孟子や荀子といった先哲が、聖王ならば天下を数年で一統でくるだろうと
予言した。
これは、現代なら皆が皆、大ぼら吹きだったなと考えるだろう。
だが、両者とも現代の政治体制のレールを敷いてきた人たちの一人で、
西洋近代哲学者も、おそらく、この方たちの本をカンニングして、
思想を展開したのではないかという気もするほど、先見の明があるので、
この大法螺を個人的な見解をもとに検討してみたいと思う。
検討の仕方は、単に、ならどうやって一統できるかを想像し思いめぐらせるだけという。
まず、
一国の宰相以上の存在ならば、相手との外交交渉ができるだろう。
この外交交渉は、弁がたつというほかに、どの国に行っても相手にされる、魅力が必要になる。
魅力を高めるというのは、普段から周囲に配慮した生活を続けていなくてはならないので、
十年程度の修行や改心では、とても外交交渉できる魅力を身に着けることはできない。
また、そうした周囲への配慮というのは、思い描いたことを形に表象させることのできる能力でもあるので、
趣味などをさせると、とことん、トップレベルに近づくような人間が、魅力をつけることが
国運をまかせるには、必要となる。
なので、だれしもが、魅力をつける努力をすれば、外交交渉ができるというものでもない。
最上の魅力を高められる人を見つけ出し、生活を礼儀にかなったものにさせて教育する。・・・一
これは、三年五年でできるものではないので、前段階で聖王の条件ということになる。
また魅力があるからといって、相手を説得することはできないので筋道をたてた考え方ができ、
どのような問題にあたっても、答えを導き出せる法に通じた人間であることが必要になる。
それを身に着ければ、書士弁士と段階をふんで上がっていき、外交交渉ができる弁術の士という
外交官になる。
外交官の中でも最上の弁術の士といえるほど、法と筋道に通じた人材に育てる。・・・二
これも、三年五年でできるものではないので、前段階での聖王の条件ということになる。
魅力ある弁術の士とも呼べる者が聖王、一国の宰相以上の存在にならなくてはならない。・・・三
多くの国民の中から、こういった逸材を育て上げて一人でも、聖王と呼べるにふさわしい人が
出現するには、
すくなくとも、教育に力を入れることができる、一定の豊かさが求められる。
国に教育に力を入れる程度の豊かさがある。・・・四
これも前段階の条件。
貧すれば鈍す。
食うに困るような国、犯罪の多発する国、上下が逆転し賢人をさげずむ国。
こういう国では天下一統に乗り出すことはできない。
この先、論をいったん締めくくった際、民の愛国心について、いっさい考慮していないということを
あらかじめ断っておく。その考慮は、いったん論をしめくくった後に、まわすので、あしからず。
さて、こういうある程度豊かな国に、聖王が宰相以上になったときに、やるべきことは、
さらに徹底してさらに国を豊かにすること。
それは、よその国が、戦争などで金や人、物を失っているなら、我が国は、
自分の国で金や人、物を流通させ、雪だるま式に膨らましていく。・・・五
国が豊かになると、風紀が乱れ、綱紀粛正して国の魅力を高めて、また豊かになるという
長いサイクルでの雪だるまでは、とても三年五年は間に合わない。
なので、そのサイクルも重要だが、すべてにおいて、優先順序をはっきりさせることが
国内での雪だるま式の豊かさの膨張に必要となると思う。
国の事業は、食う寝る着るが基本の第一優先順位。
そして、持続可能な成長にするための事業が第二優先順位。
遊びのための事業を優先しすぎてはならない。
なので、農業林業漁業を犠牲にして、電力事業を優先させることはしない。
また、優先順位は、人にも及ぶ。
まずは、長幼の序。賢愚の序。上司部下の序。この三つも優先順位をつける。
さらに別途、生存権に関しては、子供優先、例外者優先(皇族貴族・障碍者・マイノリティ)、最後に普通の健常者。
国を効果的に成長させる判断の基礎となる優先順位をつける。・・・六
こうした優先順位をつけるためには、やはり、それを説得させる聖王の魅力と弁術が必要となる。
さて、それができるためには、相当の多くの共感を全国民に抱いている必要があるので、
多くの文学にふれている教養が必要となるだろう。
また、豊かになると同時に、全世界から聖王の治める国が治安が安定し、生活が楽しそうだと
思ってもらわないと、天下一統ののちも続かないので、やはり、相当の文学文芸に通じた人でなくては
ならない。
そのためにも、漫画などで、世界をリードする日本は、ある程度見込みがある。
漫画の世界観にあこがれて訪日する外国人は多い。
そういった豊かな国、魅力ある国にしたうえで、外交交渉を行っていく。
まず、ほとんどの国には、地方政府というものがある。
地方の有力者と地方政府に賄賂や開発投資支援を行い我が国と地域の企業と人が潤うようにする。・・・七
また、潤わせることと同時に、我が国の食文化や芸能を楽しんでいただくように文化を輸出する。・・・八
この二つを行う。それは同時進行して、あらゆる国で展開する。そして多くの国の地方政府の
中枢と人心を我が国の色に染めていく。
地方政府の兵権や行政権を実質上手に入れることができたら、気が熟した証。
中央政府の議員選挙の時に、その地方からの議員を我が国のシンパを送り出して、中央政府も浸食する。
しかる後に中央政府と外交交渉をして、地方政府にしたことと同じように、賄賂開発投資支援を行い
親密度を最大限まであげたあとに、被支配国になるような条約を締結する。
この条約交渉は、さすがに、強大国であればあるほど、成功率が低いため、
被支配条約をもちかける国は、我が国よりも明らかに弱小な国々から始めていく。
いくつか弱小国との被支配条約が積み重なっていけば、我が国の威光は大きくなっているので、
中堅国にも条約締結を働きかけることができる。
そうやってまずは、一統の前段階の覇者になっていく。
さて、これを妄想空想として、かたづけていいのだろうか。
荀子孟子の大言壮語を、実現可能か、考えていたら、なぜか心当たりのある、実際にやっているであろう
国のやり方が見えてしまったという。
これらは、あくまで覇者となるまでだろう。というのも、覇者はすでに世界には存在するからだ。
また、国には愛国心を持つ国民があり、我が国とは違い、どの国も国のために命を捨てるほど愛してやまない
そういう国民がいまだ多くいる。
彼らを無視したこうしたやり方では、天下一統は無理があるので、いずれまた、考えておく。