27.【動く死体】(実話体験談)
夏。
私がまだ修行中のこと。
夏山上人(仮名)というお坊さんと一緒に
雨の降る夜にお通夜にまいりました。
当時は,お葬式は家から出すものと決まっていましたので,お通夜から自宅でした。
旧家の立派なお家のはなれのような座敷に老婆の御遺体が丁寧に寝かされていました。
ただでさえ陰気なお通夜。
小雨が降り,
裸電球も消え入りそうな,
なんとなく雰囲気の出来上がったお通夜でした。
お経も終わりに近づいたころ,
老婆の
ご遺体の
足元が,
突然
むくむくっ
と動いたのです。
「うわぁっ」
という家族の声と共に,
参列していた方々は,
腰も抜かさんばかりに
その場から遠のきました。
私も,こわくて逃げ出したくなりましたが,
夏山上人が微動だにせず座っておられるので,
私もじっとしていました。
すると,
布団の
すそから
猫
が出てきたのです。
ほっとして,
「みなさん,ねこでした。」
「びっくりしましたね。」
といい,みんなを戻しました。
集まった方も
「さすがお上人,えらいもんだ。」
と言って戻って座りました。
再び
お経を
唱えはじめたのですが,
夏山上人は黙っています。
「夏山上人」
と肩をたたくと,
急にどたっと倒れてしまいました。
なんと,
気絶
していたのです。
事実は小説より奇なり。と申しますが,そのあと,全員笑うわけにもいかず。でも,苦笑する声がかすかに聞こえていました。私も何度も噴き出しそうになりながらお経を唱えました。
とうの夏山上人は,完全に記憶喪失みたいになっていたので,
「わし。なぜ倒れていたんだ」と。
帰り道で言われましたが,本当のことが言えませんでした。
次回も修行中の話です。
28.【ずぼ!】(実話体験談)