久々に科博のレストラン「ムーセイオン」で早めの昼食。

地球館1階にマッコウクジラの半身が展示されてからムーセイオンに入ったのは初めてでした。いつも混んでるから「くじらカフェ」行っちゃうんですよね。

 

そして昼食後はいつものルーティーンで常設展をブラブラ。

 

 

地下2階の展示室に行くと当たり前ですが「パラケラテリウム」がいない。”壁”くらい思ってたのにいないとなんだか寂しさがありますね。ホントに壁だし。

 

ただそのお陰で「モロプス」の反対側がよく見える。

 

「プラティベロドン」も特別展に出張中という事でパネルになってました。

 

3階の「コンパス」はまだ開放中。という事で当然入ります。

 

ほとんど「スタン」が見たいだけなんですけどね。

 

前回来た時は気付かなかったんですが、この自分の姿が変なふうに写るおもしろ鏡。コレ、新館(今の地球館)が出来る前に旧館(今の日本館)か無くなった「みどり館」なのか忘れましたが、子供の頃にこの鏡で遊んだ事を思い出して懐かしくなりました。妙なところでグッと来てるオジサン。

 

常設展をブラブラしてたらまた疲れちゃって中央ホールのベンチで休憩。やっぱイイな、この天井。

 

ここの床の八望星見たのは今年初でした。この床も大好き。

ずっと「ポケモン化石博物館」やってて、タルボサウルスとガチゴラスがいましたからね。

 

外はまだ強めの雨が降ってましたが、かなり満足したのでここで科博をあとにしました。

11月にはまた面白そうな特別展があるので、今年はまだ科博に来る機会がありそうです。