天使の囁き(童話で心を癒して) -147ページ目

お月さまの見た話し(線路の果てに)

 あらためて、読み返すと「トトロ」に良く似ているようです。
 廃線になった線路だと、こんな事もありそうですね。
 書いた時は「トトロ」は意識していませんでした。


 お月様は廃線になった線路を眺めていました。
 列車が通らなくなってから、夜中に時たまキツネやタヌキを見かけるだけです。
 そこに、小学生くらいの女の子と小さな男のが手を繋いで歩いています。
 満月で明るいとは言え、どうして歩いているのか不思議です。
 「おねえちゃん、おかあちゃんだいじょうぶかな」
 「大丈夫、きっと元気になってるよ」
 「ぼく、もうあるけない」
 「もう、だから家で待っていようって・・」
  その時でした。
 後ろの方から「しゅしゅぽっぽ」と音がします。
 二人が振り返ると、タヌキの顔をした機関車がいます。
 そして、キツネの顔をした機関士が「早く乗って」と叫んでいるのです。
 二人は疲れていた事もあって、こわごわ機関車に乗り込みました。
 「出発進行、お母さんのいる病院へ」
 あっと言う間に隣町の病院に着きました。
 「さあ、早く降りて無事に手術は終わっているからね、この機関車は内緒だよ」
 二人は慌てて病院に入りました。
 受付でお母さんの病室を聞いて飛んでいきます。
「お前達、どうしてここへ」
 病室にはお父さんがいました。
 お母さんと楽しく話していたのです。
 楽しげな会話が続いています。
 それを聞きながらタヌキとキツネは戻っていきます。
 そんな二匹を優しく見守り続けるお月様でした。

ばたばたしていて、なかなか書けませんでした。

 地域のボランティアフェスティバルが終わりました。
 難聴者も映像が楽しめるように字幕を入れるボランティアで字幕上映会をしました。
 上映会は、他の催しが騒がしく落ちついて見れる雰囲気ではなかったけど、最後まで見て頂いた方もおられました。
 ブースではパソコンによる字幕を入れる作業を見て頂き、興味を持って頂いた方が多数居られました。
  終わった途端、ほっとしてしまって、疲れが一度に出てしまって。
 やっと、ここに来れました。
 また、ぼちぼちアップしていき、ますので、今後とも宜しくね。
 毎日、一つの短いお話しと思いながら、ばたばたしていました。

お月さまの見た話し(恋の予感)

 お月様は繁華街の駅を眺めていました。
 最終電車の時間が迫っています。
 結婚式の帰りなのか、若い女性が着物姿で駅に急いでいました。
 幸せそうな顔なので、嬉しい事があったのでしょう。
 しばらくすると、その女性が悲壮な顔で駅から出てきました。
 何かに追われているようです。
 辺りを見回しながら、小走りに駈けています。
 駅前のベンチから若い男が立ち上がりました。
 そして、その女性を追いかけ始めたのです。
「待って、君、ゆきさんじゃない」
 女性は急に声を掛けられてびっくりしました。
 お月様の光で少しは明るくても、街灯を背にしています。
 だから、誰だか良く分かりません。 
 それに、大事な物を忘れたので、気が急いています。
 逃げるように駆け出しました。
「待って、これ君の忘れ物じゃないかな」
 その声で、ゆきさんは、声を掛けた男性を見ました。
 さっき、二次会のカラオケで格好良いと思った男性でした。
 彼の手には、結婚式で貰ったブーケが握られています。
 幻のりえさんと言われている人が作ったブーケです。
 それを結婚式で手に入れた人は幸せな結婚が出来ると言われています。
「どうして、貴方が」
「気が付いて、追いかけたんだけど・・ひょっとして戻ってくるかと思って・・」
 二人は長い間話しています。
 そして、寄り添うように歩いていきました。
 お月様は恋の予感を感じて、より一層輝いたのでした。

昨日は誕生日


昨日は私の誕生日でした。
この年になるとあまり嬉しくないのですが。
昨日は娘二人から思わぬプレゼント。
やはり、娘が覚えてくれているって嬉しいですね。
私の誕生日は皇太子殿下と同じ。
それも、干支まで一回り違うけど一緒。
それに、メルマガからも一杯御祝いメール。
忘れたくても忘れられないようです。
良い誕生日を迎えられて幸せな一時が過ごせました。
年を取ったのは嫌だけどね。

お月さまの見た話し(友達って良いなあ)

