30.【池の氷】(実話・体験談)
3年生か2年生の頃の話です。
年齢順なのに,また若くなってる。と思った方。鋭いです。
昔,近所の子供は年齢に関係なく小学生はみんな一緒に遊んでいました。
ある冬の寒い日でした。
近所のしんちゃん(仮名)が,ザリガニ池に氷が張ってるから見に行かへんか?
と,誘ったので,何人かで見に行きました。
小学校低学年のころに,近くの大きなお寺に池がありました。
今もありますが,今はまわりを柵で囲ってあって中に入る事ができません。
その池で,高学年の近所の子と一緒によくザリガニ捕りなんかしていました。
だから「ザリガニ池」と呼んでいました。
正式名は知りません。
面白がって石を投げて氷を割ろうとしたのですが,割れません。
しんちゃんが大きな石を落としても割れませんでした。
池は地面より50cmくらい低いのですが,割れなかったのです。
そこで,私が一番軽そうなので氷の上に乗ってみる事にしました。
端に乗っても割れません。
ちょっと真中に行こうとした時,確かに見えたのです。人の手が氷から出てきて私の靴の先をつかんだのです。
あっ
と,思う間もなく,氷が割れて池の中に落ちてしまいました。冷たく暗い池の中に引き込まれたのです。
そして,目の前に人の顔が・・・
もがいてももがいても引き込まれるばかりです。
そのとき
「助けないと助からないからなぁ・・・」
と,目の前の顔が頭にひびく声でそう言いました。
そのうちに気が遠くなりました。
はっと,気づくと,割れかけた氷の上でした。
通りがかりの男の人が,私のジャンパーの片襟をつかんで引き上げてくれたのです。
「よかった。間にあった。君もきっと助けないといけないよ」
と言って立ち去りました。
服は濡れていませんでした。
しんちゃんたちも,今の男の人は,割れるのが分かっているようだった。
と言っていました。
それから,
十数年経った時。
信州に友達とスキーに行ったときの事でした。
あいにく雪が少なく一日目は滑れたのですが二日目は雪も少ないので近くのスケート場へ行く事にしました。
池の氷の上の雪をかき分けて造った自然のスケート場です。
円形のコースとプロムナードもある広いスケート場でした。
雪は2mくらいの高さなので前しか見えない素敵なプロムナードコースでした。
しばらく滑っていると,コースに雪の穴が開いていました。
見ると小学生低学年くらいの男の子が掘っているようです。
もう一周して同じところに近づいた時。
突然,あのザリガニ池の事を思い出しました。
そして,狭い穴の中に這いつくばって入ると,男の子がまさに片手を池の中に突っ込んでそのまま落ちていくところでした。
慌てて,男の子のジャンパーのすそをつかみ引き戻しました。
ビチョビチョに・・・
なっている筈が,すこしも濡れていません。
そして。
「助けたから助けてやった」
と,あの時の声が聞こえたような気がしました。
しばらくすると男の子は,
「えっ。お兄ちゃん何」
と言って私の顔を覗きました。
すぐに覚りました。
そして,私も
「よかった。間に合ったようだね。君も大きくなったら子供もを助けるよ」
と言って,また,プロムナードを滑りました。
結婚前の最後のスキーとスケートでした。
因果応報・・・という言葉があります。
善因善果と悪因悪果の事です。
善い行いをすると,善い結果が生まれます。
悪い行いをすると,悪い結果が生まれます。
結果は,未来というわけでもありません。
お経の中に目連尊者という人が大善を施すと,上七代下七代の父母が救われると説いています。まさに,過去に戻っての果報が存在するのです。
私は,過去の自分を救ったのだと今でも思っています。あの時の「低く醜く幽霊のような」声は少しも恐怖を覚えませんでした。
あの顔も怖く感じませんでした。ただ,残念なのは,スケート場で助けた男の子に色々聞かなかった事です。というか,その時は,ただすぐ離れてしまったのです。誰かにそうさせられたかのように・・・
次回は,
31.【開かない招待状】