コロナやウクライナ進行など、世界情勢が不安定な今、注目されている本。
1.あらすじ
筆者によると、人々は世界の現状を正しくみれていないという。
本書は冒頭でいきなり問題を出される。
Q いくらかでも電気を使える人は世界にどのくらいいるでしょう。
A、20パーセント
B、50パーセント
C、80パーセント
答え「Cの80パーセント」
他にもワクチン接種率や教育の普及率に関する問題が合計13問出題される。
ポイントは、電気の問題のように世界は意外と良いことである。
大多数の人は間違えてしまうという。
この13問の正答率は20%を切るという。
つまり、3択問題なので正答率はチンパンジー以下だと筆者は煽ってくる。
先進国以外は極貧の国しかなく、電気、ワクチン、教育は全然普及していない。しかも、状況はますます悪くなると思っている。
2.本能の克服
人間には物事をドラマチックに捉える本能があり、それが物事を正しく見る邪魔をしている。
筆者はそれを10個に分類している。
例えば、1.分断本能では、世界には「豊かな国」と「それ以外の極めて貧しい国」の2つに分断している。
というか、多くの人がその2つしかないと思っている。
だから、多くの国が電気なんか使えないと錯覚する。
実際は、電気、ワクチン、教育など最低限の享受もできない国は、
ソマリア、シリア、アフガニスタンなどよっぽどの国に限られる。
それ以外は、大体普通レベルの富は持っている。
つまり、分断本能を告白するためには両極端のみではなく、平均はどこかを考えるとよい。
ということになる。
全ての本能の克服法の一覧を載せておく。
3.感想
⚠︎ここからは感想だが、多少の自画自賛と批判が入るため、多分不愉快になるかも、笑
実は、私は13問の問題のうち7問正解した。
もちろん、なんの予備知識も無しに。
正答率でいうと、53%なので筆者に褒めて貰えそうである。
なんで、正解できたかというと普段から本を読み、それを活かそうと心掛けているからである。
本書の問題では具体的には以下の本が役に立った。
例えば、分断本能は二項対立のことであるため、まさに現代思想のジャックデリダそのままである。
また、マスコミの報道の仕方も本書とブラックスワンで同じことを言っている。
↑こんな広告はよくみる。
当たり前だが「女性の教育は世界的に広く普及しています」という広告は見ない。
↑こういった本を読むとわかるが、世界をよくするために皆、頑張っているのが分かる。
なのに、世界はよくなっていないわけがない。
少なくとも悪くはなっていない
と自分は考えたわけである。
本書の筆者は、それをグラフやチャートにしてハッキリと教えてくれた。
↑世界の平均寿命がここ200年で伸びていることが一目瞭然である。
やはり、客観的なデータに頼ることの重要性を改めて認識できた。
しかし、一点だけ気をつけたいことがある。
それは、筆者はすぐに世界情勢の話に持ってくることである。
世界は○○が悪いように見える。
それは本能のせいである。
実際、世界はもっと良い。
始終こんな具合なので、気をつけないと
へー、世界の平均寿命って70歳なんだ!
ふーん、自然災害で亡くなる人はここ100年で半分になったんだ!
ほぉ、なんらかの予防接種を受けている人は、世界で80%もいるんだ!
と、
単なる世界情勢の豆知識本で終わってしまう。
このように本書の帯にも、「知っておきたい世界の教養」と書いてあるが、
これは趣旨と完全にズレている。
こんなのは教養でも何でもない。
(この帯見たら筆者怒るよ、たぶん)
本書は世界の豆知識を教えたいわけではなく、本能を克服して世界を正しく見ることを伝えたいわけである。
ファクトフルネスも批判的思考のひとつと言ってもいい。
と、筆者が述べているように、ファクトフルネスは思考についての本である。
謙虚さと好奇心を持つことを子供たちに教えよう。
謙虚は、本能を抑えて事実を正しく見ることが難しいかに気づく。自分の知識が限られていると認める。堂々と知らないと言えること。
好奇心は、新しい情報を積極的に探し、受け入れる。自分の考えに合わない事実を大切にし、その裏の意味を理解しようとすること。
こういった視点は日常生活やビジネス、ひいては人生において重要なものである。
ブラックスワンなどを読んだことの成果は先述のとおりである。
本書を単なる豆知識本で終わせるか、人生の役に立てるのかは、読者次第であると思う。
そう言った意味では、少し難しい本である。
4.おわりに
役者あとがきは必ず読みたい。
なぜなら、世界情勢の話はほとんどしていないからである。
自分の姿を見せてくれる。知識不足で傲慢な自分、焦って間違った判断をしてしまう自分、、、、
そんな自分に気づかせてくれ、ブレーキをかける役に立つ。
と、日常生活に使えそうな捉え方をしている。
多分、私と同じような事を思ったのだろう。
良書なのは間違いない。この本は筆者の人生の集大成である。ガンで亡くなる前に書いた魂の一冊である(残念ながら出版まで生きられなかった)。
かならず、人生の役に立つはずである。
おしまい。