 午前4時頃でした。
 お月様は静まり返った町を眺めています。
 いつもと違う所に灯りが点きました。
 それも、小学校の近くの数軒の家です。
 お月様が輝いてるけれど,辺りは暗いままです。
 灯が点いた数軒の家から子供達が飛び出してきました。
 男の子も女の子もいます。
 同じ家に向かっているようです。
 一番最初に着いた男の子が大きな声で玄関から声をかけました。
 「おはよう、イサム準備出来てるか」
 家の中から元気な声で「おはよう、大丈夫だよ」と返事がします。
 数人の子供も到着したようです。
 家の中からイサムが車椅子に乗って出てきました。
 「よし、学校へ行くぞ」
 集まった友達は五人でした。
 女の子が三人と男の子が二人です。
 役目は決まっています。
 何度も練習したのです。
 イサムが修学旅行に行けるように集まった仲良しの6人なのです。
 学校へ着くと、イサムと女の子二人が残りました。
 三人は急いで家に帰ります。
 男の子は女の子の家にも回るのです。
 東の空が明るくなってきました。
 3人が戻ってきてみんな楽しそうに話しています。
 「あれ、お月様泣いているみたい」
 見ると泣き笑いの顔のようです。
 ちょっと、恥ずかしそうに消えていくお月様でした。

お月さまの見た話し(ネコの集会)

 知りあいに、野良猫を可愛がっている人がいます。
 気になって仕方がないので、家にいれてあげています。
 最初は、馴れなくて、なかなか家に入って来なかったそうです。
 だけど、知りあいの方の愛情なのか入ってくるようになったそうです。
 昼間や、夜は」プイっと出て行く事があるそうです。
 それを聴いて、ちょっと物語にしてみました。


 真夜中の事でした。
 満月に照らされた道をたくさんの猫が歩いています。
 みんなは町の中にある工場跡地にむかっているようです。
 お月様は知っていました。
 今日は年に一度の野良猫達の集会なのです。
 猫達は思い思いの格好で長老が来るのを待っています。
 一番大きな猫が廃車になった車の上に上がりました。
 その時、遅れたのか二匹の猫が飛び込んできました。
「ゴメン、ゴメン遅くなってしまって」
 陽子さんが可愛がっているミースケとミータローです。
 ミースケが家の中に入っていたので、外に出るのが遅れたのです。
 長老の話が始まりました。
 そして、猫達は順番に一年間の報告します。
 最後は遅れてきたミースケとミータローです。
 陽子さんに可愛がられていると話していた時でした。
 建物の陰で大きな音がしました。
 猫達は一斉にそちらを見ます。
 そこには陽子さんがいます。
 猫達は一斉に取り囲みます。
 今にも飛びかかろうとする猫までいます。
 ミースケとミータローは長老に何か頼んでいます。
 長老は、陽子さんの前に行き、目を見つめました。
 そうすると、陽子さんは来た道をミースケとミータローと戻っていったのです。
 猫達の集会は終わり辺りは静寂になりました。
 お月様は歩いている一人と二匹の猫を優しく見つめています。
 陽子さんが何も覚えていないと思うと、ちょっと残念だったかなと思うお月様でした。

お月さまの

 辺りが暗闇に包まれた頃、お月様がそーっと顔を覗かせました。
 たくさんの人が川原に集まっています。
 小さな子供を連れた親子。女の子ばかりのグループ。
 恋人同士かも知れない男女。
 みんなワクワクしながら思い思いの場所に座っています。
 ドーンと大きな音がした途端、夜空に綺麗な花が咲きました。
 綺麗、ウワーと言う声があちこちで沸き上がっています。
 お月様も目を細めながら夜空に咲く花を見つめています。
 花火を見ていて、気になるカップルが目に入りました。
 木の陰に寄りかかっている浴衣姿の女性。
 少し離れた所には男性が女性を守るように立っています。
 女性は静に花火を見ています。
 一度も男性の方を見ようともしません。
 喧嘩をしているようにも、何かを期待しているようにも見えます。
 夜空の花火が静に消えていきます。
 辺りは静寂と暗闇が広がりました。
 男性がそーっと女性の側に歩み寄りました。
 お月様は何かが起こる予感がして、より明るく輝きました。
「陽子、結婚してくれ」
「もう、お兄ちゃん、冗談は止めてよね」
「ははっ、お前がうっとりした顔をしていたからなあ、帰ろうか」
 二人は、はしゃぎながら帰っていきます。
 お月様は二人の心臓が早鐘のように鳴っているのを知っていました。
「もう卒業かな」
 二人のつぶやきがお月様には聞こえたような気がしました。

お月さまの見た話し(自信をもって)

