※トライアルの競技法
この章では鳥猟犬競技の実際的なやり方について述べる。
トライアル場は注意深く選択され、トライアルが行われる場所は、はっきり提示されなければならない。
役員はトライアルが行われる場所への道標となる旗等を立ててトライアルマンや観衆が迷わずにトライアル場へ到着出来る様にしなければならない。
トライアルに使用する馬も必要数だけ用意されて居なければならない。馬の数は少なすぎても多過ぎても色々と困った事が起きるので、必要数の正確な見積りを予めして置き、必要なだけは供給出来る、完全な準備が必要である。鞍や手綱の用意も勿論必要である。
役員は審査員や記録係が充分自分達の職務を果せる様優秀な馬を用意しなければならない。
若し犬のために自動車があれば、全ての競技犬をそこへ抽選された組毎に入れなければならないし、若し車が無い場合は抽選された組通りに犬が競技出来る様に誰かが見守って居なければならない。
トラックや、犬の為の車があれば、犬を定められた場所に定められた時間に連れて行く事が出来、各々の飼い主が時間通りに犬を連れて来ないで遅刻したりする様な事は防げるだろう。
ハンドラーは進行係から競技のコースは知らされて居る。進行係はトライアルの最初から終り迄、トライアル関係者の世話を積極的に行う。進行係は土地を良く知って居り、トライアル場の隅々迄分り獲物の状態を完全に知って居る事が必要である。
定められたコースをトライアルの一行に示し、案内するのも彼の役目である。食事時には馬を食事に連れて行き、又観衆が競技を行って居る犬に近付き過ぎない様注意するのも彼の仕事である。トライアルの進行係の中でもニューヨークのロイセイント・クレア・ジョンソンはトライアルの一行を案内する人達の手本とされて居る。
ハンドラーは犬に口笛や声や合図によって定められた地域を指示し命令する。
審査員は、馬に乗って犬の動作を観察し、犬の示す能力を研究し、総ての犬がする働きをも分析し乍ら犬のあとを追う、競技が終るとハンドラーは犬を捕まえて、自動車に戻す、そして進行係は次のコースの出発点に導く、次の一組が呼び出され、この様にして全ての出走犬が競技を行う迄続けられる。審査員は協議し、決定が下されると書記に手渡され公表される。
どの犬もハンドラーに導かれ、又審査員に観察され乍ら定められた時間に決められたコースを走る。
全部の犬が各々の競技が終ると、最初のシリーズが終った事になる。審査員はそこで勝利者を決定するかもしれないし、或は第二シリーズに走るための犬の名を示す。
二度目のシリーズの長さは規則に定められて居る事もあるし、又は審査員の判断にまかされる。
例えば、審査員の満足のゆく迄10分間でも2時間でも、或はそれ以上の時間を要する事もある。
最後に審査員が決定を下すと各々の勝利の順位が紙に書かれ、それがクラブの役員(普通、書記)に手渡され発表される。
※審査の要点
「トライアルの審査員は作られるものでなく生れるものである。」とはトライアル愛好の数多くの熟練者の言う言葉である。審査員と言う難しい職務を立派にやりとげるには特別な才能の持ち合せが必要な事は言う迄もない。
優秀なセターやポインターへの深い愛情を持つ事は審査員として必要な事である。
有能な審査員は優秀な猟犬の性能を見分ける事が出来る。然し、その様に見分けられたものは、示される猟犬の能力の証明や定義にはならない。優秀な猟犬としての能力を正確に記録する事は大変難しい事である。豊富な実際的経験を積む事によってのみ、ポインターやセターの行動の素晴らしい特質を適確に分析する事が出来る。若し我々が同じ見解で物事を見るのなら、トライアルの出来映えの限定された基準を明確に述べる事は易しい事であるが、我々の見解は色々であるし、又行動の一つ一つを全く同じ様に説明する事は出来ないので、何にしても実際の経験が必要となる。
