(ややネタバレあり)
第80回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)受賞した話題作。濱口竜介監督がカンヌ、ベルリンに続く世界三大映画祭の主要な賞のコンプリートを果たした話題作で、長野県の自然豊かな高原が舞台。突然降って湧いた観光施設の整備計画をめぐる地元住民と開発業者の関係を追うストーリー。
冒頭、林を下から見上げる映像や主人公の男が薪を割ったり、湧き水をポリタンクに入れて運んだりするシーンが長めのカットで映し出され、動きの少ない展開が続く。そしてグランピング場というハイソなアウトドア体験型宿泊施設の建設計画説明会の場面から、物語の展開がテンポアップしてゆく。
グランピング場計画は、コロナ禍で仕事が減った東京のタレント事務所がコンサル会社の提案に乗っかって作り、いかにも胡散臭い。森の景観や澄んだ清水に愛着を持つ住民たちは、上流にできる施設の合併浄化槽からの排水や、夜間は管理人不在の運営体制に不安を覚え、計画の見直しを迫る。
説明役の社員2人が下っ端だったことも住民の不興を買い、説明会はいったんお開きに。だが、すでに土地を購入し、コロナ関連の事業多角化?の補助金も申請していた事務所の社長やコンサルからネジを巻かれた社員が再び現地を訪れ、地元を説得するキーマンとして目をつけた主人公の男を取り込もうとする。
登場人物の設定は説明会での自己紹介や移動中の車中での会話を通じて描かれるが、小学生の娘と二人暮らしの主人公をはじめとして曖昧さが残る。クライマックスでは主人公の娘が行方不明になり、住民総出の捜索に業者の男も加勢するのだが、ラストの出来事が余りに唐突で、消化できないまま終わった印象。
テンポアップしてからはあっという間だったので、退屈だったわけではない。劇中で主人公が語った手負いのシカの行動にラストのヒントがあるのかとか、ずさんな計画の業者=悪という単純な図式ではなさそうだとか、監督の意図を探るけれど僕には手に余る。(2023年・日本、監督:濱口竜介、106分)
濱口作品の映画メモ↓
https://ameblo.jp/tenotookaoka/entry-12739003773.html (ドライブ・マイ・カー)
https://ameblo.jp/tenotookaoka/entry-12730864868.html (偶然と想像)
https://ameblo.jp/tenotookaoka/entry-12274263436.html (PASSION)
【11日の備忘録】
朝=抜き、昼=鶏照り焼き丼、ミニトマトとブロッコリー。飲酒=白ワイン2杯、赤ワイン4杯。体重=59.8キロ。