 中学生くらいの男の子が天体望遠鏡を持って歩いています。
お月様はちょっと気になりました。
満月で明るく輝いています。
 それでも、望遠鏡で見られるのはちょっと恥ずかしい気がします。
「のんこ、いるよね」
 男の子は家の前で叫びました。
 だけど、誰も出て来ないし返事もありません。
 男の子は家の中に入っていきました。
 そして、物干し台の上に天体望遠鏡をセットしました。
「ゆうちゃん、ゴメンネ、あの子部屋から出てこないのよ」
「これを見れば大丈夫さ」
 男の子は天体望遠鏡でお月様を見えるようにしました。
 のんこは気になるので窓からゆうちゃんの様子を見ています。
「ほら、のんこ見てごらん」
 のんこは天体望遠鏡を持ってきた訳を知っています。
 だけど、ゆうちゃんの前に出て行くのが恥ずかしいのです。
「僕は帰るからね、お月様綺麗だよ」
 のんこはゆうちゃんが帰って行くのを窓から見つめていました。
 そして、そーっと部屋から出て望遠鏡を覗きました。
 お月様は望遠鏡で覗いても明るくて綺麗です。
 ただ、自分と同じようにぶつぶつがたくさんあります。
 のんこにはお月様が「明るく輝いていれば、気にする事ないのよ」と言っているように思いました。
 お月様はちょっと苦笑いしながら微笑み続けたのでした。


お月さまの見た話し(湖での出来事)

 お月様は湖に浮かんだ自分の姿を眺めていました。
真夜中ですが、お月様の光で湖面は明るく輝いています。
 湖畔の大きなお屋敷から、部屋着のまま若い女性が出てきました。
 岸辺に繋がれたボートに向かっています。
 若い女性はボートに乗りました。
 そして、沖の方にボートをこぎ出したのです。
 お月様はこの女性が粗末な身なりをした男性に会っているのを知っています。
 そして、明日が彼女の結婚式だということも。
 ボートはどんどん沖に向かっています。
 向こう岸から良く見える所でボートは止まりました。
 女性はボートに立ち上がり、生まれたままの姿になりました。
 着ている物は全て湖に浮かんでいます。
 女性は向こう岸に向かって裸身をさらしました。
 彼女は月の光を浴びて白く輝いています。
 お月様がゆっくり動いています。
 だけど、湖畔は静かなままです。
 彼女の瞳から涙が零れるように流れています。
 ドボンと言う音がしました。
 お月様は悲しそうな顔で湖面を見ました。
 ボートと部屋着が波間に漂っています。
 お月様は彼女の気持ちが痛いほど分かります。
 だけど、湖面を照らす事しか出来ないのです。
 数年後の真夜中でした。
 粗末な身なりをした夫婦がボートに乗っています。
 若い女性の腕には可愛い赤ちゃんがお月様を見て笑っています。
 ただ、あの時の女性かどうかはお月様には分かりませんでした。

お月さまの見た話し(淋しくないよ)

 お月様は浜辺からちょっと離れた沖を眺めていました。
花柄の綺麗な浮き袋が波間を漂っています。
浮き袋は浜辺に近づこうとします。
だけど、すぐに離れていきます。
昼間に波のいたずらで沖に運ばれたのでしょう。
 お月様には浮き袋の思いが伝わってきます。
 楽しかった昼間の出来事。
 悲しそうな女の子の顔。
 お父さんが追いかけてくれた事。
 お母さんが女の子を慰めている事。一緒に帰れなかった事。
 だけど、お月様は浮き袋を見ている事しか出来ません。
 花火をしていた人達もいなくなり、浜辺には誰もいません。
 沖にあった浮き袋はいつの間にか浜辺に近づいています。
 砂浜にのったと思ったら、また波にさらわれます。
 お月様には浮き袋の帰りたい思いが痛いほど伝わってきます。
 砂浜を歩く音がします。
 小さな女の子がお母さんとお父さんに手を繋いで歩いてきます。
 小さな女の子に引きずられているように見えます。
 お月様は浮き袋を照らします。
 「あっ、ちいちゃんだ」
 お月様には浮き袋がそう言ったように聞こえました。
 小さな女の子が浮き袋を見つけました。
 また波にさらわれそうです。
 お父さんはズボンのまま、浮き袋を追いかけました。
「ちーちゃんの言ったとおりね」
「うん、かえりたいっていってたから」
 浮き袋は女の子がしっかり持っています。
 三人は来た道を戻っています。
 微笑みながら浜辺を照らし続けるお月様でした。