『フィールド系 英セターのルーツを探る』 石橋徳次郎
【ウィリアム・ハンフリー氏】
ハンフリー氏は英国シュロップシャー州のミンスターリーに住んでいました。彼がイングリッシュ・セッターの改良を始めたのは1897年に遡ります。彼はリュウエリン氏が残した幾つかのセッターと、リュウエリン氏の系統の犬の影響を大きく受けていたH・ハートレイ氏の犬舎を買い取りました。
更に、彼はかつてリュウエリン氏がアメリカやカナダに輸出したリュウエリン系セッターを永年に亘ってアメリカやカナダから輸入し、その数は35頭になりました。
これらの犬は、リュウエリン系のベストの血統を持った犬であったと記されています。そしてハンフリー氏はボンドウ系とウィンダム系の血統により、二血統の犬をその性格と特徴を重視しながら、二血統ともに均質のものを繁殖し大成功を収めました。
最後の12年間、1958年までハンフリー氏は5頭のフィールド・トライアル・チャンピオンを作出されたと記されています。
以上は、ワルデマン・マー氏の『ポインタース&セッタース』の要約であります。とにかく、今日のリュウエリン系セッターのルーツを探る時、ラヴェック氏、リュウエリン氏、ハンフリー氏をおいて論ずる事は出来ません。それだけに、この3人はセッターの改良・繁殖に情熱を注ぎ、また大規模に繁殖して海外にも輸出するなど今日のフィールド系英セッターに大きな影響を与えたといえると思います。
ボンドウ系とウィンダム系の特徴について、少しご説明します。
ボンドウ系はラヴェラック系を祖先とし、ブルーベルトン・セッター(白黒サラサ)の犬が多く、毛質は柔らかく癖がなく毛深でもありません。もちろん、三毛のセッターもいます。体型は小柄で白勝ちのものが多く、どちらかといえば細い感じのセッターであります。
これと対照的にウィンダム系は、ラヴェラック系に他系を加え改良しており、堂々として丈夫な骨格と、三毛のものが多く、若干ウェーブしており毛深なものが多いようでもあります。
この2つのタイプは明確に異なっておりますが、ウィンダム系の中でボンドウ系に近いものも多数おり、これはボンドウ系とウィンダム系を掛け合わせた結果であります。しかし、ボンドウ系にはウィンダム系の血を混入しないように注意して繁殖していると聞いております。
ボンドウ系、ウィンダム系の説明は以上であります。
最後になりましたが、リュウエリン系セッターの猟野における特徴を説明しますと、非常にスピードがあり薮入りが良く、捜索のレンジも広いのでありますが、フィールドを走っている際、静かで足音を立てず、特にブッシュの中を走っていても殆ど音を立てないように思われます。
特にボンドウ系のセッターにその傾向が強く感じられますが、その理由として、体全体、特に足のパスターンの部分が柔軟であるからではなかろうかと思われます。野鳥に接近する際、静かに素早く接近する事が要求されますが、リュウエリン系セッターは天性にそうした素質を持っているように思われます。
リュウエリン系セッターは、アメリカ、カナダ、欧州、それに日本にも輸出されましたが、特にアメリカとカナダのセッターは、猟能本位に改良されており、欧州や北欧のセッターはその国の猟野性に合った改良が為されていると思われます。
何れにせよ、優れたリュウエリン系セッターが今日いるという事は、我々スポーツマンにとって大変幸せな事だと思います。
何かのご参考になれば幸甚であります。
『全猟誌 98年5月号』より抜粋