審査員は度々色々な変った状態に置かれるので、常に首尾一貫した結論に達する様にしなければならない。
この章では猟犬が判定される時のいくらかの要点について述べよう。
出走犬はスピード、レンジ、動作態度、活気、聡明さ等のグランド・ワーク及び獲物へのポイント、バックのスタイル、訓練者への従順さ、その他バード・センスと呼ばれる色々な能力を含む行動能力を審査される。
トライアルは普通の狩猟とは大分違っている。経験の少ない犬だと、馬に乗った人の群の中では、うろたえたり、訓練された事を忘れたりする。従って余り厳しく命令を与えずに適当な寛容さを犬に与えた方が良い。我々が鳥猟犬に望む事はトライアルに必要な能力と自主性を猟犬が所有して居る事である。今迄にも理想的な鳥猟犬の定義や解説が多くの狩猟家達によって示されて来て居る。
その中でも故、パーシイ・R・ホルトン博士が発表したものは、多分現代のセターやポインターとしての望ましい能力、トライアル犬としての必要な定義を述べたものとして、最も一般に良く知られたものの一つであろう。
ボルトン博士はコンチネンタル・クラブの会長として長い間尽し、トライアルの基盤を築いた人である。彼のオールエイジ犬やダービー犬の定義は有益な意見として用いられて来ている。
※P・R・ボルトン博士が作った定義
狩をする時の犬の働きは次の三つに分けられる。
i グラウンド・ワーク
(a) 聡明さ
(b) スピード
(c) レンジ
(d) スタミナ
ii バード・ワーク
(a) 正確に速く猟鳥の居場所をつきとめる
(b) ポイント
(c) スタンチネス
(d) スタイル
iii トレーニング(訓練)
(a) コースに対する狩り込み .
(b) レスボンディング(連絡)
(c) ステディネス(堅固性)
※オール・エイジ犬(成犬部門)
オール・エイジ犬は完全な訓練を受けた犬である。これ等の猟犬は競技の始めに猟鳥の居そうな隠れ場所を選び、早くその場所へ行かなければならない。隠れ場を素早く捜索し、若しゲームが見出だされない時は更にコースを捜し続ける。獲物を見つけた時は正確な距離迄近付き、ポイントしなければならない。ハンドラーが来て鳥を飛翔さす迄、犬は忠実にポイントを続けて居なければならない。又銃声がして再び命令を受ける迄は静止して居なければならない。
一頭の犬がポイントしたならば、今一頭の犬はバッキングをしなければならない。
獲物が居ない、又は居そうもない場所を捜すのは好ましくない。猟場を何回も繰り返して行ったり来たりしてはいけない。また、ハンドラーの向う方向と逆に戻って来てはいけない(カットバック・カットイン)、ハンドラーの声や口笛や合図が届かない程遠くを探し回ってはいけない。
走る速さは遅過ぎてもいけないし、競技が終わらない内に疲れてしまう程速過ぎても、又、獲物を見過ごす程速過ぎてもいけない。
猟場に近寄り過ぎてもいけないし、又、あまり遠くから獲物のありかを示してもいけない。
一度嗅ぎつけた猟鳥をそのままにして置いてしまったり、所在を示さないで通り過ぎたりしてはいけない。
獲物の居ない所でポイントしてはいけない。組となった今一頭の犬の跡ばかり追って居るのはいけない。
オール・エイジ犬は次の行動が必要である。
1 スピード、レンジ、スタミナに素晴らしさを示す事
2 コースに沿って狩る事
3 獲物のボディセント(体臭)によって捜し出す事
4 素早く、正確に所在をつきとめ、ポイントする事
5 ポイントは堅実な事
6 バッキング能のある事
7 着実である事
また、オール・エイジ犬は次の行為はしてはならない。
1 ハンドルの手に負えない様な事
2 邪魔になってしまう事
3 それて走ったり(逸走)する事
4 カットバックする事
5 空ポイント
6 足臭で捜索する事
7 ブリンキング(ゲームを着臭し乍ら放置する事)
8 相手犬の跡ばかりを追う事(トレイル)
※ダービー(若犬部門)
