(『人間革命』第11巻より編集)
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〈夕張〉 8
山本伸一は、集った聴衆が叫びたいことを要約し、しかも明確にした。スポーツセンターの天井を揺るがすような拍手が、わっと沸き上がった。
「翻って考えてみれば、大聖人御在世も、三類の強敵が現れました。それは、まさに、妙法が民衆の心のなかに確立していった時でした。
学会は、一昨年の小樽問答で、・・・。
そして、今また僭聖増上慢(世間から尊敬されている出家者が、権力者を動かして、法華経の行者を迫害する)と化した炭労の圧力を、
同じ北海道の地で打ち破ることは、喜びに堪えない次第です」
伸一には、”一気に事を決する”と思い決めた気迫が満ちあふれていた。この夜、集った会員は、意気揚々として、それぞれの地元に帰って行った。
七月二日の午前十時ごろになると、札幌から、バスや列車で、約二百人の青年部員が到着した。前夜、札幌大会に参加した青年たちである。
夕張大会の結集の準備は、朝から万全を期して進められていた。
集った同志は千五百人である。
炭労の地元であるだけに、夕張の青年部員は、厳重な警戒態勢を敷いていた。
登壇する人びとは、前夜の札幌大会と、ほとんど同じであり・・・。
しかし、地元だけに、緊迫感をはらんでいた。
札幌大会と違った点は、炭労側から傍聴を申し込んできたことである。 ・・・。
しかし、最後まで傍聴した役員がいたのである。それは、真谷地炭労の副委員長たちであった。
彼らは、大会が終了すると、山本伸一の所まで、あいさつに来て、「学会の主張は、よくわかりました」と言った。
「私どもとしては、決して浅はかな行動は取りませんから、安心してください」
二つの大会は、無事終わった。