天使の囁き(童話で心を癒して) -148ページ目
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お月さまの見た話し(家族の絆)

 お月様は小さな郊外の駅を見ています。
 気になる女の子がいるのです。
 毎日、最終電車で帰ってきては、全速力で家まで走って帰ります。
 今日も、その女の子が出てきました。
 バレーボールを持っています。
 お月様は、その女の子が走り出すと思っていました。
 だけど、今日は違っていました。
 ちらっと、ベンチに座っている若い男を見ます。
一瞬嫌な顔になりました。
 女の子は駅前の道をゆっくりした足取りで歩いています。
その後ろにはあの若い男と、年輩の男性がいます。
どちらも、同じような距離があいています。
 お月様は嫌な気がしました。
だけど、女の子を照らす事しか出来ません。
ほとんどの人がタクシーに乗るので、歩いているのは3人だけです。
灯りが少ない所に来ました。
家まで少し距離があります。
若い男の足が速くなります。
 女の子は走りだしました。
 女の子は掴まりそうです。
 後ろの方で声がします。
 「待て」と言っているのは年輩の男性のようです。
 「お前、急に走るなよ」
 「ふふ、お兄ちゃん、帰ろ」
 「お前ら、俺を殺す気か」
 三人は仲良く話しています。
 二人共、恥ずかしくて、離れていたようです。
 お月様は、はらはらした事がおかしくなりました。
 だから、笑いが止まりません。
「今日のお月様って真っ赤だったね」
 三人は仲良く家に入ったのでした。

お月さまの見た話し(愛の形)

私は結婚して8ヶ月目に難病で倒れました。
病院のミスなのか退院間際に身動き一つ出来なくなり、死ぬ事しか考えられない時、妻が「一生ついていく」と言ってくれたのです。
ちょっと話しとして違いますが、お月さまの見た話しで書いてみました。

 海岸線を一台の車が走っています。
 お月様はゆっくり走っている車をぼんやり見ていました。
 雲一つ無い満月の夜でした。
 ゆっくり走っているのは周囲の景色を見ているからでしょう。
 見晴らしの良い場所に車は止まりました。
 助手席から若い女性が降りてきました。
 そして、トランクから車椅子を出してきたのです。
 運転していたのは足の悪い男の人でした。
 女の人は男の人を車椅子の乗せて、景色が見える所まで押して行きます。
「無理言って、ゴメンネ」
 男の人は、後ろを振り返って、そっとつぶやきました。
「ううん、私はいつも一緒にいたいから」
 男の人は女の人にみえないようにポケットから小さな箱を取り出しました。
「本当に僕で良いの、ついてくるって言ったけど・・・・・」
 女の人は車椅子の正面に行きました。そして笑顔で言いました。
「貴方がいるから、私がいるのよ」
 男の人はそーっと小箱を渡しました。
 女の人が開けると、中から小さなダイヤモンドの指輪が出てきました。
 ダイヤモンドは月の光にキラキラ輝いています。
 女の人が指輪をはめると、一滴の涙が男の人の膝に輝きながら落ちていきます。
 女の人がそーっと屈んでいくのを見て、お月様は少しの間だだけ目を閉じたのでした。