ダービーは訓練されて居ない犬なので、限られた体験や訓練と、猟鳥を見出しポイントする能力を現わす様に要求される。競技を始めた時、ハンドラーから少し離れ、コースの反対方向でなければ何の方向から捜し始めても良い。猟鳥の隠れ場を素早く捜し当てなければならないが、足臭と体臭を使用しても良い。
若し獲物が見出せない場合は、コースを捜し続けなければならない。猟鳥が飛翔した時や発砲した時、退いたりしてはいけない。コースと反対の方向へ戻ってはいけない。組となったもう一頭の犬の跡を追ってはいけない。
ダービーは次の行動をしなければならない。
1 ダービー犬として幾らかのバードセンス、スピード、レンジ、スタミナを示さなければならない。
2 コースに沿って狩る。
3 素早く適確に獲物の居場所を捜しポイントする。
4 スタンチであるべきである。
5 バッキング(バック・ポイント)を行える事
ダービー犬は次の行為をしてはならない。
1 手に負えなくなる事 、
2 ロスト(失踪)
3 邪魔になる事
4 アンプロダクティブ・ポイント(空ポイント)
5 獲物をつきとめないで他に走り去る事
6 バード・シャイ(ゲームを怖れる事)
7 ガン・シャイ(銃声を怖れる)
8 トレーリング(相手の跡を追う )
また、ダービー犬は次の行動があっても構わない。
1 必ずしも臭いを嗅ぎ分けなくても良い事もある
2 時々足臭で狩をしても良い
3 着実でなくても良い事もある
ボルトン博士の立派な定義は、規則や精密な基準を作ろうとして書かれたものではなく、寧ろトライアル犬の出来具合を審査する時の手本として書かれたものである。
彼が示した望ましい能力や或は望ましくないものは経験を積んだ審査員や全くの初心者迄、トライアルマンの指標となるであろう。言葉は簡潔で、これ以上の説明は不必要であるが、ただ、パピーを審査する時は生れつきの能力だけを考慮に入れなければならない。
ミシガンのアーノルド ボートル氏は優秀犬としての相応しい能力を形作った狩猟家として有名な人であるが、彼が形作った望ましい素質の要約は次の如くである。
※パピー(幼犬部門)に必要とされる素質
1. 狩をする本能
2. 良く効く鼻
3. ポイント能
4. 聡明さ
5. 体格の良さ
6. 気力の強さ
7. 目と耳の良くきく事
8. 従順な気質
9. 勇気
10.体構やスタイルが立派な事
以上の素質を全部持って居ないパピーは第一級の働きをする様に訓練するのは難しい。
これ等の10の素質は飼育や訓練により、より一層良いものとなり、成長して以下に述べる様なものを持つ様になるであろう。
1. ハンドラーの為に猟鳥を見付けようとする強い要求を持つ。
2. 獲物が居る事を嗅ぎ分ける鼻、獲物を正確にすばやく見つける。
3. 空ポイントをしないで確実にポイントする。
4. 猟場では聡明な働きをし、獲物を効果的に捜し求める
5. 活気がある。
6. 速く、一生懸命捜索し自主性を持って居る事
7. 命令をすばやく見聞きする事
8. 快く命令に服し、すばやく獲物を持って来る事
9. 獲物に対し大胆で、密な隠れ場やその他の障害にひるまず進んで獲物を捜す
10.身のこなしや、臭いを嗅ぎ分ける時の動作は優雅である。
トライアルマンの興味を誘い、賞讃を得るものは、犬自身がする所の身のこなしの良さや、正確に獲物を示し、捜し持って来る様な捜索の際の犬の智脳である。然し何か指示された時、指示通りに動かなかったりしたら最早鳥猟犬としての優秀な部類に入らない。優秀な働きや出来映えは聡明さや訓練を受ける素質を持ち、猟鳥を見出す能力を持って居る犬のみに可能な事である。
優秀(或は高級)と言う言葉を使う時は、普通の犬がゆっくりと好条件の時のみ出来る事を、素早く正確に成し遂げる素質や才能を持つ事を意味するのである。
優秀な猟犬と言われるのに相応した犬は、素早く的確に、コース内の隠れ場に行き、一羽の鳥でも同じ様に素晴らしい働きをしなくてはならない。

