子供の頃の過剰な孤独は、心に様々な傷を残す。
傷はいつまでも痛み、その痛みを消そうとして、心が様々な振る舞いを繰り返す。
1940年のアメリカ、カーソン・マッカラーズという23歳の若い女が、下記のような詩を基に一編の小説を書いた。
心は孤独な狩人、
いつも寂しい山中でひとり狩りをする
君の噂を聞くたびに、私はこの小説を思い出す。
孤独にも痛みにも慣れ過ぎた心は、狩りをする。
鎮痛剤を求めて毎日狩りに出る。
そうして稀に獲物を手中にしたと喜ぶが、幻影の獲物は君をごまかし切れず消えていく。
その度に、君は新たな傷を創り、お馴染みの痛みに耐え、翌日また狩りに出る。
無明長夜の山中をいくら彷徨しても、もとより獲物などいる筈もないのに。
狩人の寂しさは死ぬまで消えず、心の痛みに快癒などない。
しかし、軽減はする。
そのためには、単に狩りを止めれば済むことだ。
山を下り、今日まで辿って来た道を一旦とって返し、
長閑な里を見つけたら、沐浴して旧い恨みや憎しみを洗い落とし、
人を許し自分を許し、静かな眼差しを取り戻せ。
そうして、新たな家を作れ。
君の子供が過剰な孤独とは無縁で育つ家を。
君の噂を聞くたびに、私はいつもそんなことを思う。
(2022年4月16日)