下記の童話の説明

ビルを建てる時に屋上に大きなクレーンがあります。
小さな子供が見ると、夕陽に照らされて赤いキリンに見えるようです。
お月さまの見た話しとして書いて見ました。

お月さまに行った赤いきりん


「おかあさん、あの赤いきりんさん、いつもお月様を見てるね」
「そうね、お月様に行きたいのかな」
 お月様がビルの屋上を照らしています。
 ビルの一番上には、赤いきりんがお月様を見上げています。
 夜になると赤いきりんさんのお仕事はお休みです。
 お月様を見る事しか出来ません。
 女の子は赤いきりんさんがお月様に行ければ良いなあと思いました。
 お月様にもその気持ちが届きました。
 だけど、お月様には赤いきりんを照らす事しか出来ません。
 雲がお月様を隠しました。
 雲の真ん中に穴があいています。
 そこから、お月様の光がスポットライトのように赤いきりんを照らしました。
「おかあさん、赤いきりんさん、お月様に上っていく」 
 光の筋が赤いきりんさんとお月様を繋げているのです。
 どんどん、赤いきりんさんはお月様に近づいているように見えます。
 雲が完全にお月様を隠してしまいました。
「赤いきりんさん、お月様にいっちゃった」
「ほんとね」
 雲が途切れて、お月様が顔を覗かせます。
 見えなかった赤いきりんさんが少しずつ現れました。
 小さな女の子にはお月様から帰ってきたように見えます。
 笑顔の女の子を見て、お母さんも嬉しそうです。
 二人を見てお月様もにっこり微笑みを浮かべました。

お月さまの見た話し(ダイヤモンドの輝き)


公園のブランコに男の子がいます。
 お日様も沈み、辺りは暗くなってきました。
 ときおり、聞こえるのは風の音と、ブランコのキィキィだけです。
 男の子は公園の入り口を見るたびに、ため息をついています。
 お月様は淋しそうな男の子が気になりました。
 だけど、お月様は男の子を照らす事しか出来ません。
 小さな女の子がお母さんと一緒に公園の中に入ってきました。
 男の子顔が一瞬嬉しそうな顔になります。
 二人は公園を横切っただけです。
 男の子はため息をついて、もっと悲しそうな顔になりました。
 お月様は男の子の膝に小さな箱を見つけました。
 白い封筒もあり、何か文字が書いてあるようです。
「来てくれるのかな」
 お月様には男の子がそう言ったように聞こえました。
「ごめん、遅くなっちゃた」
 公園の入り口に若い女の人が大声で叫んでいます。
 男の子の顔は、ぱっと明るくなりました。
 そして、ブランコから飛び降りると、その女の人にかけよったのです。
「お母さん、お誕生日おめでとう」
「まあ・・・・・・何でって思ったら」
 お母さんの顔から一しずくの涙がこぼれました。
  それが、お月様の光に照らされて、ダイヤモンドのように輝いています。
  男の子は今日が満月だと知っていたようです。
  お月様は二人が手を繋いで家に帰るまで見続けていたのでした。
 

微笑むお月さま


 満月の夜でした。地上は明るい光に照らされています。
 丘の上に小さなうさぎがいます。
 お月様の光に誘われて出てきたようです。
 雲がお月様を隠します。
 辺り一面真っ暗です。
 小さなうさぎはびっくりしたのか走り出しました。
 しばらくして雲の切れ目からお月様が顔を覗かせます。
「あぶない」
 お月様の声は、うさぎには届きません。
 小さな、うさぎは罠にかかったのです。
 雲が途切れて元のように明るくなりました。
 小さなうさぎは逃げようと必死です。
 だけど、すぐにぐったりして動かなくなりました。
 遠くに旅の若者が歩いています。
 急いでいるのでしょう。
 うさぎのいる所にどんどん近づいています。
 お月様は、うさぎを照らすことしか出来ません。
「あれ、こんな所にうさぎがいる、お月様を見にきて、罠にかかったんだね」
 若者はうさぎを罠から外してやりました。
「気をつけてお帰り」
 うさぎは飛び跳ねるようにして見えなくなりました。
 若者も何事もなかったように歩き続けています。
 お月様は若者の優しさに思わず微笑みました。
 辺りは、よりいっそう明るくなります。
 若者はお月様にペコリとお辞儀しました。
「明るくしてくれて、ありがとう」
 その声が聞こえたのか、若者が見えなくなるまで微笑み続けるお月様でした。

