キベリハムシ
兵庫県
2018年7月26日
兵庫県某所にて撮影
2018年7月
日本国内でも兵庫県でしか定住していないと云われるこの昆虫は
兵庫県特産種とも考えても良いのですが、
この昆虫のルーツは海外からのお客様で外来種になります。
鞘翅に広がる光沢ある輝きはサファイヤを思い出すほどの藍青色の美しさに
鮮やかな黄色の縁取りが名前キベリハムシと名付けられています。
愛嬌のある可愛い顔の小さな頭がチョコンとおまけの様についていて、
手で持ちあげるとチョコチョコと世話しなく動き回ります。
名前のハムシは金花虫や葉虫と表して、鳥の羽毛につく羽虫(ハムシ)とは意味を違えます。
最近の外来種の情勢では、アライグマ、アカミミガメ、ブラックバスから外来放虫動物や昆虫類に至るまでの問題提起されている、害獣・害虫と懸念される種類が見られる中で、キベリハムシは農産物に害を与えない事やホストとする植物がビナンカズラに限る事からその害虫の部類からは除外され、歓迎されるべき外来種でしょう。
参考にさせて頂いた書籍によると、1910年代には既に神戸にいた事が記載されています。
大正7年(1918)頃の話では国鉄三宮(今のJR元町駅近く)で駅構内で貨物からこぼれでた昆虫類の採集標本に、キベリハムシやダイコクコガネ、外国産の甲虫類の標本があったとされています。
その事から、すでに1900年代前半(大正時代)には神戸に入っていた外来種と思われます。
キベリハムシは世界的には1863年に香港産を基準に命名されていますが、
世界で生息が確認されているのは中国大陸福建省、江西省、湖北省、四川省、旧チベット自治区などに分布し、それ以外では主に兵庫県だけが記録されています。
その事より中国が発信元で神戸を拠点に六甲山で定着し、今では県内に広く定着した事が伺えます。
なお中国大陸にはこのようなキベリハムシに似た仲間は12種程も確認されているようです。
幼虫写真
キベリハムシの幼虫 ビナンカズラの葉にて 2018年5月中旬
上写真とは別個体
これも別個体で、同時期に様々な大きさの個体が見られます。
そんなキベリハムシはビナンカズラ(美男葛)と呼ばれている植物を食しています。
この植物は名前の如く昔は男性の整髪料の為にツルから粘液をとって髪油ようにに使わていました、
女性は髪を洗う際に使われていたと云う話もあり、通常はサネカズラと云われています。
このように人に利用されてきた植物であるが故、他の呼び名ではサナカズラ、ナメリカズラ、ビンツケカズラなど色々な呼び名を持っています。
サネカズラとは小倉百人一首で
「名にし負はば 逢坂山のさねかづら 人に知られで くるよしもがな(藤原定方(ふじわらのさだかた)(三条右大臣))」
と読まれたり万葉集にも歌に読まれた植物です。
昔のサネカズラの使い方は、仮名文字使用で「サネカズラ」ではなくて「さねかづら」にて「つ」に濁点です。
ビナンカズラ(サネカズラ)(さねかづら)については下記リンク先の後日更新記事にても、詳しく紹介しています。
他では写真添付がされていないビナンカズラを使った昔の商品も紹介しています。
美しい外来種なんだけど キベリハムシ 兵庫県 2021年7月18日
国内で見られる、キベリハムシは単為生殖(雌のみで繁殖)するとみられていますので、
容易に県外へ拡大していくと考えられるのですが、昔も今も兵庫県から出ない箱入娘のようです。
実際に眺めていると、成虫、幼虫共にビナンカズラからは離れずに生活し飛翔能力も弱い点からは、
県下にこのように広がった訳も不思議な事です。
(京都府内においてキベリハムシが確認された事例がありますが、その後の状況が不明な事から文章内では削除しています。大阪府、京都府は生息地域が隣接している事からも、確認されても不思議ではありません)
成虫の写真
写真は届かない高い場所から降ろして、
草の上にて撮影しています。
全て同個体です。
尚記載の古寺とは別の場所で撮影しています。
私がこのキベリハムシに初めて出会ったのは今から40年前、私が中学1年生(1978年)の夏休みでした。
当時の夏休みの宿題に友人3人での合作の夏休みの自由課題に取り組んでいた昆虫採集の事でした。
少年時代の私はキベリハムシについては名前を知るのみで外来種などの知識も持たず、
標本箱に3匹のキベリハムシと多くの昆虫を陳列していたのを覚えています。
採集したのが桜の老木だったので、少年時代は桜につく昆虫と認識していたのを覚えていますが、
翌々考えると、ビナンカズラが桜の老木に巻き付いていたのでしょうね。
1円玉と比べて見れば大きさが理解できると思います。
先日、少年当時の採集場所に出向いてみましたが、近年に下草や樹木に絡みつくツル植物は綺麗に刈られて周辺も整備されていました。
樹上高い所にビナンカズラらしき植物?(遠くて植物の種類すら確認出来ない)を眺めただけでしたが、土面から伸びあがっている茎が見つからず、こんなに高い場所まで伸びる植物とは思われない事から、おそらくビナンカズラでなく見間違えたと思います。
どうする事も出来ず、今後の観察すら簡単では無い事が想像できました。
いくらなんでも古寺とはいえ40年も経てば一転して環境も変わるはずです。
2018年7月24日撮影
今回は此の状況やこの場所が、書籍等で紹介されていることから、当時の地域写真を添付しています。
私が少年の頃とは違い、近年はお寺で網を振っていると怒られますのでご注意下さい。
最近は昆虫採集禁止の立て札もあるように聞いています。
お寺ですからもちろんですよね。
また建物は国指定の重要文化財に指定され外国からの観光客も多いので、常識を外れた振る舞いは警察沙汰になる恐れがありますのでお控えお願いします。
夏休みの少年時代(中学生)の私は
これらの建物の板間や日陰で蝉の声を聴きながら、昼寝をしたり休憩をしていたものでした。
当時は「虫取りしてるのか~」って優しく声をかけられたものです。
でも、近年は夏にこのような処で昼寝をしていたら、熱中症になるでしょうね。
もちろん観光客も多いので「ひんしゅく」ですね。
この光景に見覚えのある方もおられるでしょう。
ハリウッド映画「ラストサムライ」(2003年制作)にてロケをした場所で、トム・クルーズさんが来られた場所です。
また大河ドラマ「軍師官兵衛」、「武蔵-MUSASHI」」や映画「関ケ原」(2017年制作)でもこの構図で紹介されていますね。
この有名な地で、西の比叡山とも云われる書写山円教寺(しょしゃざんえんぎょうじ)(正確には書寫山圓教寺)さんの建物の三宝院の板間で昼寝をしていた少年だった私は未だ凡人です。
外来種とはいえ、人や農産物に害虫でもなく、
国内においては珍虫で特異な種である事には違いないので大切に見守りたい昆虫には違いありません。
ビナンカズラは県内には各地に生育が見られますので、今後は他の場所で探して観ます。
このキベリハムシの独り言は、
「最近の日本の暑さは、非常にまいってしまう。
もうだめ!ここで休んでもいいかな?
へたり込んでしまいそう~~!!」
~きべりはむし~談。(笑)
今回の記事については
故高橋寿郎氏の「六甲山の昆虫たち」神戸新聞出版センター
相坂耕作氏の「播磨の昆虫」神戸新聞総合出版センター
を参考に自分の知識の不足分を引用させて頂きました。
詳しくはこちらに記載されています。