悲しみのピエロ

 まりちゃんはひとりぽっちで暗い部屋にいます。
 お父さんもお母さんもいません。
 心の中も真っ暗でした。
「迎えに来たよ」
「・・・・・・・・・・」
「ほら、僕はここだよ」
「・・・・・・・・」
「いつも僕を見てるよね」
「・・・・・・・」
「ほらほら、真っ暗だから見えないんだ」
 部屋が明るくなりました。
 まりちゃんの前にピエロのパジャマ入れがいます。
 いつもの無表情の顔で踊っています。
「まりちゃん、鏡を見てごらん」
 まりちゃんは言われて、鏡を見ました。
 ピエロと同じ顔をしています。
 笑っているのか泣いているのか分からない顔です。
まりちゃんは無理矢理笑おうとしました。
だけど、表情は変わりません。
余計に泣いたように見えます。
「どうしたの、私の顔はどこにいったの」
「あわてないで」
「あわてるわよ、私の顔を返して」
「駄目だよ、せっかく仲間が増えたのに返せないよ」
「そんな、いじわるしないでよ」
「僕がいじわるしてるって」
「そうよ、いじわるしてないんだったら、私の顔を返してよ」
「まりちゃんの顔をピエロにしたのは僕じゃないよ」
「じゃあ、誰がしたのよ」
「そんな事より、僕と遊ぼうよ」
「なんで、あんたと遊ばないとだめなの」
「まりちゃんも僕と同じだろ」
「同じって」
「ピエロってね、なんでこんな顔してるのか知ってる」
「知らない、みんなを笑わすのがお仕事でしょう」
「ピエロってね、悲しみを心に持っているから、こんな顔になったんだ」
「どうして悲しいの」
「それはまりちゃんと同じさ」
 まりちゃんは自分の心の中を見られたと思いました。
誰にも言えず、心の中にしまい込んだつもりでした。
まりちゃんの心の中にお父さんもお母さんも友達もいません。
真っ暗で何も見えなくなっています。
「僕と遊ぶ、それとも話してみる」
「何を話すの」
「まりちゃんの悲しみを聞いてあげる」
「話したら、ピエロの顔は消えるの」
「それはどうか分からないよ」
「じゃあ、話さない」
 ピエロは黙って踊り出しました。
 逆立ちしたり、飛び上がったりします。
 まりちゃんのパジャマが上にいったり、下にいったりして、お腹がふくらんだり縮んだりします。
まりちゃんは楽しげなピエロを見て、心がちょっとだけ温かくなりました。
そして、いつのまにか自分も踊り出していました。
「あらら、まりちゃんの顔元に戻っているよ」
「なんで、どうして」
「まりちゃん、悲しみはどうしたの」
「あれっ、私何が悲しかったのかしら」
「せっかく、仲間が増えるって思ったのに」
「そういえば迎えに来たって言ってたよね」
「ピエロって悲しみを心の中に閉じこめているんだ、だから、こんな顔でみんなに笑いを振りまいて心を取り戻してもらうんだ」
「じゃあ、私が心を取り戻さなかったら」
「僕と一緒にピエロの国に行くんだ」
 ピエロから聞いたピエロの国は、悲しみの国です。
悲しすぎて、誰も心を閉じこめています。
泣くことも笑うこともなく表情のない顔で踊り続けています。
悲しみを忘れるために踊り続ける事しか出来ないのです。
「良かったね、明日みんなに謝るんだよ」
「まり、起きなさい」
「お母さん、昨日はごめんなさい」
「いいのよ、分かれば、お友達にもちゃんと謝るのよ」
 まりちゃんの悲しみは、友達からお金を借りた事です。
 そして、二人からその事で怒られました。
 友達に返すのが遅れ、二人に知られたからです。
 それが元で友達とも喧嘩になりました。
そして、みんなから嫌な子だと思われたのです。
 ピエロのパジャマ袋はいつもの顔でまりちゃんを見下ろしています。
 暗い部屋で独りぽっちでいたのは夢のようです。
「ありがとうピエロさん」
「どうしたの」
「ううん、なんでもないの」
 まりちゃんの顔は晴れ晴れしていました。
 友達に素直に謝る勇気も持てたようです。
 そして、悲しみは心に閉じこめないでおこうと思いました。
 ピエロの国で踊り続けるなんて淋しいものね。
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